【2021年10月14日追記】当コースについて、2021年度の受付が10月15日で終了となることが決まりました。
重要なお知らせ|厚生労働省
働き方改革の一環として、政府は労働時間の削減や生産性の向上、年次有給休暇の取得促進などに取り組んでいます。令和2年4月1日には、中小企業に対する時間外労働の上限規制が適用されたため、対応に迫られた会社も多いことでしょう。
そこで活用したいのが、働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースです。この記事では、労働時間短縮・年休促進支援コースの概要や昨年度からの変更点、支給要件や注意点について解説します。
目次
働き方改革推進支援助成金とは
「働き方改革推進支援助成金」は、その名のとおり働き方改革として、生産性を向上させつつ従業員の労働環境の改善に取り組む中小企業を支援する制度です。ちなみに以前は「時間外労働等改善助成金」という名称でした。
この助成金には4つのコースがあります。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
勤務間インターバル導入、労働時間適正管理のコースについては、こちらの記事を参考にしてください。
冒頭でも述べたとおり、この記事では「労働時間短縮・年休促進支援コース」に焦点をあてていきます。
働き方改革推進支援助成金「労働時間短縮・年休促進支援コース」昨年からの変更点
働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースは、令和3年度からいくつかの点で変更されています。
主な変更点3つを見ておきましょう。
自己取引の禁止
令和3年度から、労働時間短縮・年休促進支援コースで実施する労働環境改善のための事業において、自己取引を防止する取り決めが設けられました。
具体的には、改善事業の受注者が次のいずれかに該当すると不支給要件に該当し、支給を受けられなくなりました。
- ①申請事業主
- ②申請代理人
- ③申請代理人
- ①~③の関連企業
たとえば、支給対象となる取り組みの一つに「外部専門家によるコンサルティング」があります。これを実施するにあたり、次のように依頼をしたとします。
・コンサルティングを社会保険労務士 A氏に依頼
・助成金の申請代行も社会保険労務士 A氏に依頼
この場合、改善事業の受注者と提出代行者が被るため、不支給要件に該当します。
また、①~④のいずれかが相見積もり先に含まれているだけでも不支給要件に該当するため、注意が必要です。
成果目標の内容変更
成果目標も、いくつかの点で変更されています。令和2年度からの変更点をまとめると以下の通りです。
令和2年度の成果目標 | 令和3年度の変更点 |
すべての対象事業場で時間外・休日労働時間数を減らし、月60時間以下または月60時間超80時間以下に上限を設定する。その後、労働基準監督署に届出を行う | 変更なし |
就業規則の改定によって所定休日を増加し、実績を確認する | 削除 |
就業規則を整備し、次のような特別休暇を認める ・ボランティア休暇 ・教育訓練休暇 ・病気休暇 |
特別休暇に次のものを追加する ・新型コロナ感染症対策、不妊治療など特別な配慮が必要な人のための休暇 |
すべての対象事業場で年次有給休暇の規定を整備し、時間単位の有給休暇を取得可能とする | 変更なし |
また、特別休暇については、令和2年度は有給・無給を問いませんでしたが、令和3年度は有給休暇に限定されています。
成果目標ごとの申請回数
申請回数の上限も変更されました。成果目標ごとに1事業主1回限りの申請に限られ、すでに支給を受けた成果目標での申請はできなくなります。
たとえば、前述のとおり令和3年度から改善事業の1つとして「特別な配慮を必要とする労働者への特別休暇」の導入が追加されました。しかし昨年度、病気休暇の導入で助成金を受給した場合、同じ成果目標内での取り組みと見なされるため申請はできません。
ただし、これはあくまでも労働時間短縮・年休促進支援コース内での制限です。したがって次のような場合は問題なく申請可能です。
①昨年度、コロナ対策のために特別休暇制度を導入して「職場意識改善特例コース(現在は終了)」の支給を受けた
②今年度、病気休暇を導入し「労働時間短縮・年休促進支援コース」を申請する
働き方改革推進支援助成金「労働時間短縮・年休促進支援コース」を詳しく解説
ここからは、働き方改革推進支援助成金の労働時間短縮・年休促進支援コースについて、支給要件を詳しく解説します。
対象となる事業主
この助成金の対象となる事業主の条件は、次の3つです。
- 労働者災害補償保険の適用を受けており、なおかつ中小企業事業主である
- 交付申請時点で、年5日の年次有給休暇の取得に向けて就業規則を整備している
- 交付申請時点で、成果目標に向けた条件を満たしている
成果目標については後ほど説明します。
対象となる取り組み
支給対象となる取り組みとして、次のうちいずれか1つ以上を実施する必要があります。
- 労務管理担当者に対する研修
- 労働者に対する研修・周知・啓発
- 外部専門家によるコンサルティング
- 就業規則や労働協定の作成・整備・変更
- 人材確保に向けた取り組み
- 労務管理用のソフトウェアや機器、デジタルタコグラフの導入・更新
- 労働能率向上のための設備・機器の導入・更新
①の研修には業務研修も含まれます。③の外部専門家とは社会保険労務士やコンサルタントなどのことです。
⑥や⑦の機器の購入については、パソコンやタブレット端末、スマートフォンは対象とならないことに注意してください。
成果目標の設定
上記で紹介した取り組みは、成果目標を達成するために行うものでなくてはなりません。
令和3年度は、この成果目標に次の3つが指定されました。この中から1つ以上を選んで実施します。
- 時間外・休日労働時間数を減らし、「月60時間以下」または「月60時間超80時間以下」に上限を設定する
36協定で設定し、労働基準監督署に届け出を行うことが必要です。
- 就業規則を整備して、下記の特別休暇の規定のいずれか1つ以上を新たに導入する
・病気休暇
・教育訓練休暇
・ボランティア休暇
・特別な配慮が必要な労働者のための休暇
「特別な配慮が必要な労働者のための休暇」には、前章でも述べたように新型コロナウイルス感染症対策や不妊治療などが当てはまります。
- 時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入する
この成果目標は、いずれも対象となるすべての事業場(営業所など)において達成させる必要があります。
また、指定する従業員の時間給を3%以上(または5%以上)引き上げることを、上記の成果目標に加えることもできます。
事業実施期間
この助成金は、まず取り組みについての事業実施計画書を「交付申請書」に添付し、最寄りの労働局に届け出る必要があります。
交付についての審査に通ったら、計画に基づいて成果目標の達成に向けた取り組みを行い、支給申請をする流れです。
取り組み事業を実施する期間は、交付が決定した日から令和4年1月31日までです。
支給額
助成金の支給額は少々ややこしいため、整理しながら解説します。
助成率
助成率は、取り組みの実施に要した経費の4分の3です。
ただし例外として、次の条件をすべて満たす場合には、助成率を5分の4とします。
- 常時使用する労働者数が30人以下である
- 取り組みで「労務管理用のソフトウェアや機器、デジタルタコグラフの導入・更新」「労働能率向上のために設備・機器の導入・更新」のいずれかを実施する
- 所要経費が30万円超である
しかし、助成額には上限があります。
上限額
受給の上限額は、「3、成果目標の設定」で記載した成果目標①~③についてそれぞれ設定されています。経費が上限額を超えると「上限額=支給額」となる点に注意しましょう。
それぞれの上限額は以下の通りです。
- 成果目標①時間外労働の削減
事業実施前の時間数 | |||
---|---|---|---|
月80時間超 | 月60時間超 | ||
事業実施後の時間数 | 月60時間以下 | 100万円 | 50万円 |
月60時間超80時間以下 | 50万円 | 支給対象外 |
表で示している「時間数」とは、時間外労働時間と休日労働時間の合計です。
- 成果目標②新規特別休暇の導入:50万円
- 成果目標③時間単位の有給休暇制度:50万円
複数の成果目標を達成した場合は、上限もプラスした金額となります。
①~③の成果目標に加えて賃金アップの目標を設定した場合には、この上限額に次で紹介する賃金引き上げ達成時の加算額をプラスした額が受給の上限額となります。
賃金増額による加算
成果目標に加え、指定する労働者の賃金を3%以上または5%以上引き上げた場合には、人数と増加の率に応じて以下の加算を受けることができます。
対象者数 | 賃金引き上げ率 | |
3%以上 | 5%以上 | |
1~3人 | 15万円 | 24万円 |
4~6人 | 30万円 | 48万円 |
7~10人 | 50万円 | 80万円 |
11~30人 | 1人あたり5万円 (上限150万円) |
1人あたり8万円 (上限240万円) |
指定する労働者とは、たとえば一部の部署に所属する、人事考査での評価が一定以上である、などの条件で賃金引き上げが適用される人のことです。
締め切り
この助成金の手続きには、3つのタイミングで締め切りが設けられています。各締め切り日に遅れないよう注意が必要です。
①交付申請書提出の締め切り:令和3年11月30日
ただし国の予算額に制約されるため、この締め切り前でも受付を終了することがあるので要注意です。
②交付決定後、取り組み実施の締め切り:令和4年1月31日
③取り組み後、支給申請の締め切り:事業実施予定期間が終了した日から起算して30日後の日または令和4年2月10日のいずれか早い日
働き方改革推進支援助成金の申請時の注意点
働き方改革推進支援助成金の申請に伴い、次の4つの点に注意しておく必要があります。
- 取り組みに要した経費が助成金の対象かどうか、確認が必要
- 取り組みには、36協定の締結や就業規則等の整備が必須
- 交付が決定される前に行った取り組みは助成金の対象外
- 国の予算で制限があるため、締切より前に終了となることがある
働き方改革に向けて行った取り組みでも、要件を満たさなければ助成金は適用となりません。また、取り組みには会社の一方的な押し付けではなく従業員の合意が必須なので、規定を作り形に残す必要があります。
また、気を付けたいのは交付が決定される前に取り組みを始めてしまうと対象外となることです。とはいえ申請の受付自体が早めに終わってしまう可能性もあるので、申請を考えるなら早めの行動がおすすめです。
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働き方改革推進支援助成金の「労働時間短縮・年休促進支援コース」は、労働時間の削減や有休休暇の取得を推進した事業主を助成するものです。
令和3年4月1日から、不支給要件や成果目標などいくつかの点で変更があります。支給申請には最新の情報を確認する必要があります。
助成金を受けるための取り組みには、労働協定や就業規則等の整備に専門的な知識が必要です。スムーズな受給のためにもぜひ、労務のプロである社会保険労務士への依頼を検討してください。
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監修者からのコメント 働き方改革推進支援助成金「労働時間短縮・年休促進支援コース」は人気のある助成金のひとつです。 交付申請書の提出締め切りが令和3年11月30日となっていますが、昨年と同様に期限前に締め切ってしまう可能性もあります。生産性向上に役立つ物品購入を検討されている事業主様は、ぜひ早めに取り組んでいただくことをお勧めします。
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