助成金のよくある失敗事例【実践編】

2021.08.02

助成金の受給失敗

助成金は、支給要件さえ満たしていれば受給できます。しかし、労働関連の法令に違反していないこと、申請手続きにミスがないことなどが前提です。必要な取り組みを適切に実施していても、思わぬミスによって受給に失敗するケースが少なくありません。

助成金の受給に失敗しないためには、失敗事例を知ること、失敗事例を成功事例に変えるポイントを知ることが大切です。この記事では、助成金のよくある失敗事例について、実践を踏まえて解説します。

助成金とは?

助成金とは何かという疑問

助成金は、国から支給される資金です。あくまでも貰えるお金であり、返済不要であるため、企業の財務にも良い影響が期待できます。

助成金の特徴は、申請する助成金によって異なる受給要件を満たすことにより、高い確率で受給できることです。ただし、労働関係の法律を守っていることが欠かせません。

助成金の多くは厚生労働省の管轄であり、雇用関係の取り組みに対して支給されます。近年は、雇用の創出だけではなく、雇用の維持や環境・処遇の改善によって受給できる助成金が増えています。

助成金の基礎知識や補助金との違いなどについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。

助成金のよくある失敗事例【実践編】

助成金は、一定の要件を満たすことで受給できますが、100%受給できるとは限りません。

上記でも「高い確率で」と表現した通り、小さなミスによって不支給になることも少なくないのです。

主な失敗事例は、以下の5つです。

未払い賃金があった

賃金未払いに不満な従業員

助成金の多くは雇用に関するものであり、雇用の改善を目的としています。このため、未払いの残業代がある、最低賃金を下回っているなどの場合には受給できません。

これまで、政府は働き方改革を推進してきました。時間外労働時間の削減や最低賃金の引き上げにも積極的に取り組んでいます。これらはすべて、従業員の労働環境や処遇を改善することにより、雇用の維持・安定を促すことが目的です。

そのためには、残業代などを含めた賃金が適正に支払われていること、最低賃金を上回っていることなどが重要です。これらはタイムカードや賃金台帳などの資料によって判断されます。

申請の手順を間違えた

助成金申請に失敗した人

助成金を受給するには、支給申請を行う必要があります。申請には制度の改正や賃金引き上げ、物品の購入といったさまざまな取り組みも必須であり、助成金によって申請の手順が異なります。しかしこの手順を間違えたために受給できなくなるケースも少なくありません。

特に多いのが、助成対象となる期間外に取り組みを実施してしまうミスです。

例えば、働き方改革推進支援助成金の場合、助成対象となる取り組みは交付申請を行って交付が決定した後に行う必要があります。しかし交付決定前に購入あるいは発注・契約などしてしまうと対象外となり、受給金額が大幅に減ってしまうのです。

就業規則の記載内容に問題があった

就業規則に不備があるとわかり困っている人

助成金の利用にあたり、就業規則の整備が不十分な会社では、就業規則の整備から取りかかる必要があります。受給のための取り組みを実施していても、就業規則の記載内容に問題があれば不支給になるため注意すべきです。

特に多いのが、

  • 社員区分の記載がない
  • 改善措置の適用範囲が曖昧である

といった問題です。

例えば、キャリアアップ助成金の正社員コースの場合、就業規則に転換制度の対象となる社員区分と社員区分ごとの就業規則の適用範囲が正しく記載されていないと、制度が適正に運用されているかどうかの確認ができません。

また、転換制度についての記載が不十分で不支給となるケースも見受けられます。

利用する助成金に対応した就業規則をしっかり整備するためにも、社会保険労務士などの専門家に依頼するのが確実です。

就業規則の届出忘れ

就業規則の届け出義務を知らなかった人

助成金を活用する際には、就業規則が管轄の労働基準監督署または地方運輸局に届け出されている必要があります。常時10人以上の労働者を雇用している事業場には就業規則を届け出る義務があり、届出されていない場合、助成金を受給できなくなります。

常時雇用する労働者とは、以下の両方を満たす労働者を指します。

  • 2カ月を超えて雇用される労働者(実態として2カ月を超えて使用される労働者、雇用期間の定めのない労働者、2カ月を超える雇用期間の定めのある労働者を含む)
  • 週の所定労働時間数が、当該事業主に雇用される通常の労働者と概ね同等の労働者

注意したいのは、常時雇用する労働者が10人前後の事業場です。常時雇用する労働者が10人未満の場合は就業規則の届出が不要とされているため、助成金申請時にも必要でないと誤って認識してしまうケースがあります。

しかし助成金の申請時には規定の新規追加や変更などについて就業規則への明記が必要であり、そのために10人未満の事業場でも就業規則の届出もしくは「就業規則申立書」の添付が必要となります。

労働関係法令に違反している

労働関連法への違反

最後に、労働関係法令への違反です。

助成金は、雇用の創出や改善を目的としており、労働者保護の意味合いも強いです。労働関係法令に違反することは、労働者保護や雇用改善に逆行することにほかならず、受給できないのも当然といえるでしょう。

特に、次の5つの法令については遵守が大前提であり、違反していると助成金は支給されません。

  • 労働基準法
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 労働契約法

前述のとおり未払い賃金があると受給ができないのも、労働基準法や最低賃金法に違反するためです。

手順を間違えたり書類が不足していたりして受給できないことについては助成金のみの話にとどまります。しかし労働関連法令に違反している場合には行政からの調査や是正勧告を受けたり、罰則を科せられたりする可能性があります。法令遵守ができているかどうかも、この機に見直すことをおすすめします。

失敗の原因は?

助成金の受給ができない企業に共通する主な原因は、次の3点です。

  • 普段から労働環境の整備ができていない
  • 助成金の仕組みを理解していない
  • 自社でやることにこだわりすぎる

それぞれ説明していきます。

普段から労働環境の整備ができていない

労働環境の整備がされていない様子

「労働環境の整備ができていない」とは、具体的には次のような状態にあることです。

  • 労務管理不足により残業代の未払いが発生する
  • 知識不足や誤認識により 最低賃金を下回っている
  • 労働関係法令に違反してしまう

従業員の勤怠などを適正に管理していないと、残業が実際にどれだけ発生しているかの把握ができず、結果として従業員にサービス残業を強いてしまっているおそれがあります。

また、最低賃金の改定は毎年のように行われていますが、問題ないだろうと判断して確認していなかったところ、実は最低賃金を下回る状況だった、ということもあります。

そのほか、労働関連の法律が改定されたのを知らずに放置してしまったり、見なし労働時間制だから残業代の支払いは不要などと間違った解釈をしてしまったりするケースもあります。

いずれも法令についての情報不足や確認不足などが原因です。

助成金の仕組みを理解していない

助成金の仕組みを理解していない人

助成金の仕組みは複雑なため、専門知識や経験がなければ正確な手続きが難しいものです。曖昧な知識で手続きを進めると、次のような問題が出てきます。

  • 就業規則の整備が十分でない
  • 提出書類の記入間違いや記入漏れなどが生じる
  • 適切なタイミングで取り組みを実施できない
  • 受給額をあてにして動き、資金繰りを悪化させる

知識や情報不足は受給失敗の原因となるだけでなく、事業経営自体にも影響を与えかねないのです。

また、助成金制度の内容は必要に応じて改正されます。従来の知識が通用しなくなることがあるため、知識を常にアップデートしていかなければなりません。

自社でやることにこだわりすぎる

助成金申請を人に任せようとしない人

助成金の申請は、自社の人材だけで行うことも可能です。しかし、そこにこだわりすぎてしまうと、担当者の本業に支障をきたしたり、情報・知識不足のまま手続きを進めたりしてしまうおそれがあります。

前述のとおり助成金の仕組みは複雑であり、常に変化しています。すべてを把握することは難しいのが現状です。

社外の専門家に依頼するコストを避けたいと考える経営者の方も多いでしょう。しかし、手間なくスムーズに受給できることのメリットも総合的に見て判断することをおすすめします。

失敗事例を成功事例に変えるために

ここまでに紹介した失敗事例から、失敗を成功に転じさせる方法が見えてきます。必要なのは、法令の遵守と正しい知識の取得です。

法令遵守(コンプライアンス)を徹底すること

コンプライアンス徹底のイメージ

法令違反を犯している会社は、助成金を受給できません。まずは自社に法令違反がないことをチェックすることが助成金活用のスタートラインです。

助成金に関しては労務関連の法令を確認し自社の状況と照らし合わせたうえ、法令違反があれば直ちに是正し、今後も違反が起こらないように徹底すべきです。とりわけ、日頃から適切な労務管理を行うことは欠かせません。

しかし法令に関するチェックや労務管理の整備は、自社だけで取り組んで徹底するには難しい課題でもあります。

そのため、第三者であり労務や助成金関連のプロでもある社会保険労務士のサポートを受けることが大きな助けとなるでしょう。

支給要件をしっかりと確認すること

助成金の支給要件を確認する様子

すべての助成金には、事業主や従業員、取り組みなどに関して細かな支給要件が定められています。各助成金制度の共通要件のほか、それぞれで異なる支給要件もクリアしなければなりません。また、「不支給要件」に該当しないことも必須です。

自社が申請しようとする助成金にどんな支給要件があるのか支給要件を満たすにはどうすればいいのかどんな場合に不支給となるのかを、しっかりと確認しましょう。

必要書類を周到に準備し、期日を守ること

期日カレンダー

助成金の申請では、必要な書類をすべて提出しなければ受給できません。提出書類に不備がある場合も支給はされません。

不備があった場合には書類を再提出すれば受給できることも多いですが、申請には期限があります。期限内に書類の提出が完了しなければ、受給失敗となってしまいます。

助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

明るい未来をイメージさせる新緑

助成金は補助金とは異なり、支給要件さえ満たせば受給できるものです。人材の確保や生産性向上、社内環境の整備などに取り組んでいるのであれば、ぜひ積極的に活用してください。

しかし、この支給要件が複雑なため把握しきれていなかったり、法令違反や申請の手続きのミスがあったりなどして受給に失敗するケースが少なくありません。

助成金の受給に失敗しないためには、法令を遵守すること、助成金についての正確な知識や情報を得て手続きを進めることが重要です。自社で行うと本業への支障が出たりすることもあるので、助成金の専門家である社会保険労務士に依頼することをおすすめします。

Bricks&UKには、経験豊富な社会保険労務士が多数在籍しています。会社ごとに最適な助成金制度の提案から申請手続きの代行まで、トータルサポートに強みがあります。

助成金申請をお考えの際は、ぜひBricks&UKにご相談ください。

監修者からのコメント 助成金申請には思わぬところに落とし穴があります。 日頃から労務管理を徹底し、法令遵守ができていれば良いのですが、なかなかそこまで手が回らない、専門知識がなくて対応できないという企業様もいらっしゃるかと存じます。 私たちBricks&UKでは、助成金申請代行をサポートさせていただくにあたり、必要な書類のリーガルチェックも行っております。 お気軽にお問い合わせください。

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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

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