【重要】※令和5年4月追記
緊急雇用安定助成金は、令和5年3月末をもって終了しました。
令和5年3月31日を含む判定基礎期間の申請期限は、令和5年5月31日(書類必着)です。賃金の締め日や休業終了日にかかわらず、令和5年3月31日までが判定基礎期間の末日と見なされます。
新型コロナウイルスの感染がおさまらない今、その影響を受けて行った従業員の一時休業に対する助成が、国によって行われています。
この「雇用調整助成金」は、雇用保険の適用事業所および被保険者である従業員を対象としたものです。しかし、雇用保険に未加入でも助成が受けられる「緊急雇用安定助成金」という特例があります。
目次
雇用調整助成金の特例措置とは
雇用調整助成金の概要
雇用調整助成金は、経済上の理由で事業活動を縮小させた事業主に支給される助成金です。従業員を解雇などせずに休業や教育訓練、出向を行い、手当を支払った場合に対象となります。
対象となるのは、雇用保険の適用事業所および被保険者となっている労働者。労働時間が週20時間未満のパート従業員などは雇用保険の加入対象外となり、この助成金の対象ともなりません。
雇用調整助成金の特例措置とは
新型コロナウイルス感染症が蔓延して社会経済に大きな影響を及ぼしていることから、政府はこの雇用調整助成金について令和2年4月1日より「新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例」を設けました。
新型コロナの特例措置では、従来よりも助成率や支給上限額が引き上げられ、要件の緩和などもされています。また、従来は対象とならなかった雇用保険の被保険者以外の人も対象とする「緊急雇用安定助成金」も特例措置として設置されました。
ただし対象となるのは「休業」の場合だけで、教育訓練や出向は対象外です。
また、新型ウイルスによる影響がおさまらないことから、対象期間を令和3年12月末まで延長しています(2021年10月21日現在)。
さらに緊急事態宣言にかかる特例では大企業の助成率が引き上げられたほか、直近では、判定基礎期間(月の賃金支払対象期間)が令和3年5月以降である場合には、まん延防止等重点措置の発令に応じた特例や、業績の状況に応じた特例による支給も実施されます。
直近で緩和された要件について
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金はともに、雇用の維持を図ることが目的で作られた制度です。
そのため緊急事態宣言等対応特例の対象となる期間中に従業員を解雇等した場合には、助成率が引き下げられるなどの「雇用維持要件」があります。
令和3年3月の緊急事態宣言を受けて、この雇用維持要件が緩和されています。
比較期間
前)令和2年1月24日~判定基礎期間の末日まで
後)令和3年1月8日~判定基礎期間の末日まで
雇用する労働者の人数
前)判定基礎期間末日の労働者数が各月末の平均の5分の4以上
後)要件撤廃
以前は解雇等で従業員数が大幅に少なくなっているなどの場合は対象外とされていました。ただし要件緩和後も、比較期間に解雇者を出している場合には助成率が引き下げられます。
雇用保険未加入の事業者は緊急雇用安定助成金を活用!
前述のとおり、雇用保険非加入の場合でも対象となるのが緊急雇用安定助成金です。この制度について具体的に見ていきましょう。
緊急雇用安定助成金とは
緊急雇用安定助成金は、労働者についてだけでなく事業主が雇用保険の適用外でも対象となります。ただし労働者災害補償保険、いわゆる「労災保険」への加入は必須です。
通常、雇用保険の被保険者となるのは、1週間の所定労働時間が20時間以上であり、雇用する見込みが31日以上ある人です。
そのため、たとえば1日5時間、週3日勤務のパート労働者や、飲食サービス業などで夜間・短期のみの学生アルバイトなどが緊急雇用安定助成金の対象となります。
緊急雇用安定助成金と雇用安定助成金の使い分け
具体的にどんな場合にどの助成金を申請できるのかを一覧にしてみました。
雇用保険加入の有無 | 申請する助成金 | |
事業所 | 労働者 | |
未加入 | (必然的に未加入) | 緊急雇用安定助成金 |
加入済 | 加入者と未加入者が混在 | 加入者→雇用調整助成金 非加入者→緊急雇用安定助成金 |
全員が加入済 | 雇用調整助成金 | |
全員が未加入 | 緊急雇用安定助成金 |
加入者(被保険者)と未加入者が混在している場合は、2つの助成金を申請します。申請書類の様式は異なるものもありますが、申請手続きは同時にできます。
ちなみに当然のことながら、雇用保険の加入条件を満たしているにもかかわらず加入させていない場合には、助成金の申請はできません。
緊急雇用安定助成金の支給要件
緊急雇用安定助成金について、令和3年12月までのコロナ特例措置の内容を表にまとめました。
要件や受給率などは、雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金ともに同じです。
要件・助成率などの一覧
期間 | 令和2年4月1日~令和3年12月 |
---|---|
対象事業主 | 新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業主(全国・全業種) |
対象者の拡大 | 雇用保険未加入でも支給対象 |
生産指標に関する要件 | 売上などが1カ月5%以上減少 |
助成率 (判定基礎期間の初日が令和3年5月1日~12月) |
中小企業:5分の4、大企業:3分の2 期間内に解雇等なしの場合は 中小企業:10分の9、大企業:4分の3 |
助成率 |
<業況特例/地域特例> 企業規模問わず:5分の4 解雇等なしは10分の10 |
助成率 |
中小企業:5分の4、大企業:3分の2 解雇等なしは 中小企業:10分の10、大企業:4分の3 |
日額上限 (判定基礎期間の初日が令和3年5月1日~12月) |
13,500円 |
日額上限 (判定基礎期間の初日が令和3年4月30日以前および令和3年5~12月の業況・地域特例) |
15,000円 |
支給限度日数 | 1年100日、3年150日 +上記対象期間中に受給した日数 |
休業等計画書 | 提出不要(作成は必要) |
クーリング期間 (継続受給の制限) |
なし |
被保険者期間に関する要件 | なし |
短時間休業に関する要件 | なし(一斉休業以外も対象) |
休業規模要件 | 中小企業:40分の1、大企業30分の1 |
残業相殺 | なし |
教育訓練に関する助成率 | 上記(休業の助成率)と同じ |
出向期間に関する要件 | 緊急対応期間に開始の場合 1カ月以上1年以内 |
「生産指標要件」とは、生産量や仕入れ額、売上高などの生産指標について定めた要件です。
休業を開始した月(またはその前月、前々月でも可)の生産指標が1年前の同月に比べて5%以上減っていれば助成の対象となります。
比較対象とする月については、前年同月のほか前々年同月、前年同月から前月までのいずれかの1カ月でも可能となる特例措置も発表されています。
さらに令和3年5月以降は、最近3カ月の生産指標が平均で前年または前々年の同月に比べて30%以上減少している場合に「業況特例」が適用されます。
「休業規模要件」とは、所定労働延べ日数に対する休業の延べ日数の割合について定めたものです。
たとえば所定労働日数が20日、従業員が30人で全員が休業する場合、所定労働延べ日数は(30人×20日=)600日です。
中小企業の場合、休業規模要件が40分の1以上なので、(600日×40分の1=)15日間以上の休業をした事実が必要です。
対象期間や要件などは今後また変更となると予想されます。最新の情報を把握することが大切です。
緊急雇用安定助成金の対象期間と支給額
支給対象期間
緊急雇用安定助成金では、令和2年4月1日~令和3年12月の期間に、賃金の締め切り期間(判定基礎期間)が1日でも含まれていれば助成の対象となります。
令和3年1月8日から実施されている緊急事態宣言等対応特例が、令和3年12月末まで延長されています(令和3年10月21日現在)。
申請のタイミングと申請期限
助成金の申請は、給料の締め切り期間(判定基礎期間)ごとに行います。
はじめての支給申請は、原則、休業した月の給料の締め日後に行います。申請期限は2カ月で、申請月の給料の締め日後2カ月以内に申請・受理される必要があります。
休業して休業手当を支払った月ごとに、毎月申請を繰り返します。
たとえば令和3年4月にはじめての申請をするとします。給料の締め日は25日と仮定しましょう。
この場合、4月分(3/26~4/25)の申請は6/25まで可能です。また、4月分を申請するときは2カ月前の締め日の分もまとめて申請可能です。
助成金の支給額
中小企業に対する助成金の支給額は、原則として次の算式で計算されます。
【令和3年4月末まで】
助成額=支払った休業手当の総額×10/10(助成率)×休業延べ日数
【令和3年5月~12月】
助成額=支払った休業手当の総額×9/10(助成率)×休業延べ日数
また、令和3年5月以降において業況特例と地域に係る特例に該当する場合は、次のように計算します。
【業況特例/地域に係る特例】
助成額=支払った休業手当の総額×10/10(助成率)×休業延べ日数
ただし上記は、「従業員を解雇等しなかった場合」の計算です。解雇等した従業員がいる場合には、助成率が「5分の4(4/5)」に引き下げられます。
また、休業手当の支払い状況によって助成率に違いが出ることもあります。
緊急雇用安定助成金の申請方法について
この助成金は、ハローワーク・労働局が窓口となっています。いずれかの窓口に書類を持参して申請しますが、地域によって窓口が異なるため、最寄りのハローワークで確認する必要があります。
助成金申請の流れ
申請は次のような流れで行います。
- 1)休業について計画し、労使協定を結ぶ
- 2)休業を実施する
- 3)賃金締め切り日後、その期間分の支給申請をする
- 4)支給決定・入金
以後、賃金締め切り期間ごとに2~4をくりかえします。
手続き上、本来は休業を実施する前に計画書を提出する必要があります。
しかし緊急対応期間中は特例として、計画届の提出はしなくてもよいことになっています。ただし計画を立てること自体は必須です。
助成金の申請書類
最初の申請時に提出するもの
- 雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書(様式新特第4号)
- 事業所の規模を確認できる書類(労働者名簿・役員名簿など)
- 休業協定書/教育訓練協定書
様式〇号とあるものには所定の様式があり、厚労省のサイトからダウンロードが可能です。「休業協定書」と「教育訓練協定書」についても、書式がダウンロードできるようになっています。
支給申請のたびに提出するもの
- 支給要件確認申立書・役員等一覧(様式新特第6号)
- 休業等支給申請書(様式新特第7号)
- 助成額算定書(様式新特第8号)
- 休業・教育訓練実績一覧表(様式新特第9号)
- 労働・休日の実績に関する書類
(出勤簿・タイムカードのコピーなど) - 休業手当・賃金の実績に関する書類
(賃金台帳・給与明細書のコピーなど)
支給要件確認申立書は、緊急事態宣言等対応特例やこちらも「様式〇号」となっているものは厚労省のサイトからダウンロード可能です。
雇用調整助成金・緊急雇用安定助成金の様式ダウンロードページ|厚生労働省
助成金申請時の注意点について
申請において、2つのもっとも大切な注意点をあげておきます。
- 申請期限は必ず守りましょう
- 申請書類・添付資料は完璧に用意しましょう
期限が1日でも遅れると、また書類が1つでも欠けていると、申請は受理されません。
特に第1回目の申請では書類に不備が出やすく、細心の注意を払う必要があります。
1回目の申請後も、次回以降の申請がいつなのかのスケジュールを把握し、書類などの管理を毎回しっかり行い、提出前には申請書類を入念にチェックしてください。
窓口で不備を指摘された場合は、再提出が必要です。そのため、申請期限を過ぎないよう日にちに余裕をもって提出することも大切です。
忙しくて手が回らない、そんな場合におすすめなのが、国が助成金申請業務の専門家として指定する社会保険労務士への手続き代行依頼です。
社会保険労務士は国家資格であり、雇用や労災、社会保険など労務に関するエキスパートです。
まとめ
コロナ禍のなかにあって、事業主・従業員を支援してくれる心強い味方が「雇用調整助成金」「緊急雇用安定助成金」です。
厚生労働省による雇用関係の助成金は、労働者が納める雇用保険料によってその財源をまかなっているため、通常は対象者も雇用保険の加入者のみとなっています。
しかし緊急雇用安定助成金なら、雇用保険の対象外となる学生アルバイトや短時間パートといった労働者についても助成が受けられるのです。
緊急雇用安定助成金の申請は今がチャンスです。自社も該当する可能性があると思ったらまず、専門家に相談してみてください。
私たちBricks&UKでは、優秀な社会保険労務士が皆様のお役に立つべく日々情報を集め、アドバイスや代行業務などを行っています。ぜひ一度ご相談ください。
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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。
こんな方は、まずは就業規則診断をすることをおすすめします
- 就業規則を作成してから数年たっている
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監修者からのコメント 令和3年5月・6月の雇用調整助成金の特例措置に関して、5月21日に厚生労働省HPに新しい様式がアップロードされました。 業況特例・地域特例を利用する場合は、新しい書式で申請をお願いします。 ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。