【令和4年改正】人材確保等支援助成金「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」

2022.11.08

人材確保等支援助成金の建設キャリアアップシステム普及促進コース

建設業の厳しい雇用状況を受けて、人材確保等支援助成金に新しく「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」が新設されました。

このコースは、名称にもあるように建設事業主団体を対象としています。団体の構成員である中小規模の建設事業主に対し、建設キャリアアップシステム等の登録料や手数料に対する補助、申請手続きの支援、就業履歴の蓄積を行うための機器・ソフトウェアの導入等の促進を行った場合に助成を受けられるものです。

この記事では、コースの背景から助成対象となる取り組みや経費、申請時の流れや注意点について解説します。

新設された建設キャリアアップシステム等普及促進コース

人材確保等支援助成金に新設された建設キャリアアップシステム等普及促進コース。まずはその背景などを見ておきましょう。

建設業の雇用状況について

建設業では、労働者の高齢化と人員不足が深刻です。

特に直接的な工事作業を担う技能者については、厚労省によれば約3分の1が55才以上となっており、他の産業よりも高齢化が進行しています。

また、高卒で建設業に就職した人の離職率も、全産業の中で最も高い状態が続いています(厚労省の調査より)。女性の数も、昔に比べて増えてはいるもののまだ少なく、近年では入職者が減少する一方で離職者が増加しているという傾向も。

建設業の将来を考えれば、「高齢者の増加・数少ない若者や女性の離職が増加」という現状を変えることが急務です。

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

建設キャリアアップシステムとは

上述のような建設業界の課題解決の一端として設けられたのが、建設キャリアアップシステム(CCUS)です。

建設キャリアアップシステムとは、建設技能者の就業履歴や保有資格などをデータとして記録・蓄積し、実績や能力についての適切な評価を可能とするシステム。これにより労働者本人の処遇の改善や、雇用する事業者の施工能力の見える化を狙いとしています。

労働者の処遇を改善し、適切な評価が得られることで、若い世代の離職を減らし、入職者を増やす効果が期待できます。

建設キャリアアップシステム等普及促進コースとは

建設キャリアアップシステム等普及促進コースについて

建設キャリアアップシステムへの登録など、建設技能者の能力評価制度の導入促進に取り組む事業主団体に助成を行うのが、人材確保等支援助成金の「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」です。

令和4年3月まで実施されていた「雇用管理制度助成コース(建設分野)」の代替コースという位置づけで、令和4年4月に創設されました。

次の章で、詳しい制度内容を説明します。

建設キャリアアップシステム等普及促進コースの内容

建設キャリアアップシステム等普及促進コースではどのような場合に助成が受けられるのでしょうか。助成の対象や対象となる取り組み、経費や助成額などについて順に見ていきましょう。

助成対象となるのは事業主団体

人材確保等支援助成金「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」の対象者

すでに触れたとおり、このコースの助成対象は建設事業主団体であり、かつ次の要件をすべて満たす必要があります。

建設事業主団体である
(構成員の数:10以上、常時雇用の労働者数:50人以上)
構成員の50%が建設事業主※である
 ※建設労働者を雇用し建設業を営む者
建設事業主以外
(一人親方など)は50%以下である
雇用保険加入の
建設事業主が全体の25%以上である
雇用保険「未加入」の建設事業主の割合が25%以下である

また、団体には代表者を置き、規約や規則を設けている、会計経理の独立性が保たれているなど、助成対象となる事業を確実に行える団体だと認められなくてはなりません。

助成金の申請には、まず団体組織内に事業推進委員会を設置し、最大1年間の事業年間計画を策定する必要があります。

計画に沿った事業の取り組みはもちろん、実施後の効果検証も必須です。

助成額

人材確保等支援助成金の建設キャリアアップシステム等普及促進コースの助成金額

このコースでは、取り組みに要した対象経費の一部が助成されます。助成の割合は、申請団体の構成状況により次のように異なります。

事業主区分 助成率
中小建設事業主団体 対象経費の3分の2
上記以外の団体 対象経費の2分の1

中小建設事業主団体とは、中小建設事業主(資本金3億円以下または労働者数300人以下)の割合が3分の2以上で構成された団体のことです。

助成の上限

助成金額には上限があり、団体の規模によって次のように定められています。

団体の地域規模 助成の上限額
全国団体 3000万円
都道府県団体 2000万円
地域団体 1000万円

これは、1事業年度(4/1~3/31)ごとの上限額です。

助成対象となる経費

助成金の対象となる経費

助成の対象となるのは、建設事業主団体が中小構成員等に対して行う次の3つの事業への取り組みです。

中小構成員等とは、団体を構成する中小建設事業主・一人親方や、構成員と直接関係のある中小建設事業主・一人親方をいいます。

対象となる事業 取り組みの内容
CCUS等登録促進事業 CCUSの事業者登録料、技能者登録料などの全額または一部の補助
CCUS等登録手続支援事業 CCUSの各種登録・評価の申請手続きの支援
就業履歴蓄積促進事業 カードリーダーなど必要な機器やアプリなどソフトウェアの導入促進

各事業について、団体が補助した次のような経費が助成対象となります。

事業名 対象経費
CCUS等登録促進事業 ・事業者登録料・技能者登録料
(上記は一体での登録のみ対象)
・レベル判定手数料
・見える化評価手数料(上限5万円)
CCUS等登録手続支援事業 ・専任アルバイト等の人件費、印刷製本費、消耗品費など
・行政書士など外部機関への委託費
就業履歴蓄積促進事業 ・カードリーダーなどの各種機器の購入費・リース料
・アプリなどソフトウェアの導入に係る契約費用(初期費用・月額利用料など)
・機器設置費用
・説明会の開催費用など
(各費用に上限あり)

登録手続きの支援については、各団体につき1回限り、最長1年間の助成となります。その他の2事業については、1事業主につき1回ですが、対象の構成員が異なれば複数年の助成も可能です。

建設キャリアアップシステム等普及促進コース申請の流れ

建設キャリアアップシステム等普及促進コース申請の流れ

建設キャリアアップシステム等普及促進コースの申請は、次のように進めます。

順番 手順 備考
1 事業促進委員会の設置
計画書の作成
・事業推進委員会を設置
・委員会で「計画届」を作成
2 計画届の提出 ・事業を実施する日の2週間前まで
・「事業目標・効果検証報告書」の添付が必要
3 事業の実施→終了 ・実施期間は最長1週間
4 支給申請書の提出 ・事業が終了した月により提出期間が異なるので要注意
5 検証結果の報告
(支給申請と同時が原則)
・事業終了後、事業推進委員会で効果検証を実施
・「事業目標・効果検証報告書」を提出
6 助成金の支給 ・審査完了後に決定・入金

書類の提出先はいずれも、管轄の労働局です。計画届の提出後、取り組み事業の追加などを行う場合には、変更実施の7日前までに計画変更届を出さなくてはいけません。変更届についてはこの後の章で解説します。

支給申請書の提出についても、取り組み事業の終了月によって締切が異なります。これについても、次の章で紹介します。

建設キャリアアップシステム等普及促進コースの注意点

建設キャリアアップ等普及促進コースの注意点

建設キャリアアップシステム等普及促進コースを申請する際は、次の点に注意が必要です。

事業計画の変更には計画変更届の提出が必要

前述のとおり、申請には事業実施の前に計画届を提出することが必須です。この事業計画のうち次の事項を変更する場合には、事前に「計画変更届」を提出しなくてはなりません。

  • 取り組む事業を新たに追加する
  • 所要費用見込み額の総額が計画届出時の額を超える
  • 事業推進員を変更する

変更届は、変更を行う7日前までに出す決まりとなっています。変更届を出さずに変更した場合、該当部分についての助成金は支給対象外となるので要注意です。

書類の申請期限について

人材確保等支援助成金「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」の手続きの期限

申請の流れの部分でも触れましたが、助成金の受け取りには段階ごとに決められた次の期間(期限)を守らなくてはなりません。

手続きの段階 提出期限・期間
計画届の提出 実施日の2週間前まで
計画変更届の提出 変更日の7日前まで
支給申請書の提出 事業の終了月ごとに定められた期間内

支給申請書の提出期間は、取り組みを終えた月によって次のように決められています。期限だけでなく、受付開始日も決まっているので注意してください。

事業終了月 支給申請書の提出期間
4月・5月・6月 7月1日から8月末日まで
7月・8月・9月 10月1日から11月末日まで
10月・11月・12月 翌年の1月1日から2月末日まで
1月・2月・3月 3月1日から5月末日まで

 

特に計画書と支給申請書については、期限を越えると受付してもらえません。計画中に他の事業を追加するなどの場合、変更届については原則7日前までとなっていますが、特別の事情がある場合には猶予される可能性もあります。

書類の保管期限

人材確保等支援助成金「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」書類の保管期限

この助成金を受給するには、計画から変更、申請時に至るまでいくつもの申請書類・添付書類の提出が必要です。そして、提出した書類(写し)を、5年間は保存しておかなくてはなりません。

申請日から5年間ではなく、支給決定日から5年間なので注意してください。

助成金の不正受給への警戒が厳しくなる中、支給決定後にも調査が入る可能性があるということです。誤って破棄などしないよう気を付けましょう。

助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

建設業界の人材不足の深刻な状況を受け、企業能力の見える化や労働者の処遇改善などを目的に作られた建設キャリアアップシステム。このシステムの普及を進めるために作られたのが人材確保等支援助成金に新設された「建設キャリアアップシステム等普及促進コース」です。

このコースは、建設事業主団体への助成となっていることがポイントです。団体が構成員に対し建設キャリアアップシステム等の登録料・手数料の補助や申請手続きの支援、就業履歴データを蓄積する機器などの導入を行った場合に対象となります。

受給にはまず事業の推進委員会を設置し、計画するところから始まります。支給には細かな要件や注意点もあり、不備があれば不支給となってしまいます。

当サイトを運営する社会保険労務士法人Bricks&UKは、各種助成金の支給実績も豊富です。ぜひお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント 建設キャリアアップシステムの導入は、技能者の処遇改善から現場の人手不足の解消に役立ちます。 就業履歴を蓄積し客観的な評価を行うことで、技能者を雇用し育成する企業が伸びていける建設業を目指す狙いがあります。 当助成金は導入にかかる経費補助として使用できますので、導入の際はぜひご活用ください。 Bricks&UKでは貴社に最適な助成金の診断から申請サポートまで、実績豊富なコンサルタントが丁寧に対応します。 お気軽にお問い合わせください。

就業規則を無料で診断します

労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

こんな方は、まずは就業規則診断をすることをおすすめします

  • 就業規則を作成してから数年たっている
  • 人事労務トラブルのリスクを抱えている箇所を知りたい
  • ダウンロードしたテンプレートをそのまま会社の就業規則にしている
無料診断スタート

おすすめ関連記事

最新記事の一覧を見る
  • 労務管理の重要性
  • 就業規則の重要性
  • 就業規則無料診断
  • 就業規則の新規作成
  • キャリアアップ助成金ガイドブック

申請件数実績申請件数実績

受給額ランキング受給額ランキング

注目のタグ注目のタグ

今読まれてます!人気記事今読まれてます!人気記事