高年齢労働者処遇改善促進助成金とは?受給の要件やメリットなどを解説

2022.06.07

高年齢労働者処遇改善促進助成金

少子高齢化による労働力不足が深刻になる中、高年齢労働者の継続雇用や処遇改善を進めるため、「高年齢労働者処遇改善促進助成金」が創設されました。

新しい制度なので、助成金が受けられる条件や受給金額など、詳しいことがよくわからない、という事業主の方も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、高年齢労働者処遇改善促進助成金の活用のメリットや主な支給条件について詳しく説明します。

なぜ今高年齢雇用が注目されているのか

高年齢労働者の処遇改善が求められる背景には、労働人口の急速な減少に対する社会的な懸念があります。若年者採用をはじめ人材確保が難しくなることが確実視されている今、雇用の確保は企業にとっても大きな課題です。

まずは、高年齢者の労働力活用が期待される背景について見ておきましょう。

今、企業が求められていること

高齢者雇用について企業が求められていること

企業には、状況に応じて定年とする年齢の引き上げが求められています。

法律では、60歳以上を定年とすることが定められていますが、各企業の状況により、さらに65歳まで、あるいは70歳までの定年の引き上げ、定年後の再雇用制度などの導入、定年の廃止などを実施するよう努めなくてはなりません。

また、企業には高年齢者が働きやすい職場づくりのため、次のような取り組みも望まれています。

  • 高年齢者が働きやすい作業設備への改善
  • 高年齢者の職域の拡大
  • 短時間勤務等の雇用形態の多様化その他の取り組み

高齢化に伴う身体的な機能の低下による仕事への影響をなるべく減らし、能力や知識などは最大限に活用できるよう考慮しましょう。

政府による高年齢労働者の雇用促進政策

国は高齢者を対象としたさまざまな就労支援制度の整備を進めています。

高年齢雇用安定法の改正

令和3年4月1日に改正・施行された「高年齢者雇用安定法」では、労働者の65歳までの雇用確保義務に加えて、70歳までの就業機会の確保が企業の「努力義務」となりました。

努力義務の対象となるのは、定年を65歳以上70歳未満に定めている事業主と、継続雇用制度を導入している事業主です。

企業は、次のいずれかの高年齢者就業確保措置を制度化するよう努めなくてはいけません。

  • 70歳までの定年引き上げ
  • 定年制の廃止
  • 70歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度)
  • 70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度
  • 社会貢献事業(※)に70歳まで継続して従事できる制度

※印の社会貢献事業は、事業主が実施または委託・出資するものをいいます。
業務契約についての制度とこの社会貢献事業の制度の導入については、労働者の過半数を代表する労働組合、または労働者の過半数の代表者の同意を得る必要があります。

雇用保険マルチジョブホルダー制度

令和4年1月からは「雇用保険マルチジョブホルダー制度」も始まりました。
短時間勤務の職を掛け持ちする65歳以上の高年齢労働者も、次の要件を満たせば雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)になれます。

  • 複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者である
  • 各事業所での週の所定労働時間が5時間以上20時間未満である
  • 2つの事業所の週所定労働時間が合計で20時間以上ある
  • 2つの事業所それぞれで雇用見込みが31日以上ある

従来の雇用保険制度では、主たる事業所のみで条件を満たす必要がありました。この制度により、短時間勤務の高年齢労働者も上記の要件を満たせば、失業時に高年齢求職者給付金を受給できます。

高年齢労働者を雇用する事業主側のメリットとは

「若い人よりも体力がないのでは」など、シニア世代の雇用に対してマイナスのイメージを抱く人も多くいます。しかし実際は、高齢者から技能が継承できたり、仕事への姿勢が手本となったりするなど、事業主側にもメリットは多いのです。

高年齢労働者を雇用することの見逃せないメリットとして、助成金が活用できることも挙げられます。

厚生労働省は、高齢者雇用に取り組む企業を支援するため、複数の助成金制度を用意しています。次の表は、高年齢者の雇用時に活用できる助成金をまとめたものです。

制度名 対象となる取り組み
中途採用等支援助成金
(中途採用拡大コース)

・中途採用者向け雇用管理制度の整備
・中途採用枠の拡大
(中途採用率の拡大または45歳以上の初採用)

特定求職者雇用開発助成金
(生涯現役コース)

離職者(雇入日の満年齢が65歳以上)をハローワークなどの紹介を通じて一年以上継続雇用
特定求職者雇用開発助成金
(特定就職困難者コース)
高年齢者(60歳〜64歳)などの就職困難者をハローワークなどの紹介を通じて継続雇用
65歳超雇用推進助成金
(65歳超継続雇用促進コース)
令和4年4月1日以降に65歳以上への定年引上げ、定年制度の廃止などを実施
65歳超雇用推進助成金
(高年齢者評価制度等雇用管理改善コース)
高年齢者向けの雇用管理制度の導入または改善
(評価制度、賃金制度、短時間勤務制度など)
65歳超雇用推進助成金
(高年齢者無期雇用転換コース)

50歳以上かつ定年年齢未満の有期契約労働者を無期雇用労働者に転換

いずれも今後シニア層の雇い入れを考える際に活用を検討したい制度です。ぜひ活用してください。
詳しくはこちらの記事で解説しています。

そして、すでに雇用している高年齢労働者の処遇に関して活用できるのが、記事のタイトルにもある「高年齢労働者処遇改善促進助成金」です。

高年齢労働者処遇改善促進助成金とは

高年齢労働者処遇改善促進助成金とは、文字通り高齢の労働者の処遇を改善する事業主を後押しするための助成金です。と言ってもよくわからないので、詳しく見ていきましょう。

助成金の目的について

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、高年齢労働者に適用される賃金規定等の増額改定に取り組む事業主に対して助成されます。

これまで企業が定年を迎えた高年齢労働者を再雇用する際には、雇用形態が変わると同時に賃金を減額することが慣例となっていました。

高年齢労働者の賃金増額を後押しし、年齢や雇用形態による格差のない公正な待遇を確保することが、この助成金の目的です。

令和3年4月1日に新設された助成金である

高年齢者の雇用に使える新しい助成金

この制度が施行されたのは令和3年4月1日で、高年齢者の雇用に関する助成金の中でも新しい制度です。

制度新設のきっかけとなったのは「高年齢雇用継続給付」の制度見直しです。令和7年4月から給付率が引き下げられることを受け、同給付金の対象となっていた高年齢労働者の待遇改善を支援する目的で創設されました。

賃金規定等の増額改定に取り組む事業主が対象

高年齢労働者処遇改善促進助成金の対象は、雇用形態に関わらず高年齢労働者の賃金を増額するよう賃金規定などを改定し、実際に改定を行った事業主です。

助成金を受け取るには、まず「賃金規定等改定計画書」を作成します。計画が労働局で承認された後、賃金規定や賃金テーブルの増額改定に取り組む必要があります。

60歳~64歳の高年齢労働者の処遇改善が必要

高年齢労働者処遇改善促進助成金の対象者

高年齢労働者処遇改善促進助成金で取り組みの対象となるのは、60歳から64歳までの労働者で、これまで「高年齢雇用継続給付金」の対象となっていた人です。

高年齢雇用継続給付は、給付率の引き下げにとどまらず、最終的には廃止される方針です。そのため企業は今後、自主的にシニア層の賃金制度を設計しなければなりません。

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、旧来型の賃金ルールを「給付に頼らない仕組み」へと改革する後押しをする制度なのです。

主な支給要件

高年齢労働者処遇改善促進助成金の受給の対象となるには、事業主がまず次の4つの条件をすべて満たす必要があります。

  • 高年齢雇用継続基本給付金の減少率95%
  • 賃金規定の改定と増額賃金の6カ月の継続支払い
  • 増額前の賃金での6カ月間の継続支払い
  • 増額改定後の賃金規定の継続運用

それぞれ具体的に説明します。

高年齢雇用継続基本給付金の減少率について

以下のA・Bを比較したとき、AからBへの全体の減少率が95%以上でなくてはなりません。

A:増額した賃金の支払月前の6カ月間に算定対象労働者が受給した増額改定前の賃金で算定された、高年齢雇用継続基本給付金の総額

B:賃金規定の増額改定後、各支給対象期に算定対象労働者が受給した増額改定後の賃金で算定された、高年齢雇用継続基本給付金の総額

算定対象労働者とは、事業所内で高年齢雇用継続基本給付金を受給しているすべての労働者のことです。

算定対象労働者が20人未満の場合は、任意指定除外者(本人の希望により雇用形態を変更し、増額改定後も高年齢雇用継続基本給付金を受給する人、事業主が1人のみを指定)を除いて算定します。

賃金規定の増額改定と改定賃金の支払い実績について

賃金の増額は、就業規則や賃金規定、労働協約などの改定に伴って行われる必要があります。つまり制度として明文化されていなくてはなりません。

また、規定を作るだけでなく、それに基づいて増額した賃金6カ月以上継続して支払うことも必要です。

増額改定後の賃金の継続運用について

支給申請日の時点で、増額改定後の賃金規定を継続して運用していることも必要です。

単に賃金を上げるだけでなく、賃金規定などのルールそのものを改善することが求められます。

その他、雇用に関する助成金の共通要件なども満たす必要があります。

受給額の算定方法

助成金受有額の算定方法

受給額は、増額改定前の賃金と改定後の賃金で計算された高年齢雇用継続基本給付金の差額に、助成率をかけて算出します。助成率は、増額改定した賃金規定の適用年度と企業規模によって異なります。

賃金改定適用年度:令和3年度または令和4年度

中小企業:  (下記A-B)× 4/5
中小企業以外:(下記A-B)× 2/3

賃金改定適用年度:令和5年度または令和6年度

中小企業:  (下記A-B)× 2/3
中小企業以外:(下記A-B)× 1/2

上記で算出した助成金額は、いずれも100円未満は切り捨てとなります。

A:増額した賃金の支払月前の6カ月間に算定対象労働者が受給した増額改定前の賃金で算定された、高年齢雇用継続基本給付金の総額

B:賃金規定の増額改定後、各支給対象期に算定対象労働者が受給した増額改定後の賃金で算出された、高年齢雇用継続基本給付金の総額

算定対象労働者とは、事業所内で高年齢雇用継続基本給付金を受給しているすべての労働者のことです。支給対象期は、増額改定された賃金の支払い月から最初の6カ月間を第1期とします。以後6カ月ごとに、最大4回(2年間)まで申請できます。

一度賃金規則を改定すれば、改定した賃金規則を適用した年度の助成率がその後の支給期にも適用されます。

助成金申請における注意点

助成金申請の注意点

この章では、助成金の申請手続き・準備で特に注意すべき項目について解説します。

中には申請不受理となってしまう例や、併給できない給付金もあります。せっかくの準備を無駄にしないためにも、ぜひご一読ください。

高年齢雇用継続給付金受給との併用は不可

高年齢労働者処遇改善促進助成金と雇用継続給付の併用不可

高年齢雇用継続給付金は、60歳以上65歳未満の労働者を対象にした制度で、60歳以降の賃金が従来の75%未満に引き下げられているなどの条件を満たせば受給対象になります。しかしこの給付金と高年齢労働者処遇改善促進助成金を同時に受給することはができません。

そもそも高年齢労働者処遇改善促進助成金の支給条件には、前述のとおり「高年齢雇用継続基本給付金を事業所全体で95%以上減らすこと」があります。2つの制度は初めから併用できないしくみになっているのです。

給付金が「引き下げられた賃金の補填」を目的としているのに対し、助成金は「高年齢者の賃金状況そのものの改善」を支援するための制度です。助成金を活用する際は、給付金に頼らなくてもよいように従業員の待遇を改善し、維持できるような社内規定や環境の整備が求められます。

申請が受理されないケースも多発している

申請不受理

申請書類の不備や手続きの遅れが生じた場合など、申請が不受理になることもあります。スケジュールに余裕はあるかチェックしつつ慎重に準備をしていきましょう。

申請が不受理となるのは、次のような例です。

  • 賃金規定等改定計画書(または変更届)の不備
  • 支給申請に関する書類の不備
  • 支給申請の期限の超過

特に注意すべきなのが、支給対象となる労働者の範囲です。この助成金の計画書には高年齢雇用継続基本給付金を受給している労働者(「算定労働者」と呼ばれます)全員について記載する必要があるため、記載漏れがないよう確認してください。

ただし、次のような労働者は例外として算定対象から除外されます。

  • 支給申請日時点で離職している者
  • 支給対象期の末月の前月までに高年齢雇用継続基本給付金の支給が終了した者
  • 事業主または取締役の3親等以内の親族
  • 60歳到達時点の賃金月額が前職の賃金月額で登録されている中途採用者で、事業主の判断により算定対象労働者から除外した者
  • 任意指定除外者

繰り返しになりますが、任意指定除外者とは、本人の希望により雇用形態を変更し、賃金規定の改定日後も高年齢雇用継続基本給付金を受給する人のことです。算定対象労働者が20人未満の事業所において、支給期間ごとに任意で1人を指定できます。

各従業員の高年齢雇用継続基本給付金の受給期限を確認するなど、対象者の管理は特に気をつけて行ってください。

支給申請回数には上限がある

高年齢労働者処遇改善促進助成金の申請上限回数

高年齢労働者処遇改善促進助成金は、増額改定した賃金の支払月から6カ月ごとに最大4回分の申請ができます。期間でいうと2年間が上限です。4回分の支給が終了した後は、支給対象者を変えるなどして再度申請することはできません。

申請の期限は、支給対象期間の末月分の高年齢雇用継続基本給付金の支給申請をする月の翌月初日から起算して2カ月以内です。申請書類の様式は厚生労働省のホームページなどから入手できます。

事前計画届の提出が必須である

高年齢労働者処遇改善促進助成金を申請するには、賃金規定等改定計画書の提出を賃金規定改定予定日の前日までに行い、管轄の労働局長の認定を受けなくてはなりません。

計画書には賃金規定の改定予定日のほか、以下の項目をすべて記載します。

  • 算定対象労働者の氏名
  • 算定対象労働者の雇用保険の被保険者番号
  • 算定対象労働者の60歳到達時の賃金月額
  • 算定対象労働者の賃金月額の75%にあたる額

過去の賃金台帳などの書類をあらかじめ準備して、記載漏れがないようにしましょう。

助成金の申請には、社内制度の確立から計画、申請まで、さまざまな作業を伴います。知識がないと難しい部分も多いので、不安があれば社労士など専門家の手を借りることをおすすめします。

高年齢労働者処遇改善促進助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

高齢者の雇用を取り巻く状況や、60歳以上の従業員を雇用する企業が使える高年齢労働者処遇改善促進助成金の制度内容について紹介しました。

高年齢労働者の処遇改善を目指す企業にとって、助成金の活用は大きな助けとなるでしょう。一方で、実際の申請にはさまざまな条件をクリアせねばならず、時には専門知識も必要です。

「自社だけでは難しいかもしれない」と感じたら、助成金の専門家である社会保険労務士への依頼がおすすめです。社会保険労務士事務所Bricks&UKには助成金申請の実績も豊富な社会保険労務士が在籍。活用できる助成金の相談や書類作成代行なども受け付けています。

助成金受給にも関わる就業規則や賃金規定の整備についてもサポートしています。ぜひお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント 定年を境に高齢労働者は、アルバイトなど非正規雇用に変わるケースが多くみられます。 こうした処遇改善に取り組む事業主に対して「高年齢労働者処遇改善促進助成金」は活用できます。 少子化が進むにつれ、高齢者雇用を対象とした助成金の重要性もますます高まります。 弊社Bricks&UKでは助成金の申請代行や雇用相談に関して専門的なサポートが可能です。 お気軽にお問い合わせください。

就業規則を無料で診断します

労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

こんな方は、まずは就業規則診断をすることをおすすめします

  • 就業規則を作成してから数年たっている
  • 人事労務トラブルのリスクを抱えている箇所を知りたい
  • ダウンロードしたテンプレートをそのまま会社の就業規則にしている
無料診断スタート

おすすめ関連記事

最新記事の一覧を見る
  • 労務業務の手間を減らす方法
  • 就業規則の重要性
  • 就業規則無料診断
  • キャリアアップ助成金ガイドブック

申請件数実績申請件数実績

受給額ランキング受給額ランキング

注目のタグ注目のタグ

今読まれてます!人気記事今読まれてます!人気記事