【重要】※令和5年4月追記
本文記載内容は、執筆当時の内容です。
「雇用調整助成金」のコロナによる特例措置は、令和5年3月31日をもって終了となりました。
変更となった令和5年4月以降の支給要件等については、こちらの記事で解説しています。
令和3年11月30日までの予定で実施されていた雇用調整助成金の特例措置が、一部内容は変わるものの令和3年12月末まで延長されることが決まりました。
雇用調整助成金は、業績が悪化しても従業員の雇用を守り、休業や教育訓練などを事業主負担で行った場合に、事業主に対して助成されるものです。厚生労働省によると、これまで全国で約497万件の申請がなされ、97%以上の高い確率で支給が行われています(令和3年10月19日時点)。
この記事では、延長によって申請の手続きはいつまで行えるのか、そしてそもそも雇用調整助成金の特例措置とはどんなものかなどを説明していきます。
目次
雇用調整助成金の特例措置とは
雇用調整助成金は、経済的な事情で事業活動を縮小しなくてはならない状況に追い込まれた事業主の支援として以前から存在する助成金制度です。
しかし令和2年になり、新型コロナウイルス感染症によって全国的に経済状況が悪化したことから、令和2年4月1日から令和3年4月30日までの間、この助成金について事業主に有利な特例措置が実施されてきました。
そして新型ウイルス感染症の蔓延がなかなか収束しない中、令和3年4月30日に新たな延長が発表されました。延長期間は状況に合わせて伸び続けており、現在は令和3年12月末までの延長が決まっています。
延長措置では前回より多少変更が加えられたものの、コロナ禍以前の本来の雇用調整助成金よりも有利な給付条件となっていることに変わりはありません。
特に、業況が特に厳しい事業主と、まん延防止等重点措置の対象区域、および緊急事態措置を実施すべき区域(予定)に関しては、4月30日までと同等の手厚い助成が受けられるようになっています。
さらに、雇用保険未加入の事業所と従業員に対して給付される緊急雇用安定助成金も継続されることとなりました。
受給の要件は?
雇用調整助成金を受給できるのは、新型コロナウイルス感染症蔓延の影響を受けて売り上げが減少するなどした事業主です。
最近1カ月間の売り上げや生産量などが1年前の同じ月に比べて5%以上減少した場合に対象となります。
支給には、労使協定等に基づいて従業員を一時休業させたり教育訓練を行ったりした上で、事業主が休業手当などの費用負担をしていることが要件となっています。
助成金の受給額は?
雇用調整助成金の受給額は、受給の対象となる期間(判定基礎期間)の初日が令和3年4月までと、令和3年5月以降の場合で助成率が異なります。
判定基礎期間の初日が令和3年の5月以降となる場合は、状況に応じて次の2つの特例が適用されます。
業況特例(特に業況が厳しい全国の事業主向け)
休業初日の属する月からさかのぼる3カ月間の売上など(生産指標)が、前年または前々年の同時期と比べ、30%以上減少している事業主に対する特例
地域に係る特例 (営業時間の短縮等に協力する事業主向け)
まん延防止等重点措置の対象地区で、知事などによる要請を受け、対象となる全期間を通じて営業時間の短縮や飲食物の提供自粛、収容人数の制限などを行った事業主に対する特例
地域に係る特例については、緊急事態宣言の対象地域も含む予定となっています(執筆時点では法令施行前)。
なお、助成金の受給額は、中小企業と大企業によっても分けられています。中小企業とは、次表のいずれかに該当する企業のことです。
業種 | 企業規模 |
小売業(飲食業を含む) | 資本金5000万円以下または従業員50人以下 |
サービス業 | 資本金5000万円以下または従業員100人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下または従業員100人以下 |
その他の業種 | 資本金3億円以下または従業員300人以下 |
ではそれぞれの場合の受給額を見ていきましょう。
中小企業の場合の受給額
受給額は、一定期間内に解雇など事業主都合で従業員を退職させたことがあるかどうかで異なります。
判定基礎期間の初日が令和3年4月までの場合
令和3年4月までは、1人あたり1日15,000円が受給の限度額です。
【解雇等なしの場合】
1人1日あたり支払賃金の10分の10
【解雇等を行った場合】
1人1日あたり支払賃金の5分の4
事業主都合による解雇者を出していた場合でも受給はできますが、金額は少なくなります。
判定基礎期間の初日が令和3年5月以降の場合
令和3年5月1日以降の受給額の上限は、原則1人あたり1日13,500円です。
【解雇等なしの場合】
1人1日あたり支払賃金の10分の9
【解雇等を行った場合】
1人1日あたり支払賃金の5分の4
業績が著しく悪化した、あるいは緊急宣言等が発令されている場合の特例措置が適用されれば、助成率が引き上げられます。
【業況特例・地域に係る特例の適用】
1人1日あたり支払賃金の10分の10
【特例適用で解雇等がある場合】
1人1日あたり支払賃金の5分の4
また、業況・地域特例が適用となった場合の上限額は15,000円です。
大企業の場合の受給額
では次に大企業のケースを見ていきます。
判定基礎期間の初日が令和3年4月までの場合
この期間は、解雇等の有無や業況・地域特例の適用有無にかかわらず上限額が15,000円となっています。
【通常・解雇なしの場合】
1人1日あたり支払賃金の4分の3
【解雇を行った場合】
1人1日あたり支払賃金の3分の2
業況特例または地域特例が適用となる場合は、助成が手厚くなります。
【業況特例・地域に係る特例の適用】
1人1日あたり支払賃金の10分の10
【特例適用で解雇等ありの場合】
1人1日あたり支払賃金の5分の4
判定基礎期間の初日が令和3年5月以降の場合
【通常・解雇等なしの場合】
1人1日あたり支払賃金の4分の3
【解雇等があった場合】
1人1日あたり支払賃金の3分の2
上限額はいずれも13,500円です。
【業況特例・地域に係る特例適用】
1人1日あたり支払賃金の10分の10
【特例適用で解雇等がある場合】
1人1日あたり支払賃金の5分の4
この場合の上限額はいずれも15,000円です。
受給できる額を見積もることもあると思いますが、それぞれのケース・期間によって受給額が異なるので要注意です。
必要な書類、手続きの流れや注意点
雇用調整助成金の申請手続きには、いくつかの書類をそろえて提出する必要があります。申請の流れや期限もここで見ておきましょう。
申請書類
初回の申請時に提出するもの
申請書類の中には、初回だけ必要となる書類があります。
- 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書(様式新特第4号)
- 事業所の状況に関する書類
- 休業協定書/教育訓練協定書
事業所の状況に関する書類とは、中小企業であると確認できる書類、労働者名簿・役員名簿などです。
休業協定書や教育訓練協定書にも様式があり、厚生労働省のサイトでダウンロードが可能です(下にリンクあり)。
これらは2回目以降の申請には不要です。
支給申請ごとに提出するもの
ここに挙げる書類は、申請ごとに記入・提出が必要です。
- 様式6~9までの申請書類
・様式新特第6号(2):支給要件確認申立書(緊急事態宣言等対応特例)
・様式新特第7号:(休業等)支給申請書
・様式新特第8号:助成額算定書
・様式新特第9号:休業・教育訓練実績一覧表
- 労働・休日の実績に関する書類
出勤簿やタイムカードなどのコピーを提出します。
- 休業手当・賃金の実績に関する書類
賃金台帳・給与明細書などのコピーを用意します。
番号の付いた様式は、厚生労働省の公式サイトからダウンロードできます。
雇用調整助成金の様式ダウンロードページ(新型コロナ特例用)|厚生労働省
申請の流れ
この助成金は、ハローワーク・労働局が窓口となって行っている助成金の制度です。各地域の窓口に書類を持参し、次の流れで申請します。
- 1)休業等を計画(※)、労使協定を結ぶ
- 2)休業等を実施する
- 3)賃金締日後、その月の分をその都度支給申請する
- 4)審査後、支給決定・入金
申請のたびに2~4を繰り返します。
1番目の計画時において、従来は休業等計画届の提出が必要でしたが、手続きが簡素化されて提出しなくてもよくなりました。
申請期限
今回の延長措置で、6月30日までが申請対象となりました。申請期限はその日から2カ月後ですが、単純に8月30日が申請期限ということではないことに注意が必要です。
申請は暦月でなく賃金締切日を基準にしての1カ月を単位としますが、その1カ月の賃金支払対象期間が1日でも6月30日以前に含まれていれば、対象となります。
たとえば、毎月25日が賃金支払日、毎月20日が賃金締切日だとします。
この場合、6月の賃金支払対象期間は6月21日から7月20日であり、6月30日以前の期間にまたがっているため、この期間は申請対象となるのです。
したがって申請期限も、賃金締切日の翌日7月21日の2カ月後の9月20日ということになります。
申請期限についてはこのようにやや複雑であり、また、さかのぼって申請できる期間についてもケースバイケースなので、あらかじめ確認しておくことをおすすめします。
申請時の注意点
申請において大切なのは次の2点です。
- 申請期限は必ず守りましょう
申請手続きが1日でも遅れると受理されません。
- 申請書類や添付書類は不足なく準備しましょう
1つでも書類に不備があったり足りなかったりしても受理はされません。1回目の申請では特に慣れないため間違えたりしがちなので注意が必要です。
休業等が長期にわたる場合は、最初の申請が終わってからも次の申請期限がいつかの確認を確実にしておくこと、申請書類は提出前に入念なチェックを行うことが欠かせません。
とは言え、窓口で不備を指摘されたとしても、即却下というわけではなく、再度修正して提出することができます。スケジュールに余裕をもって支給申請を行うことをおすすめします。
支給申請を効率よく行うために
助成金の申請を確実に、効率よく行うには、政府も専門家と認めている社会保険労務士に相談・依頼するのがおすすめです。
支給申請のハードルを高くしているのは、制度上の難しい文章説明と注意点の多さ、あるいは度重なる制度改正による情報把握の難しさかもしれません。通常の業務をこなしながら申請手続きも、というのは大変なことです。
しかし適切な申請方法を理解していないと、たとえば単なる記載ミスなどによるものでも、労働法に違反すると見なされれば不支給となるおそれもあります。不正扱いとされれば助成金は受け取れませんし、受給後に全額返還を要求されることもあります。
その点、社会保険労務士は国家資格であり、雇用や労災、社会保険など労務に関するエキスパートです。制度や手続き方法にも詳しく、「そもそもよくわからない」という場合には最適な助成金のアドバイスも可能です。
まとめ
雇用調整助成金は多くの企業や店舗で利用されている助成金であり、受給できる確率も高いのが特徴です。
しかし支援の拡充や手続きの簡素化を図った結果、改正が重なって正確な情報がつかみづらくなっていることは否めません。今後も、社会情勢に合わせたさまざまな改正が行われる可能性が高いです。
助成金のスムーズな受給をご希望であれば、ぜひ私共Bricks&UKの社会保険労務士にご相談ください。万全の体制でお待ちしています。
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助成金をもらえる資格があるのに活用していないのはもったいない!
返済不要で、しかも使い道は自由!種類によっては数百万単位の助成金もあります。
ぜひ一度、どんな助成金がいくらくらい受給可能かどうか、診断してみませんか?
過去の申請実績も参考になさってください。
監修者からのコメント 令和3年5月以降の雇用調整助成金について、新しい様式が厚生労働省HPで公表されました。 緊急事態措置及びまん延防止等重点措置に係る雇用調整助成金の特例を受ける場合、新しい様式での申請が必要となりますので、ご注意ください。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。