起業時におすすめの助成金4選!

2021.06.25

2022.04.27

起業イメージ

起業の際は、何かとお金がかかるものです。設備・備品だけでなく、従業員の人件費も必要になってきます。金融機関からの融資のほか、国や地方自治体からの助成金・補助金も活用したい、と考える人は大勢います。

助成金や補助金には返済義務がないというメリットもある一方、実は申請手続きがかなり複雑です。制度ごとに条件や準備する書類も細かく指定されているため、申請前に知識をつけておきたいものです。

そこでこの記事では、起業時に知っておくと便利な助成金・補助金について詳しく説明します。助成金を申請する際の注意点についても触れていますので、これから申請をお考えの方はぜひご覧ください。

助成金・補助金とは何か?

助成金と補助金は、ほとんど同じ意味で使われがちです。実は2つの制度には共通点がある一方、募集の趣旨や審査の有無などに重要な違いがあります。ここでは助成金と補助金、2つの制度の特徴とそれぞれの違いについて解説します。

助成金とは?

助成金とは、主に厚生労働省が管轄する制度です。雇用保険加入者がいる会社を対象に、人材育成や雇用促進を支援する目的で支給され、返済の義務はありません。

条件に合致すればどんな企業でも申請できるほか、多くの場合は年間を通じて申請が可能です(一部申請に期限のある助成金もあります)。

取り組みの内容 対応する助成金の例
(☆印は後半で詳しく説明)
従業員の雇用維持 ・雇用調整助成金
・産業雇用安定助成金
新しい雇用の創出 ・☆特定求職者雇用開発助成金
・トライアル雇用助成金
転職・再就職の支援 ・労働移動支援助成金
中途採用等支援助成金
労働環境や待遇の改善 ・☆キャリアアップ助成金
・☆人材確保等支援助成金
・受動喫煙防止対策助成金
職業訓練の支援 人材開発支援助成金

※追記:中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)は令和4年3月をもって廃止されました

助成金の申請をするには通常、「計画書の提出→認可→計画実施→報告と書類提出→受給」という5つの手順を踏んでいく必要があります。

まず助成金の趣旨に応じた計画書を作成し、管轄の労働局かハローワークに提出します。実際に取り組みを行うのは、計画書が認可された後です。計画全体が完了したら再び受給のための手続きを行います。

補助金とは?

補助金の管轄は、経済産業省や中小企業庁、地方自治体などです。特定の事業を支援することによる経済振興・公益達成を目的としており、助成金と同じく基本的に返済義務はありません。

ただし、補助金の内容によっては、支援を受けた事業の収益を一部納付するよう求められることもあります。

補助金名 管轄する省庁等
ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金 経済産業省
小規模事業者持続化補助金 中小企業庁
被災小規模事業者再建事業費補助金 中小企業庁
IT導入補助金 (独)中小企業基盤整備機構

また、補助金の募集は1カ月程度の短期間で行われることが多く、事業計画書や経費明細などの書類提出が必要です。

補助金は申請したからといって必ず支給されるとは限りません。補助金の受給対象となるには、事業実施前に行われる審査で合格しなければならないからです。

つまり、補助金を受給するには事業の必要性・将来性を計画書でアピールしなければならないのです。審査は事業計画の終了にも実施され、事業の実施報告や必要経費などがチェックされます。

助成金・補助金の違いについて

助成金と補助金の比較

同じものを表す言葉として使われることも多い「助成金」と「補助金」ですが、実は支給の目的や管轄省庁、審査内容などの点で大きく違いがあります。主な違いは、次の表の通りです。

  助成金 補助金
主な管轄 厚生労働省 経済産業省、中小企業庁、地方自治体
目的 雇用状況・職場環境の改善 特定の技術・設備の普及、事業拡大など
募集期間 随時 期間限定(約1カ月)
審査 書類・実施内容のチェック 事前・事後に審査(不採択の可能性もある)

助成金と補助金の最大の違いは、審査の厳しさです。助成金は書類等に不備がなければ基本的にすべての申請が受理されます。

一方、補助金は最初の計画提出の段階で審査が発生します。この段階で不採択となってしまうと、支給を受けられません。補助金は支給できる件数や予算が決まっているため、特に優れた計画を提案した企業だけを選りすぐられるようになっているのです。

ただし、「助成金」の名前がつけられていても補助金のような性質を持っている制度もあり、管轄する団体によっては定義があいまいなことも。補助金や助成金を利用する際は名前だけで判断せず、募集要項や金額などをよく確認する必要があります。

起業家が助成金を活用するメリット

助成金のメリット

助成金は、すでに事業を始めている人だけが対象ではありません。中には、起業時に活用できる助成金もあります。

起業で助成金を使うことには、主に3つの大きなメリットがあります。

  • 返済が不要である
  • 労働環境の整備につながる
  • 自社の信頼性を高められる

助成金は返済の必要がないため、経済的に大きな助けとなることは間違いありません。

また、雇用関連の助成金は、法令の遵守はもちろん、従業員が働きやすい労働環境を整えた事業主に対して支給されるため、助成金を申請するためには必然的に、労働環境を整えることができるのです。

こちらの記事も参考にしてください。

起業家が活用できる助成金

起業家が活用できる助成金の明るいイメージ

ここからは、起業家が活用できる助成金として、次の4つの制度について解説します。

  • キャリアアップ助成金
  • 中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)
  • 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
  • 人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

※中途採用等支援助成金の生涯現役起業支援コースは、令和4年3月をもって廃止されました。
※人材確保等支援助成金の雇用管理制度助成コースは、令和4年3月をもって受付休止となっています。

上記の助成金は、どれも新しい従業員の雇用や、従業員の定着を促進するための制度です。各助成金には、次のような条件が共通して設定されています。

【助成金を受け取るための共通条件】

  • 雇用保険適用の企業(社内に雇用保険の被保険者がいる)である
  • 事前に計画書を作成し、期限内に管轄の労働局かハローワークに提出する

支給額や必要書類などは、中小企業かどうかなど企業規模によって異なることがあります。中小企業の定義は次の表をご覧ください。

業種 資本金・出資総額 常時雇用する労働者数
小売業(飲食店を含む) 5000万円以下 50人以下
サービス業 5000万円以下 100人以下
卸売業 1億円以下 100人以下
その他 3億円以下 300人以下

資本金または従業員数のどちらかを満たせば、中小企業と見なされます。

助成金は指定の条件さえ満たしていれば申請できますが、過去に不正受給や労働保険料の未納があったり、労働法に違反する事項があったりすると受給できないことも。

また、制度は情勢や必要性に応じて改正が行われるため、常に最新の情報をキャッチする必要があります。この記事では、令和3年5月23日時点で確認した情報をもとに助成金の解説をしています。

キャリアアップ助成金

パート労働者などの非正規従業員に対して、正社員化や待遇改善を行う企業に支給される助成金です。全部で7つのコースがあり、コースごとに求められる取り組みの内容が異なります。

支給対象となる取り組み内容

支給対象となる取り組み内容の例を、表にまとめました。

コース名 非正規従業員への取り組み内容
正社員化コース ・正社員化
・期限付の雇用契約を無期限に変更
など
障害者正社員化コース
(障害者の非正規従業員が対象)
賃金規定等改定コース ・基本給を2%以上増額改定
・さらに対象者を昇給
賃金規定等共通化コース 正社員と共通する賃金規定を新しく作成・適用
諸手当制度等共通化コース 正社員と共通する手当制度または健康診断などを導入
選択的適用拡大導入時処遇改善コース 社会保険に加入させる
短時間労働者労働時間延長コース ・短時間勤務者の週の勤務時間を延長
・対象者の基本給増額
・社会保険に加入させる

ただし、どのコースでも次のような条件が共通して課されます。

助成金を受けるための共通要件
  • 社内に「キャリアアップ管理者」を配属すること
  • 「キャリアアップ計画書」を管轄の労働局に提出すること
  • 計画実施の前日までに「キャリアアップ計画書」の認定を得ること
  • 計画実施後、対象者に6カ月間分の賃金を支払うこと

場合によっては事前に就業規則を変更してから待遇改善を行わなければなりません。段取りをよく確認しておくことが大切です。

中途採用等支援助成金(生涯現役起業支援コース)

※追記:当コースは令和4年3月をもって廃止されました

中〜高年齢層の起業を支援する助成金です。40歳以上で起業する人には最大150万円、60歳以上の場合は最大200万円が支給されます。個人事業主・法人事業主の区分に関係なく申請が可能です。

また、計画を実施したことで生産性が一定以上アップしたと認められる場合、助成金額の4分の1を追加で受給することができます。

助成金を受け取るための要件

受給の要件は大きく3つあります。まずは、起業日から起算して11カ月以内に「雇用創出措置に係る計画書」を提出し、都道府県労働局長の認定を受けること。期限を過ぎてしまうと申請自体ができなくなってしまいます。

次に、事業を継続して運営できることを証明しなければなりません。以下の4つの項目のうち2つ以上に該当し、なおかつ書類によって証明する必要があります。

  • 起業者が国・地方自治体・金融機関などの実施する起業講座・セミナーなどを受けた
  • 起業した事業の分野で、起業者自身に通算10年以上の職務経験がある
  • 起業時に金融機関の融資を受けている
  • 事業主の総資産額が1500万円以上、かつ(総資産額−負債額)が総資産額の40%以上である

最後の1つは、12カ月以内の計画期間中に一定数以上の従業員を新規雇用することです。ただし、期限を定めない労働契約で雇用し、計画期間の終了後も継続して雇用する必要があります。

助成金の支給に必要となる新規雇用者の人数は、次の通りです。

従業員の年齢 人数
60歳以上 1人以上
40歳〜59歳 2人以上
40歳未満 3人以上

「40歳以上1人+40歳未満2人」でも要件を満たします。

助成金の支給額と上限

助成金の支給額は、募集や採用、従業員教育にかかった費用に助成率をかけて算定します。ただし支給額には上限があり、どんなに経費がかかっていても上限額より多く支給されることはありません。

算定に使う助成率や上限は、起業日における起業者の年齢によって次の通り決められています。

起業した日の年齢 助成率 助成額の上限
60歳以上 3分の2 200万円
40〜59歳 2分の1 150万円

また、募集などにかかった費用(助成対象費用)についても上限額は決まっています。たとえば求人情報誌や情報サイトへの掲載費用、募集パンフレット等の作成費用は合計で75万円までが助成の対象です。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)

高齢者や障害者、ひとり親家庭の親などの雇用を支援する助成金です。対象となる労働者(65歳未満)を継続して雇用した場合、半年ごとに15万円〜40万円が支給されます。

ただし、ハローワークまたは一定の要件を満たす民間の職業紹介業者の紹介を通じて採用しなくてはなりません。

受給の要件について

この助成金を受給するには、合計約30にも及ぶ条件をすべて満たしている必要があります。条件は事業主に課されるものもあれば対象の従業員に課されるものもあり、事前の入念な確認が不可欠です。

助成金の申請時期と期限について

特定求職者雇用開発助成金の請求は、半年ごとに行います。全期間まとめての請求はできないため、その都度手続きしなければなりません。請求期限は、支給の対象となる期間の末日の次の日から数えて2カ月間です。

支給金額について

支給金額は対象となる従業員の状況や勤務時間によって下表のように異なります。

【週の勤務時間が30時間以上】

対象者 助成対象期間 半年ごとの支給額
60歳以上65歳未満の者
ひとり親 など
1年 30万円(25万円)
身体・知的障害者 2年(1年) 30万円(25万円)
重度障害者など 3年(1年半) 40万円(33万円)

表内のカッコの金額は、大企業に対する支給額です。

【週の勤務時間が20時間以上30時間未満】

対象者 助成対象期間 半年ごとの支給額
60歳以上65歳未満の者
ひとり親 など
1年 20万円(15万円)
障害者 2年(1年) 20万円(15万円)

表内のカッコの金額は、大企業に対する支給額です。

ただし、対象となる従業員が助成金の支給決定前に離職してしまうと、受給対象外になってしまいます。

人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)

※追記:このコースは、令和4年3月をもって受付休止とされています。

従業員の離職を防ぐことを目的とした助成金です。離職防止のための取り組みを行い、さらに離職率を一定以上下げた場合に支給されます。

支給額は57万円です。取り組みの実施によって生産性の向上が認められると、72万円に増額されます。

受給のための要件

受給するには、2つの条件があります。まず、次の5つの制度のうちどれかを導入しなければなりません。

  • 給与手当などの制度
  • 研修制度
  • 健康づくり制度
  • メンター制度
  • 短時間正社員制度

このうち短時間正社員制度は、保育事業主のみが対象です。

助成の対象となる制度には、それぞれ5項目前後の条件が決められています。助成金を受け取るには、制度ごとに設定された条件をすべて守らなければなりません。

次に、計画の実施終了から1年後までの期間の離職率を目標割合以上にダウンさせる必要があります。目標割合はその会社の雇用保険の被保険者数によって次の表の通り決められています。

雇用保険の被保険者数 離職率の下げ幅
1~9人 15%
10~29人 10%
30~99人 7%
100~299人 5%
300~人 3%

雇用管理制度導入計画を申請する前1年間の離職率と比較した下げ幅で判定します。

また、この助成金は請求のタイミングがやや遅く、請求が可能になるのは、導入計画の終了から12カ月が経過した時点です。

さらにその時点から2カ月間を過ぎる前に請求しなければなりません。計画終了直後は請求ができないため、請求が可能なタイミングをしっかり覚えておく必要があります。

助成金を受給する際の注意点

正しく申請すれば受給できる助成金ですが、実は事前の書類作成やスケジュール管理など、気をつけるべきポイントも数多くあります。ここからは、助成金の申請前に知っておきたいデメリットや注意点についてご紹介しましょう。

助成金は申請後の受給なので、運転資金としての活用は難しい

助成金は基本的に後払いで、事前に申請した計画を終了しないと請求できません。計画実施に必要な資金はいったん事業主側で負担する必要があるため、資金繰りが厳しいときの解決策としては不向きです。

また、計画の実施期間も長めに設定されており、計画終了後すぐのタイミングでは請求できない助成金もあります。

助成金のみで資金調達は難しい

資金不足イメージ

助成金の支給対象は、対象となる事業(雇用や研修など)の経費に限定されます。光熱費や地代家賃などの経費には適用されないため、助成金とは別の資金源は必須です。

また、助成金の支給額には上限があります。取り組みに必要な経費が上限を超えた場合は、経費の一部しかまかなうことができません。助成金はあくまでも必要経費の補助として考え、別に資金調達の道を用意することをおすすめします。

制度が複雑で申請書類も多く、不備があると不支給になるケースも

助成金の制度の複雑さを表す迷路

助成金を受給するには、事業主側・従業員側の双方が複数の条件を満たさなければなりません。従業員が条件に当てはまるかどうか、個別に調べるだけでも一苦労です。

さらに、必要書類の作成・準備にかかる手間や時間も考える必要があります。助成金の申請にはときに10種類以上もの書類を添付しなければならないからです。提出した書類に不備があると不支給となるケースもあるため、事前の学習や書類準備も重要です。

申請のタイミングを逃すと受給できない

タイミングが大事だと諭すイメージ

助成金を受給するには、決められた期間内に申請書類を作成し、提出しなければなりません。事業を実施する前に計画書を提出するのはもちろん、計画が終了した後も報告が必要です。

万が一期間内に申請できなかった場合は、例外なく支給対象外となってしまいます。どんなに優れた計画を実施していたとしても、例外はありません。申請から請求完了まで一貫した進捗・手順の管理が大切です。

助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

助成金受給の明るいイメージ

この記事では、助成金と補助金の違いや起業におすすめの助成金、その申請方法についてお伝えしました。

助成金の申請書類は、作成に専門的な知識が必要となります。未経験の状態から完璧に書類を作成するのは至難の業。作成にかかる時間や人件費を考えると、助成金申請のプロである社会保険労務士に相談するのがおすすめです。

当社Bricks&UKでは、申請経験の豊富な社会保険労務士が手間のかかる申請作業の代行サポートを行っています。申請できる助成金があるかなどのご相談から労務関連の課題解決サポートまで幅広くお受けしているので、まずはお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント 起業時に助成金の申請を行う場合、助成金の手続きの前に社会保険の加入や就業規則の作成など、そもそも法令で定められたあらゆる要件を満たすための手続きが必要となります。弊社では保険加入手続きや就業規則の作成支援など幅広くサポートできますので、お気軽にご相談ください。

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