【障害者雇用】目的別助成金の解説と注意点

2021.04.23

障害者の受け入れイメージ

令和3年3月1日、障害者雇用率制度が改正されました。これにより、障害者雇用の推進を考えている中小企業も多いことでしょう。

障害者を雇い入れて雇用環境を整備する際には、ぜひ助成金の活用をおすすめします。

ただし、障害者雇用関連の助成金は種類が多く、仕組みも特に複雑です。そこでこの記事では、障害者雇用助成金の種類とその概要をまとめました。

障害者雇用助成金とは

障害者雇用の未来イメージ

豊かな社会を作っていくためには、障害者がそれぞれの適性に合わせ、能力を最大限発揮できる環境を整える必要があります。

そのために、政府は障害者雇用に関するさまざまな助成金を実施し、障害者雇用の促進を図っています。

障害者雇用と障害者雇用助成金

政府が定める障害者雇用率制度も、障害者雇用促進の一環として実施されています。令和3年3月1日には、民間企業の法定障害者雇用率が2.3%に引き上げられました。これにより、43.5人以上の従業員を抱える企業では、1人以上の障害者を雇い入れることが義務付けられました。

法定雇用率に満たない事業主は障害者雇用納付金が徴収され、法定雇用率を達成している事業主は、さまざまな支援を受けることができます。障害者雇用に消極的な事業主にも積極的に取り組んでもらおうと作られたのが、障害者雇用関連の助成金です。

この助成金を活用すれば、費用の一部が回収できるだけではなく社会貢献にもなり、障害者雇用納付金の負担も回避でき、一石三鳥の効果があります。

障害者の範囲

障害者雇用助成金の対象となるのは、大まかにいえば「障害者雇用促進法に規定されている障害者」です。障害者雇用促進法第一章第二条「用語の意義」では、障害者の定義を次のように定めています。

身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、または職業生活を営むことが著しく困難な者

基本的には、障害者手帳や療育手帳を持っている障害者が対象になると考えておけば良いでしょう。

ただし、各助成金によって対象となる障害者は異なります。一部では、障害者手帳を持っていないものの、医療機関から診断書の交付を受けた発達障害者が助成対象になるものもあります。

もっとも、障害者雇用助成金を利用するには、ハローワークなどの支援を受けている障害者を雇い入れる必要があるため、助成金の対象障害者であるかどうかの判断は簡単でしょう。

障害者雇用助成金の種類

障害者雇用助成金の多様なイメージ

障害者雇用助成金を利用できるのは、次のような場合です。

  • 障害者を雇用した
  • 障害者の適切な雇用管理に取り組んだ
  • 障害者の職業能力開発に取り組んだ
  • 障害者の職場定着のための措置を実施した

それぞれの場合で、現在実施されている障害者雇用助成金の概要・対象労働者・受給額などをまとめていきます。

ちなみにこの記事に記載している支給期間や助成金額などは、すべて中小企業を対象とするものです。

障害者を雇い入れた場合の助成金

障害者を雇い入れた場合に利用できる助成金には、次の3つがあります。

・特定求職者雇用開発助成金
・トライアル雇用助成金
・障害者雇用安定助成金

特定求職者雇用開発助成金

特定求職者雇用開発助成金には、全7コースが設けられています。そのうち、障害者雇用で利用できるのは次の3コースです。

・特定就職困難者コース
・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース
・障害者初回雇用コース

それぞれについて説明していきます。

特定就職困難者コース

ハローワーク等の紹介によって障害者を雇い入れた際に、真っ先に検討したいのは特定就職困難者コースです。障害者手帳を持っている障害者を雇い入れる際に広く活用できます。

障害者雇用助成金の多くに共通することですが、対象労働者の障害の種類(特に重度障害者等であるかどうか)と雇用形態(特に短時間労働者であるかどうか)によって、受給額や助成対象期間が変わります。

特定就職困難者コースの助成内容は次のとおりです。

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者 重度障害者等を含む身体・知的障害者・精神障害者 80万円 2年間 20万円×4期
短時間労働者以外 重度障害者等を除く身体・知的障害者 120万円 2年間 30万円×4期
重度障害者等 240万円 3年間 40万円×6期

支給額、助成対象期間および支給対象期ごとの支給額は中小企業事業主のものです。また、賃金を助成する制度では、支給額は支給対象期に対象者に支払った賃金額が上限です。

「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人をいいます。これはのちに紹介する障害者短時間トライアルコースを除き共通です。

「重度障害者等」には、重度の身体・知的障害者、45歳以上の身体・知的障害者や精神障害者が当てはまります。「支給対象期」とは、助成金の分割支給の算定期間で、1期を6カ月とするものです。これはこの記事で紹介する助成金すべてに当てはまります。

発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース

近年、政府は発達障害者の雇用にも力を入れています。ハローワーク等の紹介によって発達障害者や難治性疾患のある人を雇い入れた場合には、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースが利用できます。

対象となる発達障害は、自閉症・アスペルガー症候群・学習障害・注意欠陥多動性障害などです。難治性疾患と合わせて約360の疾患が対象となっています。

なお、発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースの対象となる労働者は、障害者手帳を持っておらず医療機関から発達障害の診断を受けている発達障害者です。

障害者手帳を持っている発達障害者は精神障害者として支援を受けることとなり、雇い入れた際には上記の特定就職困難者コースの対象となります。

発達障害者を雇い入れた中小企業は、対象者の労働時間に応じて次のような助成が受けられます。

対象労働者 支給額 助成対象期間 支給対象期ごとの支給額
短時間労働者 80万円 2年間 20万円×4期
短時間労働者以外 120万円 2年間 30万円×4期

支給される金額は、支給対象期間に対象労働者に支払った賃金の額が上限です。

障害者初回雇用コース

これまで障害者雇用経験がない事業主が、初めて障害者を雇い入れ、かつ法定雇用率を達成した場合には、助成金の障害者初回雇用コースが利用できます。

ただし、障害者初回雇用コースは令和3年3月31日で廃止予定です。受給には、1人目の対象労働者を令和3年3月31日までに雇い入れていることが条件となっています。

障害者初回雇用コースの助成内容は次のとおりです。

対象労働者 雇用人数 支給額
短時間労働者 身体障害者、知的障害者、精神障害者 2人 120万円
重度障害者等 1人
短時間労働者以外 身体障害者、知的障害者、精神障害者 1人

短時間労働者は、2人で1人(重度障害者等はそのまま1人)としてカウントされます。

ここでいう「雇用人数」とは、法的雇用障害者数が1人の事業主(常用する労働者数が43.5人~87.0人未満)に必要な雇用人数のことです。

障害者初回雇用コースの利用には、法定雇用率の達成が条件となります。必要な雇用人数は、常用労働者数によって異なります。

トライアル雇用助成金

トライアル雇用助成金は、ハローワーク等の紹介でトライアル雇用を実施した場合に利用できる助成金です。

<トライアル雇用とは>
経験不足など事情により就職が困難となっている人を、一定の期間、試験的に有期雇用として雇うこと

対象者はハローワーク等の紹介によって雇い入れる必要があります。


トライアル雇用をする対象労働者が障害者であれば、障害者トライアルコースまたは障害者短時間トライアルコースを利用できます。

障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースの助成内容は次のとおりです。

コース区分 対象労働者 トライアル雇用期間 支給額
障害者トライアルコース 精神障害者以外の障害者 原則3カ月 最大12万円
(月額最大4万円×3カ月)
精神障害者 原則6~12カ月

最大36万円(月額最大8万円×3カ月、その後4万円×3カ月)

障害者短時間トライアルコース すべての障害者 最長12カ月 最大48万円(月額最大4万円×12カ月)

障害者短時間トライアルコースは、雇用時の所定外労働時間を週10時間以上20時間未満とし、12カ月のトライアル期間内に週20時間以上の就労を目指すものです。

施設等の整備や適切な雇用管理を行った場合の助成金

障害者のための環境整備イメージ

障害者を新しく雇い入れるのに必要な雇用環境を整備するため、またはすでに働いている障害者の雇用環境を改善するために施設の設置や整備など雇用管理の措置を行った場合にも、助成金が受給できます。

複数の助成金制度が実施されていますが、それらをまとめて「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」と呼んでいます。

障害者雇用給付金制度に基づく助成金

雇用管理措置にはさまざまなものがあり、利用できる助成金も多岐にわたります。中でも中小企業が利用できるのは次の5つです。

・障害者作業施設設置等助成金
・障害者福祉施設設置等助成金
・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金
・障害者介助等助成金
・重度障害者等通勤対策助成金

これらの制度は、労働局やハローワークに支給申請するのではなく、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構に申請します。

障害者作業施設設置等助成金

障害者作業施設設置等助成金は、雇い入れている障害者の作業のしやすさに配慮した施設や設備の設置・整備を行った場合に、費用の一部を助成する制度です。

施設の設置または整備の方法によって、以下の2種類に分けられます。いずれも支給限度額は、対象となる障害者1人につき月額13万円、支給期間は3年間です。

<第1種作業施設設置等助成金>

作業用の施設などを新しく建てたり購入したりして設置・整備した場合に支給されるものです。

支給対象費用に助成率(3分の2)をかけた金額が支給限度額の範囲内で支給されます。

<第2種作業施設設置等助成金>

作業施設などを賃借によって設置したり整備したりした場合には、支給対象費用に助成率(3分の2)をかけた金額を、支給限度額の範囲内で受給できます。

障害者福祉施設設置等助成金

雇用する身体・知的・精神障害者の障害特性に配慮した福利厚生用の施設を、設置・整備した場合に利用できるのがこの助成金です。

助成金の対象となる福祉施設は、保健施設・給食施設・託児施設・購買施設など。これらに付属する設備も該当します。

設置や整備とは、たとえば身体障害者への配慮のために事業所内の段差を減らす、スロープを設置する、扉を開き戸から引き戸に改修するといったことです。

助成率は、設置などにかかった費用の3分の1です。ただし支給には限度があり、対象障害者1人につき225万円まで、同一事業所につき1年度あたり最大2250万円とされています。

重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金

重度身体障害者等を多数(10人以上かつ雇用労働者数の10分の2以上)継続して雇用する事業主は、障害者のための施設を設置・整備することで助成金を受給できます。

たくさんの障害者を継続雇用する事業主への支援であることから、支給の限度額はかなり高く設定されています。

支給限度額 助成率
5000万円 3分の2

第3セクター方式による重度障害者雇用企業などに対しては、支給限度額1億円、助成率4分の3という特例が適用される可能性もあります。

障害者介助等助成金

障害者の雇用を継続させるため、業務に必要な介助について取り組んだ事業主には、障害者介助等助成金が支給されます。

4つの助成金があり、介助の措置として何を行ったかによって対象が異なります。

・職場介助者の配置または委嘱助成金
・職場介助者の配置または委嘱の継続措置にかかる助成金
・手話通訳・要約筆記等担当者の委嘱助成金
・障害者相談窓口担当者の配置助成金

たとえば、雇用して1年未満の重度視覚障害者が事務の仕事に従事するために、職場に介護者を配置したとします。

その場合は「職場介助者の配置または委嘱」に該当し、配置に必要となった費用の4分の3が助成され、最大10年間にわたって受けることができます。ただし1人につき15万円という支給上限額もあります。

重度障害者等通勤対策助成金

重度障害者等の中には、通勤が困難なために就労が難しい人もいます。そういった障害者の通勤に配慮した措置を行った場合には、重度障害者等通勤対策助成金が利用できます。

これには、重度障害者等用住宅の賃借助成金、指導員の配置助成金、住宅手当の支払助成金など計8種の助成金が用意されています。

その1つ、重度障害者等用住宅の賃借助成金を取り上げてみましょう。

この助成金は、対象障害者の通勤が難しく、そのままでは雇用が継続できないような場合に、対象障害者に配慮した構造・設備を備えた住宅を会社が借りることで受給できるものです。

たとえば車いすを使用しており、公共交通機関での通勤が困難な障害者のために、事業所から車いすで通勤できる距離に住宅を借りた場合などが当てはまります。

この重度障害者等用住宅の賃貸助成金では、住宅の賃借費用の4分の3が助成され、最大10年間にわたり受けることができます。ただし支給限度額は、世帯用が月10万円、単身者用が月6万円と決められています。

障害者の職業能力開発を行った場合の助成金

職業能力を開発し花開くイメージ

障害者が働く上で必要な職業能力の開発に取り組んだ事業主にも、対象となる障害者雇用助成金制度が用意されています。

人材開発支援助成金(障害者職業能力開発コース)

障害者の職業能力を開発・向上させるために教育訓練を行った事業主は、人材開発支援助成金の1つ「障害者職業能力開発コース」が利用できます。

障害者職業能力開発コースとは、次のいずれかに取り組んだ場合に助成金が受けられるものです。

・訓練の施設または設備の設置、整備あるいは更新
・障害者能力開発訓練事業の実施

それぞれについて見ていきましょう。

訓練の施設または設備の設置・整備または更新

障害者の訓練に必要な施設または設備を設置・整備したり、その更新に取り組んだりした中小企業には、かかった費用に助成率をかけた額が支給限度額内で助成されます。

措置の内容 助成率 支給限度額
初めて助成金の対象となる訓練科目ごとの施設や設備の設置・整備 4分の3 5000万円
訓練科目ごとの施設や設備の更新 1000万円

訓練科目ごとの施設や設備の更新については、複数回の支給を受ける場合も累積で1000万円が上限です。

障害者職業能力開発訓練事業の実施

障害者職業能力開発訓練事業を実施した場合には、実施に要した1人あたりの運営費に助成率をかけた金額が、支給上限額の範囲内で助成されます。

対象障害者 助成率 支給上限額
重度障害者等 5分の4 月額17万円
上記以外の障害者 4分の3 月額16万円

対象となる訓練は、厚生労働省の基準に適合しているものでなくてはならず、管理者や期間、時間や科目などに要件があります。

障害者の職場適応・定着のための措置を実施した場合の助成金

障害者の職場適応イメージ

障害者を雇用した後、職場への適応や定着のために取り組んだ場合に利用できるのが、障害者雇用安定助成金です。

障害者雇用安定助成金

障害者雇用安定助成金には、2つのコースがあります。

・ 職場適応に取り組んだ事業主を助成する「障害者職場適用援助コース」
・ 職場定着に取り組んだ事業主を助成する「障害者職場定着支援コース」

ただしこちらは、令和3年4月に予定されている助成金の整理・統廃合の対象となっています。

かなり大きな整理・統廃合となる予定ですが、ここでは大まかな内容をお伝えします。

障害者職場適応援助コース

障害者職場適応援助コースは、職場への適応に課題がある障害者に対して、職場適応援助者によるサポートを行った場合に助成されます。対象となるのは経費や賃金です。

職場適応援助者(ジョブコーチとも呼ばれる)が職場に訪問する場合と、職場に在籍する場合とで助成の内容が異なります。

令和3年4月、障害者職場適応援助コースは「職場適応援助者助成金」に移管されます。これに伴い、支給申請先も独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構に変わります。

<訪問型職場適応援助者による支援>

職場適応援助者が当該障害者のサポートのために職場を訪問する場合には、支援計画に基づきサポートを行った期間を対象として、助成を受けることができます。

支給額は、1日の支援時間が4時間以上の日については16,000円、4時間未満の日については8,000円です。精神障害者への支援の場合は、3時間未満が8,000円、3時間以上は16,000円となります。

訪問型職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担し、養成研修の終了後6カ月以内に支援を開始した場合には、受講料の2分の1の額もあわせて支給されます。

<企業在籍型職場適応援助者による支援>

障害者の職場適応を支援するため、社内に職場適応援助者を配置した場合には、支援計画期間に応じて助成金が支給されます。

支給額は対象となる労働者の障害の種類や労働時間によって次のように異なります。表の支給額は1人あたりの月額です。

対象労働者 支給額
精神障害者 短時間労働者 6万円
短時間労働者以外 12万円
上記以外の障害者 短時間労働者 4万円
短時間労働者以外 8万円

これに加えて、企業在籍型職場適応援助者養成研修の受講料を事業主がすべて負担し、養成研修の終了後6カ月以内に支援を実施した場合には、受講料の2分の1の額が支給されます。

障害者職場定着支援コース

障害者職場定着支援コースは、障害者の職場定着に取り組んだ事業主を助成するものです。

このコースも、令和3年4月に行われる予定の制度の整理・統廃合の対象です。対象となる措置について、次のような変更点があります。

・柔軟な時間管理や休暇取得 → 廃止
・短時間労働者の勤務時間延長 → 廃止
・正規・無期雇用への転換 → キャリアアップ助成金「障害者正社員化コース」に移管
・職場支援員の配置 → 障害者介助等助成金「職場支援員の配置助成金」に移管。支給申請先は(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に変更
・職場復帰支援 → 障害者介助等助成金「職場復帰支援助成金」に移管。支給申請先は(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構に変更
・中高年障害者の雇用継続支援 →廃止
・ 社内の理解促進 →廃止

助成対象となる措置が7つから3つになり、一部は支給申請先も変更されます。

では、今後も継続される3つの支援措置について見ていきましょう。

<正規・無期雇用への転換>

有期雇用の障害者を正規雇用または無期雇用に転換した場合には、次のような助成を受けられます。

対象障害者 転換区分 支給総額 支給対象期間 支給対象期ごとの支給額
重度身体・知的障害者、精神障害者 有期→正規 120万円 1年間 60万円×2期
有期→無期 60万円 30万円×2期
無期→正規 60万円 30万円×2期
上記以外の障害者 有期→正規 90万円 45万円×2期
有期→無期 45万円 22.5万円×2期
無期→正規 45万円 22.5万円×2期

<職場支援員の配置>

業務の遂行に必要な援助・指導を行う職場支援員を雇用または業務委託によって配置した場合に助成が受けられます。受給額は次のように算出します。

【雇用をした場合】
受給額 = 支給月額 × 支援対象労働者数 × 雇用月数 × 職場支援員の人数 × 支給対象期数

【業務委託をした場合】
受給額 = 支給月額 × 支援対象労働者数 × 業務委託月数 × 支給対象期数

支給月額や対象期間などは次のとおりです。

対象労働者 支給月額 支給対象期間 支給対象期ごとの支給額(最大)
短時間労働者 2万円 2年間 12万円×4期
短時間労働者以外 4万円 24万円×4期

ただし精神障害者の場合は、支給対象期間が3年間、支給対象期数が最大6期となります。

このほか、委嘱により職場支援員を配置した場合にも、支給対象期間内の支援1回あたり1万円の支給が受けられます。

<職場復帰支援>

中途障害者に対し、時間的な配慮や職務の開発に取り組んで職場復帰を支援した場合に助成が受けられます。

時間的な配慮とは、医師の意見や本人の同意に基づき労働時間を調整したり、通院などのための特別な有給休暇を与えたりすることです。

支給月額 支給対象期間 支給対象期ごとの支給額
1人あたり6万円 1年間 36万円×2期

また、時間的配慮・職務開発に伴う講習を実施した場合には、講習に要した経費に応じて加算があります。

経費の額 支給対象期間 支給対象期における支給額
5万円以上10万円未満 1年間 3万円
10万円以上20万円未満 6万円
20万円以上 12万円

支給の対象となる経費には、外部講師への謝礼金や交通費、講習会場の使用料や教材費などが当てはまります。

なお、上記の内容は2021年3月時点で公表されているものです。助成金の整備・統廃合に伴って助成内容が変更される可能性もあります。

障害者雇用助成金の注意点

助成金制度が複雑で困っている人

障害者雇用助成金を利用する際には、注意すべき点もあります。ここでは3つのポイントについて説明します。

法定雇用率の算定は複雑である

障害者の法定雇用率は、現在2.3%に定められています。そのため常用労働者が43.5人以上の事業主は、最低1人の障害者を雇う必要があります。

雇用人数のカウント方法は障害者の種類や雇用形態によって異なるため、注意が必要です。

障害者の種類 雇用形態 1人あたりのカウント
重度身体・知的障害者 短時間労働者 1人
短時間労働者以外 2人
重度身体・知的障害者以外 短時間労働者 0.5人
短時間労働者以外 1人

たとえば、最低1人の障害者の雇用義務がある事業主が重度身体障害者・重度知的障害者以外の人を短時間労働者として雇う場合、1人ではなく2人を雇い入れなければなりません。

1人だけでは0.5人とカウントされるため法定雇用率をクリアできず、障害者雇用納付金の支払いを求められます。

不支給要件に注意

この記事で解説したすべての助成金には、共通する不支給要件があります。

たとえば以前に雇用関係助成金の申請をし、不正受給として不支給決定や取り消しを受けた場合、あるいは労働保険料に未納がある場合、労働法に違反した事実がある場合などには、助成金は支給されません。

ただし不正受給や労働保険料の未納などに関しては、それぞれの指定の期間を過ぎれば支給の対象となり得ます。

支給申請の手続きが難しい

障害者雇用に伴って利用できる助成金制度の種類は多く、実施する措置によって支給要件が細かく決められているものも少なくありません。

助成金のコースによって対象となる取り組みが異なれば、支給申請に必要な書類も異なります。支給申請や書類提出のタイミングが異なる場合も多いです。

申請に不備があれば受給までに時間がかかり、資金繰りに支障をきたすおそれもあります。支給申請期限を守れなければ、受給そのものができなくなります。

そのため、支給申請の仕組みはしっかりと把握することが大切です。特に障害者雇用安定助成金は、令和3年4月の整備・統廃合の対象となっているため、支給申請の方法も変わると考えられます。最新の情報に注意を払っておきましょう。

障害者雇用助成金の申請なら社会保険労務士を利用

助成金申請の作業をする社労士

障害者雇用助成金を活用するなら、時間や作業的な手間を考えると社会保険労務士を利用して申請するのがベストな方法です。

助成金の申請を委託した場合の流れ

障害者雇用助成金の申請に不安がある場合は、専門家である社会保険労務士に委託することをおすすめします。その際の流れを見ておきましょう。

1、相談・依頼

社会保険労務士は、まず依頼者(相談者)の話を聞き、利用できる障害者雇用助成金(複数利用できる場合には併給調整も視野に入れた上での最適な選択肢)の提案などを行います。

サービスの内容や報酬などを確認するため、まずは社労士事務所に相談しましょう。社労士からの提案・説明に納得した後、正式に契約します。

2、事前チェック

助成金の申請に向けて、資料や制度の整備状況などを事前に確認します。

就業規則や雇用契約書、賃金台帳、出勤簿など、助成金申請に必要となる社内制度や資料に不備や不足などがないかをチェックし、必要な書類等を取り揃えます。

3、計画のサポート

この記事で紹介した障害者雇用安定助成金に限らず、助成金には事前に計画を立てて取り組む必要のあるものが数多くあります。

必要に応じて社会保険労務士が計画作成をサポートし、提出を代行します。

4、取り組みのサポート

必要があれば、受給に必要な取り組みを実施する際にも社会保険労務士がサポートします。

計画に沿った取り組みができているかをチェックするだけでなく、取り組みに応じて都度発生する書類の保管などにも注意を払います。

5、支給申請

取り組みの完了後、社会保険労務士が支給申請期間内に申請を代行します。繰り返し申請するものは、対象期間後にその都度申請を行います。

申請書類等の作成は社会保険労務士が行います。申請書類に捺印し、提出が必要な書類を社労士に渡します。

6、支給決定

取り組みや提出書類の内容に問題や不備・不足がなければ、助成金の申請から3~6カ月ほどで支給決定通知が届き、指定口座に振り込まれます。

助成金申請に社会保険労務士を利用するメリット

ここまで障害者雇用助成金の種類とその概要を大まかにお伝えしましたが、より具体的な事例に即して必要な取り組みを行い、資料を揃えるのは、専門家でなければ難しいというのが実状です。

社会保険労務士を利用すれば、次のようなメリットがあります。

  • 制度の新設や廃止、支給要件の変更など、最新かつ自社に必要な情報のみを把握できる
  • 申請が適正に、かつ効率よくスムーズに行え、受給できる可能性も高まる
  • 自社の事業運営に専念でき、時間や労力を無駄に費やさずに済む

ただし、社会保険労務士を利用したからといって、必ず助成金が受給できるとは限りません。取り組みが不十分だったり、不支給要件に該当していたりなどして、受給できないこともあります。

障害者雇用助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

信頼できる社労士との契約イメージ

障害者の雇用はこれからも社会にとって不可欠なことですが、企業側に一定の負担が生じることも事実です。そのため、対象となる従業員を雇う場合にはぜひ、適正な取り組みを行って助成金を申請しましょう。

とはいえ助成金制度の内容は複雑であり、変化もしています。自社に最適な助成金を活用し、スムーズに申請するためには、社会保険労務士への依頼をおすすめします。

当社Bricks&UKの社会保険労務士は、幅広く情報収集を行い、助成金制度活用の提案・申請書類に関するサポート、手続き代行などを行っています。

障害者雇用助成金の利用をお考えの際は、ぜひBricks&UKにご相談ください。

監修者からのコメント 障害者雇用に関する助成金はその目的に応じてそれぞれ用意されており、幅広く活用することができます。 しかしながら、要件が複雑であったり、申請先が異なる場合もあり、注意が必要です。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。

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