【重要】※令和5年4月追記
本文記載内容は、執筆当時の内容です。
「雇用調整助成金」のコロナによる特例措置は、令和5年3月31日をもって終了となりました。
変更となった令和5年4月以降の支給要件等については、こちらの記事で解説しています。
新型コロナウイルスの感染拡大による労働環境の悪化に伴い、雇用調整助成金をはじめとする各種の助成金には特例措置が設けられ、その対象や申請の期間が拡充・延長などされています。
どの助成金がどんな場合に対象となるのか、また、申請の方法や期限についてはどう変更になっているのか、ポイントをまとめました。
目次
雇用調整助成金の特例措置の期間について
経済事情により売り上げなどが大幅に減少し、雇用の維持が難しくなった事業主について助成される「雇用調整助成金」。
新型コロナウイルス感染症の影響により、令和2年4月から始まったこの雇用調整助成金の特例措置が、令和3年12月末まで延長になりました(令和3年10月21日現在)。
雇用調整助成金以外に対象期間が延長された助成金・給付金
新型コロナウイルス感染症に伴う各種助成金・給付金には、雇用調整助成金以外にも対象期間が延長されることになったものがあります。利用できる助成金が延長対象となっていないかを確認しましょう。
緊急雇用安定助成金
緊急雇用安定助成金とは、雇用調整助成金の対象にならない従業員にも適用される助成金です。
学生アルバイトやパートで勤務時間が短いなど、雇用保険の被保険者とならない従業員を休業させた場合に対象となります。事業主についても雇用保険適用事業所である必要はなく、労災保険に加入していれば助成の対象です。
雇用調整助成金と同様の流れで申請できますが、申請に使う書類の様式は異なるので注意が必要です。
緊急雇用安定助成金の申請については、対象期間が延長されています。これまで申請に関する賃金締切期間については令和2年4月1日から令和3年4月30日まででしたが、状況が変化していることもあり、令和3年12月末まで延長になりました。
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金とは、新型コロナウイルス感染症やそのまん延防止措置等の影響で休業を余儀なくされた労働者に対して国から支給されるものです。
対象となる人
休業中に賃金(休業手当)を受け取れなかった人が対象で、これには、時短営業で勤務時間が短くなったりシフトの日数が減少したりして賃金が減少した人も含まれます。
また、雇用保険に加入していない学生アルバイトや日本国内で働く外国人労働者、技能実習生なども対象者に含まれます。この休業支援金は事業主が申請に協力してくれるか否かを問わず申請が可能で、労働者本人が申請する必要があります。
申請の期限
新型コロナウイルス感染症対応休業支援金・給付金の申請の期限は、下表のとおり休業の時期と企業規模により異なります。
中小企業の場合
休業時期 | 締切日(郵送は必着) |
---|---|
令和2年10月~令和3年9月 | 令和3年12月31日 |
令和3年10月~11月 | 令和4年2月28日 |
大企業の場合
休業期間 | 締切日(郵送の場合必着) |
---|---|
令和2年4月~6月 | 令和3年12月31日 |
令和3年1月8日~9月(※) | |
令和3年10月~11月 | 令和4年2月28日 |
令和2年11月7日以降に時短要請が出た都道府県の各要請の発令日以降の休業についても、表の※印の期間と同じ締切日となります。
新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金
「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援助成金」とは、妊娠中の女性が安心して休暇を取得できる環境を整備した企業に対する助成金です。
女性が正規、非正規などの雇用形態にかかわらず妊娠中も安心して休暇を取得して出産後も継続的に活躍できるような環境を整備し、母性の健康を管理することが目的です。
令和2年度にも存在したこの制度ですが、令和3年度では助成内容などが異なっています。
受給の要件
この助成金を受けるには、事業主が次の要件をすべて満たす必要があります。
- 医師または助産師の指導により休業が必要な妊娠中の労働者の有給休暇制度を整備している
(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置) - 上記の有給休暇制度は年次有給休暇の賃金相当額の6割以上を支給するものである
- 上記2つの制度について労働者に周知している
- 令和3年4月1日から令和4年1月31日までの間に労働者が当該休暇を合計5日以上取得している
- 令和2年度の同内容の助成金を受給していない
助成内容および申請の期限
支給額は15万円。1事業場につき1回のみの支給です。
申請期間は、対象労働者の有給休暇の延べ日数が合計5日となった日の翌日から令和4年2月28日まで。申請手続きは事業場単位で行います。
両立支援等助成金(新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース)
休暇取得の支援については、両立支援助成金にも「新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース」があります。
支給要件は、上記と同様の有給制度の整備と周知のほか、当該の有給休暇を合計で20日以上取得した労働者がいることです。また、期間が決められており、令和2年5月7日から令和4年1月31日までに条件を満たす必要があります。
条件を満たせば、対象労働者1人あたり28.5万円が支給されます。ただし1事業所あたり5人が上限です。
申請期間は、有給休暇の取得延べ日数が合計20日となった日の翌日から令和4年2月28日までです。
雇用調整助成金を受給するための要件/留意事項
事業主の要件
雇用調整助成金の受給には、事業主が一定の要件を満たしていることが必要です。まず大前提として雇用保険適用事業所の事業主でなくてはならないほか、次のような要件があります。
- 新型コロナウイルス感染症の影響で経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
- 最近1カ月間の売上高や生産量が、前年同月比で5%以上減少している
(比較対象の月についても特例措置により柔軟な取り扱いあり) - 労使間の協定に基づいた休業を実施し休業手当を支払っている
また、受給に必要な書類を整備して労働局等に提出する、書類は保管して求められたらすぐに提出できるようにしておく、労働局等の実地調査があれば受け入れる、といった条件を守る必要もあります。
労働者の要件
雇用調整助成金は、事業主が労働者に休業手当などを支払った場合にその一部を助成する制度です。雇用保険料を財源として行われています。
そのため、対象となる労働者は雇用保険の被保険者で、労働の意思や能力があるにもかかわらず休業を余儀なくされている人です。
前述のとおり、学生アルバイトやパートなど雇用保険の被保険者でない場合には「緊急雇用安定助成金」が対象となります。
休業/休業手当の要件
受給対象となる「休業」は、次のすべてを満たす必要があります。
- 労使間の協定により実施される
- 事業主が指定した対象期間内に行われる
- 休業の実施日ののべ日数が所定労働のべ日数の40分の1以上となる(大企業は30分の1)
- 休業手当の額が労働基準法に違反していない
- 所定労働日の所定労働時間内に実施される
- 全日にわたる休業、事務所の一部または一斉で行われる1時間以上の短時間休業である
休業手当の額は、平均賃金の6割以上にすべきだと労働基準法(第26条)で定められています。
不支給要件
雇用調整助成金には、当てはまると不支給となる要件があります。
たとえば過去の一定期間内に雇用関係の助成金を申請し、不正受給として不支給決定や取り消しを受けた事実があると受給できません。
また、労働保険料に未納がある場合、残業代の未払いなど労働法に違反する事実がある場合も、助成金は支給されません。
事業や経営に暴力団関係者が関わっていたり、支給申請日または支給決定日時点で倒産していたりする場合も不支給となります。
ちなみに、他の助成金で不支給要件となっている「一定期間内に従業員の解雇等がある場合」については、雇用調整助成金については助成率が下がるものの不支給とはなりません。
その他の留意事項
雇用調整助成金の支給の対象となる期間や日数の算定等にも注意が必要です。
支給対象期間
雇用調整助成金は、新型コロナウイルス感染症の影響に伴って特例の対象期間が延長されています。令和3年10月21日現在、コロナ特例の対象期間は令和3年12月末までとなっています。
支給の算定期間
助成金は、支給対象期間内で休業等をした「判定基礎期間」(通常1カ月単位)をもとに支給が行われます。
助成金は、判定基礎期間ごとに支給の申請をする必要があります。複数の判定基礎期間について同時申請ができますが、その際も支給申請書類は申請する判定基礎期間(支給対象期間)ごとに作成・提出する必要があります。
雇用調整助成金の申請の流れと注意点
申請の流れ
緊急対応期間中に休業を実施した場合は、次のように雇用調整助成金の申請手続を行います。
まずは具体的な内容に基づき、休業を計画、実施します(計画書の提出は不要です)。休業の実施後、必要書類を事業所の住所を管轄する労働局またはハローワークに提出して申請します。郵送でも可能です。
申請期限は「支給対象期間」(1カ月~3カ月分のいずれかの判定基礎期間で計画時に選択)の最終日の翌日から2カ月以内です。
申請に必要な書類
申請には、次のような書類を提出する必要があります。
- ①雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
- ②支給要件確認申立書・役員等一覧
- ③休業・教育訓練実績一覧表
- ④助成額算定書
- ⑤(休業等)支給申請書
- ⑥休業協定書
- ⑦事業所の規模に関する書類
- ⑧労働・休日の実績に関する書類
- ⑨休業手当・賃金の実績に関する書類
①の事業活動に関する申出書と⑥の休業協定書、⑦の事業規模についての書類は初回のみの提出でよく、それ以外は支給申請ごとに提出する必要があります。
ただし⑥の休業協定書は、有効期限が切れた場合は再度の提出が必要です。
雇用調整助成金の様式ダウンロードページ(新型コロナウイルス感染症対策特例措置用)|厚生労働省
申請時の注意点
助成金の受給にあたり、事業主は必要な申請書類を整備・保管し、提出を求められた場合には応じなくてはなりません。さらにこれらの書類は、支給決定時から5年間の保存の義務があります。
また、不正受給にも注意する必要があります。不正受給とは、本来は受けられない助成金の支給を受けたり受けようとしたりすることです。不正受給を防止するために、労働局は事業所への立入検査を実施することがあります。
不正受給が判明した場合、事業主の名称や代表者氏名、事業所所在地、事業概要、不正受給金額、不正内容などを労働局や厚生労働省のサイトで公開される可能性があります。さらに、不正受給額については返還請求が行われ、返還がない場合には遅滞日数に応じた延滞金も請求されます。
雇用調整助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ
新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの企業や店舗に影響が出ています。そのため各種助成金の対象期間も延長されるなどしています。
従業員やその労働環境を守るためにも、助成金は積極的に利用したいところです。雇用調整助成金の申請は、利用を検討し、自社に合った措置を行って必要な書類をそろえ、労働局またはハローワークに書類を提出することが必要です。しかし制度内容は複雑なため、すべてを正しくスムーズに行うにはかなりの労力を要します。
さらに申請には期限があり、1日でも過ぎると受給できません。特に緊急事態下では事業への影響を最小限にとどめる努力が精いっぱいで、申請手続きをする余裕などないかもしれません。その意味においても、社労士に依頼するには大きなメリットがあります。
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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。
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監修者からのコメント 新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受けて、様々な助成金が申請期限を延長しています。 特に雇用調整助成金は期限延長だけでなく、助成内容もたびたび変更していますので、常に最新の情報を確認しなければなりません。 労働局の電話もなかなかつながらない状況が続いています。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。