【2021年】働き方改革推進支援助成金 3つのコースを紹介

2021.07.07

働き方改革推進支援助成金

国が進める働き方改革は、労働時間を適正に設定して長時間労働・時間外労働を減らしたり、年次有給休暇の取得を推進したり、勤怠管理システムの導入などによって労働時間を管理したりしつつ、設備投資などにより生産性の向上を図ることを目的としています。

そして、職場環境の整備に取り組む事業主を支援すべく設けられているのが「働き方改革推進支援助成金」です。

この記事では、働き方改革推進支援助成金について、3つのコースの概要や2021年の最新の要件、申請時の注意点など詳しくお伝えしていきます。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革による快適な生活イメージ

働き方改革推進支援助成金とは、労働時間の適正な設定や管理などにより長時間労働の是正に取り組む中小企業等の事業主に対して、厚生労働省の管轄のもと、支給される助成金です。

ここでは、令和3年度に申請受付を開始した次の3つのコースについて説明します。

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 勤務間インターバル導入コース

労働時間短縮・年休促進支援コース

【2021年10月14日追記】2021年度の当コースの交付申請受付は、10月15日で終了することが決まりました。
重要なお知らせ|厚生労働省

労働時間の短縮

労働時間短縮・年休促進支援コースでは、その名のとおり従業員の労働時間を減らし、有給休暇の取得がしやすい環境整備をする中小企業の事業主を支援します。

要件について

対象となる事業主は、労災保険の適用事業主であり、年に5日の有給取得を徹底するための就業規則を整備していることが要件です。

また「成果目標」として次の①から③のいずれかを掲げ、その達成に向けた研修の実施や労務管理用ソフトウェアの導入など、指定の取り組みを行う必要もあります。

  • ①時間外・休日労働時間数を削減、上限を次のいずれかに設定して36協定を結び、労基署に届出

 ・月60時間以下
 ・月60時間超80時間以下

  • ②病気休暇や教育訓練休暇など規定の特別休暇の導入
  • 時間単位の年休制度の導入

この成果目標は、複数の事業場(営業所など)がある場合にはすべての事業場を対象としなくてはなりません。

また、上記に加えて事業場と従業員を指定して時間あたりの賃金を3%以上上げる目標を追加することもできます。達成すると助成額が加算されます。

受給の流れと支給額

受給には、まず労働局に2021年11月30日までに交付申請書を提出し、交付が決定した後2022年1月31日までに選択した成果目標の達成に向けた取り組みを行います。支給申請は2月10日までに行う必要があります。

支給額は「成果目標の上限額と賃金加算額の合計額」と「対象経費の合計額×4分の3(一部条件によっては5分の4)」のいずれか低い金額です。

このコースについて詳しくは、こちらの記事も読んでみてください。

労働時間適正管理推進コース

労働時間適正管理推進コースは、生産性の向上を図り、所定労働時間の適正管理の推進に向けて従業員の労働環境整備を実施する中小企業等事業主を支援するためのものです。

このコースについては、すぐ後の章で詳しく説明します。

勤務間インターバル導入コース

勤務間インターバルで休息をとる女性

勤務間インターバル導入コースは、文字どおり勤務間インターバル制度を導入した中小企業などを支援するものです。

「勤務間インターバル制度」とは、勤務から次の勤務までの間に一定時間以上の間隔を設けることで従業員の休息時間を確保し、健康保持や過重労働の防止を図る制度です。

要件について

対象となる事業主は、労災保険の適用事業主であり、従業員の半数以上・9時間以上の勤務間インターバル制度を導入していないことが要件です。

また、次の3つに当てはまる必要もあります。

  • 過去2年間に月45時間超の時間外労働の実態がある
  • 労使間で36協定を締結、労基署に届け出ている
  • 年5回の有給取得について就業規則等に規定している

成果目標としては次の①~③のいずれかを掲げ、達成のための取り組みとして従業員への研修や人材確保の取り組み、必要な機器の購入などを行います。このうち指定の対象経費について助成が受けられます。

  • ①勤務間インターバル制度の新規導入
    (9時間以上または11時間以上)
  • ②適用従業員の範囲の拡大
    (従業員の半数以上)
  • ③休息時間の延長
    (9時間以上または11時間以上)

これらに加えて、指定する従業員の1時間あたりの賃金を3%以上引き上げることも目標とすることができます。達成すれば助成金の加算が受けられます。

受給の流れと支給額

受給には、まず労働局に2021年11月30日までに交付申請書を提出し、交付決定後から2022年1月31日までに取り組みを行います。支給申請の締め切りは2022年の2月10日です。

支給額は対象経費の4分の3(一部条件によっては5分の4)の額で、上限額は、新規導入の場合は80万円、範囲の拡大・時間延長は40万円ですが、休息時間を11時間以上に設定した場合はそれぞれ100万円と50万円に引き上げられます。

さらに賃金アップを達成すれば、人数と引き上げ率により15万円から最大240万円までの加算が受けられます。

勤務間インターバルコースについて詳しくは、こちらの記事で解説しています。

労働時間適正管理推進コースについて

労働時間の適切管理

では、令和2年度にスタートした労働時間適正管理推進コースについて、以下の項目順に解説します。

  • 1.対象となる事業主
  • 2.成果目標の設定
  • 3.対象となる取り組み
  • 4.申請の流れ
  • 5.支給額

対象となる事業主

助成の対象となる事業主は、次のいずれをも満たす必要があります。

  • 労働時間の管理にあたり、勤怠管理と賃金計算をリンクさせるなどの統合管理ITシステムを導入していない
  • 就業規則等で賃金台帳など労務管理書類の5年間保存を規定していない
  • 36協定を締結・届出済みで、年5日の年次有給休暇の取得について就業規則などを整備している

ちなみに、労働者災害補償保険が適用となる中小企業の事業主であることが大前提です。

成果目標の設定

この助成金は、指定された次の3つの成果目標すべての達成に向けて取り組みを行い、その達成状況に応じて費用の一部が助成される仕組みとなっています。

  • 1.勤怠管理と賃金計算等がリンクする統合管理ITシステムを導入して労働時間を管理する
  • 2.賃金台帳など労務管理の書類を5年間保存することを就業規則などに規定する
  • 3.労働者・労務管理担当者に対して「労働時間の適正把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」についての研修を行う

いずれも、複数の事業場がある場合にはすべての事業場を対象とし、新たに実施するものでなくてはなりません。

なお、これらの目標に加えて時間あたりの賃金の3%以上の引き上げを目標に加えることもできます。達成すると助成金が加算されます。

対象となる取り組み

上の成果目標を達成するために、次のいずれかの取り組みを1つ以上行う必要があります。

  • 労働者や労務管理担当者に対する研修
  • 外部専門家によるコンサルティング
  • 就業規則・労使協定等の作成
  • 人材を確保するための取り組み
  • 労務管理用ソフトウェアや機器、デジタル式運行記録計の導入・更新
  • 労働能率アップのための機器・設備の導入・更新

外部専門家には、社会保険労務士や中小企業診断士などが該当します。人材を確保する取り組みには、採用活動の見直しや対象者の拡大などさまざまなものが考えられます。

申請の流れ

この助成金の申請には、まず「交付申請書」や事業実施計画書などの書類を管轄の労働局の雇用環境均等部に提出し、交付の決定を受ける必要があります。交付申請の受付は令和3年11月30日までです。

ただし国の予算と申請状況により、締切が早まる可能性があるので注意が必要です。

交付が決定して初めて、届け出た計画書に基づき取り組みを行います。その実施期間は交付が決定してから令和4年1月31日までの間です。

実施後、支給申請を労働局に行います。締め切りは令和4年2月10日です。

支給額

助成金の支給額は、成果目標達成時の上限額を50万円として、取り組みの実施に要した対象経費の4分の3の金額です。

ただし常時雇用の労働者が30名以下の場合で、取り組みに労務管理用ソフトウェアや機器、デジタル式運行記録計の導入・更新、労働能率アップのための機器・設備の導入・更新を行い、経費が30万円超えとなった場合には、助成率が5分の4となります。

なお、成果目標に賃金の引き上げを加えた場合は、人数や引き上げ率に応じて下表のとおり加算が受けられます。この際の上限額は、50万円にこの加算額を足した額となります。

人数 3%以上引き上げ 5%以上引き上げ
1~3人 15万円 24万円
4~6人 30万円 48万円
7~10人 50万円 80万円
11~30人 1人あたり5万円
(上限150万円)
1人あたり8万円
(上限240万円)

働き方改革推進支援助成金のメリット

働き方改革推進支援助成金のメリット

働き方改革推進支援助成金の申請に向けて取り組むことで、次の3つのメリットが期待できます。

  • 長時間労働の削減
  • 生産性の向上
  • 労働時間の適正管理の実現

それぞれ具体的に見ていきましょう。

長時間労働の削減

働き方改革推進支援助成金の支給対象となるには、長時間労働の是正や、勤務と勤務の間を空けての休息時間の確保、有給休暇の取得日の指定などを、制度として確立した上で確実に行う必要があります。

その結果として従業員の働きすぎを防ぎ、長時間労働も削減することができます。

また、外部コンサルタントの指導を受けて制度の見直しや業務の改善などを行う、作業効率を上げる機器などの導入で作業時間の無駄をなくす、といった取り組みも、労働時間の削減につながるでしょう。

生産性の向上

生産性の向上

作業効率が上がる機器を導入したり、人材を確保する取り組みを行ったり、特別休暇など休みやすい制度を取り入れたりすることで、従業員の不満を減らし、仕事へのモチベーションを上げることができます。

それは結果として、企業全体の生産性の向上につながります。

労働時間適正管理の実現

労働時間が適正管理されたオフィス

これまでの慣例などにより、長期間労働が常態化してしまっていた企業も多いでしょう。

助成金の対象となる労務管理用の機器やソフトウェアを導入することにより、労働時間についても適正な管理が行えるようになります。シフトが複雑な職場でも、人的ミスが減らせ、無駄が省けます。

時間外労働などの実態が目に見えれば、法令遵守への意識や危機感も自ずと高まります。適正に管理されているとわかれば、従業員からの信頼性も高まるでしょう。

働き方改革推進支援助成金の申請時の注意点

働き方改革推進支援助成金の申請には、注意すべき点があります。その主な4つを解説します。

助成金対象となる・ならない経費の確認

助成金の対象となる経費とはどんなものか、そして逆に対象とならないのはどんなものかを、事前に確認しておくことが大切です。

この助成金は、目標達成のために行った取り組みの費用に助成率をかけた額が支給されます。

しかし、取り組みのために行ったのであればどんな費用でも対象となるわけではありません。

たとえば、支給対象となる取り組みの中に労働者や労務管理担当者に対する研修、というのがあります。その研修には、労務管理に関するものだけでなく、業務研修も含まれます。

一方、労務管理用や労働能率アップなどのために機器を購入した場合も助成の対象となります。パソコンやタブレット端末、スマートフォンは購入したとしても対象外ですが、たとえばパソコンの「モニターのみ」を1台増やして業務効率を上げた場合などは対象となります。

36協定の締結、就業規則の整備をしなければならないこと

就業規則を確認する人

働き方改革推進支援助成金の申請には、36協定の締結や届け出が必須です。また、労務管理に関する書類の保管や年休の取得については就業規則などへの記載が必要です。

つまり事前に労使間で話し合いを行って決定したのち、就業規則などに明記してすべての従業員に周知させる必要があります。しっかりと支給要件を確認し、必要な手続きを踏んだ上で取り組みを行いましょう。

交付決定前の取り組みは対象外となること

助成金の対象外となるケース

取り組み事業の実施は、交付が決定した日から2022年1月31日までの間に行わなくてはなりません。

交付が決定する前に行った取り組みの経費は助成金支給の対象外となることを押さえておきましょう。

予算によって期限前に終了することがあること

締切前の助成金受付終了でショックな人

働き方改革推進支援助成金の支給対象となる事業主数には、国の予算額の制約があります。そのため、2021年11月30日の期限より前に受付が締め切られる場合もあります。

2020年度は10月15日に締め切られました。申請するなら早めに動くことをおすすめします。

助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

助成金受給への希望イメージ

この記事では、働き方改革推進支援助成金の3つのコースについて解説しました。

長時間労働の上限が企業規模を問わず定められたこと、年に5日の有給休暇の取得が義務付けられたこと、労務管理の書類の保存期間が5年に延長されたことなどから、それぞれの遵守に向けて取り組む企業への助成が行われています。

この助成金を受け取るためには、労働環境を整備して生産性の向上を図る必要があります。達成できれば、金銭面でのメリットだけでなく、従業員の健康やモチベーションの維持にもつながるでしょう。

しかし助成金の申請には、労使間の協定や就業規則等への規定の明記、助成対象となる経費の確認、取り組みの実施期間など、注意すべきことも複数あります。効率よく申請を進めるには、助成金申請のプロである社会保険労務士に依頼をするのが最善の方法です。

当社Bricks&UKの社会保険労務士に、ぜひ一度ご相談ください。

監修者からのコメント 働き方改革推進支援助成金の申請には、36協定の届出や年休の取得についての就業規則への記載が必要です。 そもそもの36協定を締結していなかった、もしくは就業規則を整備していなかったという事業主様でも、これから届出、整備をすることで申請は可能です。 弊社Bricks&UKでは36協定の届出や就業規則の作成にも対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

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