両立支援等助成金とは?制度の概要や就業規則作成時の注意点を解説

2022.08.05

両立支援助成金と就業規則

令和3年6月に育児・介護休業法が改正され、男性の育児休業取得を推進するための「出生時育児休業」(産後パパ育休)が新設されました。育児休業を取得しやすい環境の整備も義務化されるなど「家庭と両立できる職場」の整備が法的にも求められています。

従業員の仕事と家庭の両立を支援することには、会社にとってもメリットがあります。この記事では、その1つであり従業員の育児休業・介護休業をサポートする事業主に支給される「両立支援等助成金」について紹介します。

各コースの支給金額・要件だけでなく申請時の注意点も解説するので、ぜひ参考にしてください。

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金とは

両立支援等助成金は、仕事と家庭を両立できる職場環境の普及を目的に儲けられた助成金です。対象となる取り組みに応じたコースに分かれており、それぞれ支給要件や支給額が異なります。

ここでは令和4年7月24日時点で申請できる3つのコースについて、受給金額と大まかな受要件を見ておきましょう。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)

出生時両立支援コース

出生時両立支援コースは、男性が育児休業を取得しやすい環境を整え、育休を取得した男性従業員が実際にいる場合に支給されます。

男性従業員の育児休業取得で受給できる「第1種」と、さらに男性の育休取得率が向上した場合に支給される「第2種」があります。

詳しい要件などは後の章で説明します。

介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コース

介護離職防止支援コースは、文字どおり家族などの介護による離職者を減らす防ぐべく、従業員のスムーズな介護休業の取得や職場への復帰を図る事業主を支援するコースです。次の3つの区分で助成金が支給されます。

  • 介護休業
  • 介護両立支援制度
  • 新型コロナウイルス感染症対応特例

このうち「新型コロナウイルス感染症対応特例」以外の区分では、事前に「介護支援プラン」を策定し、プランに沿った従業員のサポートを実施しなくてはなりません。

その他、主な要件と支給額は次のとおりです。

区分 支給額 主な要件
休業取得時 28.5万円
<生産性要件を満たした場合は36万円>
・プランに基づいて業務を引き継ぎ
・対象者が合計5日以上の介護休業を取得
職場復帰時 28.5万円
<生産性要件を満たした場合は36万円>
・「休業取得時」と同一の介護休業取得者を休業前の職に復帰させる
介護両立支援制度 28.5万円
<生産性要件を満たした場合は36万円>
・介護のための柔軟な勤務制度(在宅勤務など)を導入
・導入した制度を合計20日以上(一部6カ月以上)利用
新型コロナウイルス感染症対応 対象者1人あたりの取得日数
・ 5日〜10日未満:20万円
・10日〜:35万円
・介護のための有給休暇制度(新型コロナウイルス感染症対応)を整備し、あらかじめ労働者に通知
・上記休暇を1人あたり合計5日以上取得

介護支援プランの策定方法や作成支援サービス等については、厚生労働省のサイトに説明があります。とはいえ簡単ではないので、助成金申請のプロである社会保険労務士の手を借りるのが得策です。

仕事と介護の両立支援~両立に向けての具体的ツール~|厚生労働省

育児休業等支援コース

育児休業等支援コース

このコースは、育児休業の取得や代替要員の確保、その後のスムーズな復職の支援を目的としています。育児休業の取得時だけでなく、職場復帰や代替要員の確保についても助成金の支給対象です。

育児休業等支援コースで助成金が受給できる区分や要件、支給額は次のとおりです。

区分 支給額 主な要件
A 育休取得時 1人28.5万円
<36万円>
無期・有期雇用労働者で各1名(合計2名)まで
・育休復帰支援プラン」に沿った引き継ぎ実施
・対象者が3カ月以上の育児休業を取得
B 職場復帰時 1人28.5万円
<36万円>
無期・有期雇用労働者で各1名(合計2名)まで
「A 育休取得時」の対象者への次の措置
・育児休業中に職務や業務の情報・資料を提供
・復帰前に面談を実施
・休業前の職への復帰
C 職場復帰の支援 【制度導入時】
28.5万円<36万円>
※いずれか1制度のみ支給

【制度利用時】
・子の看護休暇:
1時間1,000円
< 1,200円>
上限200時間
<240時間>

・保育サービス費用補助:実費の2/3
上限20万円<24万円>
・育児・介護休業法の基準を上回る「子の看護休暇」か「保育サービス費用補助」を就業規則に規定
・対象者が1カ月以上の育児休業から復帰
・復帰後6カ月以内に、導入した制度を一定以上利用
D 業務の代替支援 新規雇用:
1人47.5万円
<60万円>
手当支給:
1人10万円<12万円>
※育児休業取得者が有期雇用労働者なら9.5万円<12万円>を加算
・育児休業取得者を休業前の職に復帰させることを就業規則に規定
・対象者が3カ月以上の育児休業を取得し、休業前の職に復帰
・育児休業取得者の代替要員を新規雇用、または業務を代替する労働者に手当を支給する

表の< >内は、生産性要件を満たした場合の支給額・上限時間です。

A・Bの区分ではあらかじめ「育休復帰支援プラン」の策定と、従業員への通知が必要です。

なお、「出生時両立支援コース」の第1種の支給対象となっている育児休業者に対して、同一の育児休業を理由に「育児休業等支援コース」の対象とすることはできません。

出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)を押さえよう

出生時両立支援コース

男性も育児休業や育児目的休暇を取得しやすい職場づくりに取り組んだ事業主を対象とするのが、出生時両立支援コースです。この支給要件と支給額について詳しく見ていきましょう。

このコースは令和4年4月から一部制度内容が見直され、受給の要件や助成額が大きく見直されました。令和4年度からの変更点を交えつつ解説します。

まず、出生時両立支援コースには、2つの区分があります。第1種は育休取得のための環境整備で、第2種は第1種の受給者を対象に、育休の取得率の向上で助成金が支給されます。

第1種(育休取得等の環境整備)

育休取得等の環境整備

第1種は助成金の見直し前から存在していた支給区分です。変更前は企業の規模に関わらず受給申請できましたが、令和4年以降は中小企業のみ対象となりました。

第1種の主な支給要件

出生時両立支援コースの第1種では、次の4つが主な支給要件となっています。

  • 1)育児・介護休業法に定める雇用環境整備の措置(下記1~4)を2つ以上(※1)、対象者の育児休業開始前日までに行う
    1. 育児休業(※2)に関する研修の実施
    2. 育児休業に関する相談体制の整備
    3. 育児休業の取得事例の収集・提供
    4. 育児休業に関する制度周知・取得促進に関する方針の周知
  • 2)育児休業取得者の業務を代替する者の業務見直しに関する規定を作成
  • 3)作成した規定に基づいて実際に業務体制を整備
  • 4)男性従業員が、子の出生後8週間以内に連続5日以上の育児休業を取得

(※1)令和4年10月新設の産後パパ育休について取得の申出期限を「休業開始日2週間よりも前」に設定する場合には、3つ以上の取り組みが必要
(※2)1~4とも、令和4年10月以降は産後パパ育休も対象となる

令和4年度の制度変更以降は、育休取得者の業務を代替する担当者の業務見直しに関する規定の作成や、業務体制の整備なども条件に加わっています。

また、「代替要員加算」が新設されました。これは、男性従業員の育休中の業務を代替する人員を新規雇用した場合に、支給額が上乗せされる制度です。

第1種の支給額

支給額は、一律20万円で、1事業主につき1回のみの支給です。

育休取得者の業務代替要員を新規で雇用した場合には、次のとおり助成金の加算が受けられます。

  • 代替要員2名までの新規雇用:20万円を加算
  • 代替要員を3名以上新規雇用:45万円を加算

令和4年度の制度変更でこの「代替要員加算」が新設されました。また、育休取得者の業務を代替する担当者の業務見直しに関する規定の作成や業務体制の整備なども条件に加わっています。

第2種(男性労働者の育児休業取得率上昇)

男性労働者の育児休業取得率上昇

第2種は令和4年から新設された区分です。単独で受給することはできず、第1種を受給した上で、男性育休取得率が上昇した場合に受給できます。

第2種の主な支給要件

一部繰り返しになりますが、第2種の主な支給要件は次の3点です。

  • 第1種の助成金を受給した
  • 第1種の受給申請から3事業年度以内に、男性の育児休業取得率が30%以上上昇した
  • 第1種の対象者以外で、2名以上の男性労働者が育児休業を取得

第2種では、男性の育児休業取得を会社全体で推進していく必要があります。相談体制の整備や育児休業時の手続き説明など、従業員に対する地道な周知が重要です。

第2種の支給額

第2種では、男性の育休取得率の上昇に応じた次の額が支給されます。

条件 支給額
 1事業年度以内に30%以上上昇 60万円
<75万円>
 2事業年度以内に30%以上上昇 40万円
<65万円>
3事業年度以内に30%以上上昇 20万円
<35万円>

 表の< >内は、生産性要件を満たした場合の支給額です。

両立支援等助成金申請に必要な就業規則とは

両立支援等助成金に必要な就業規則

両立支援等助成金を受給するには、該当する休業に関連する就業規則を整備することも求められます。就業規則や労使合意が確認できる文書も申請に必要となるため、長期的な計画に沿ってあらかじめ準備をしなくてはなりません。

受給にかかせない就業規則整備のポイントを押さえておきましょう。

最新の育児・介護休業法に則ることが必要

各コース共通の支給要件をなるのは、それぞれ対象となる休業制度を就業規則に明記しておくことです。

さらに、支給申請の時点で施行されている最新の「育児・介護休業法」に則り、基準となる数値があればその水準を満たしている必要があります。両立支援等助成金の申請をする場合は、常に最新の法改正について情報を集めてください。

令和4年10月以降は、新たに「出生時育児休業(産後パパ育休)制度」の就業規則への記載も必要となります。

実態に即した就業規則の定めが不可欠

両立支援等助成金の支給には、規定を就業規則に定めるだけでなく休業の制度が規定どおりに運用されていることも条件となっています。

たとえば、育休期間中の給与を法のとおり「無給とする」と規定しつつ、実際には有給扱いとした場合。法律以上の待遇をしていても、就業規則の規定と異なっていれば助成金の対象外となってしまいます。

就業規則どおりに運用する、もしくは実際の運用に則した就業規則を整備してください。

雇用環境整備と出生時育児休業の申出期限

出生時両立支援コース(第1種)で支給申請する場合、育児・介護休業法の第22条第1項に規定される措置のうち、2つ以上の措置を実施する必要があります。

支給対象となる措置は下記のとおりです。産後パパ育休については令和4年10月以降の適用となります。

  • 育児休業・産後パパ育休に関する研修実施
  • 育児休業・産後パパ育休に関する相談体制の整備
  • 育児休業・産後パパ育休の取得に関する事例収集・事例の提供
  • 育児休業・産後パパ育休に関する制度周知と取得促進に関する方針の周知

ただし、令和4年10月以降で出生時育児休業(産後パパ育休)の申出期限を「休業開始日2週間よりも前」に設定する場合には2つ以上では足りず、3つ以上の実施が必要です。

上記は対象者の育休開始の前日までに実施しなくてはなりません。早めに準備を進めておきましょう。

在宅勤務には規定が必要

在宅勤務

対象の従業員が休業取得の直前や職場復帰の直後に在宅勤務をする場合は、在宅勤務に関する規定の整備が必要です。さらに、勤務実態が業務日報等で確認できる状態でなくてはなりません。

規定のない状態で在宅勤務をさせると、助成金支給の対象外となってしまいます。

従業員に在宅勤務をさせる可能性がある場合は、あらかじめ就業規則に定めておきましょう。

業務の代替に関する規定の作成

業務代替で助成金を受ける際の注意点

出生時両立支援コースまたは育児休業等支援コースの「業務代替支援」で受給を受けるには、育児休業取得者の担当業務を代替する従業員の業務見直しをしなければなりません。

いずれのコースで申請する場合も、事前に業務内容の見直しやルール作りが必要です。就業規則の変更や労使合意なども含めた長期的な取組が必要になるため、申請には余裕をもって準備を進めましょう。

助成金申請の流れと注意点

助成金申請の流れと注意点

では、両立支援等助成金の申請の流れと注意点を見ていきましょう。まず、申請は次のような流れで進めていきます。

  • 1)申請要件の確認
  • 2)必要書類の確認
  • 3)就業規則の確認
  • 4)行動計画の策定・届出の確認
  • 5)職場環境の整備

それぞれのステップで確認すべきこと、注意すべき点をあわせて見ていきましょう。

助成金の申請要件を満たしているか

助成金の支給要件を満たしているかのチェック

まずは、自社がそれぞれのコース・区分の支給要件に該当するかどうかを確認してください。

  • 厚生労働省の定義する中小企業に該当するか
  • 雇用環境の整備などの取り組み内容が支給要件を満たしているか
  • 対象となる従業員の休業期間が支給要件を満たしているか
  • 制度の周知や対象者との面談などが問題なく実施されているか

「該当するかどうか判断できない」「用語が難しく要件の内容がいまいちわからない」という場合は、社会保険労務士への相談をおすすめします。

申請に必要な書類がそろっているか

助成金申請の必要書類を揃えるイメージ

助成金の申請には、必要な規定が盛り込まれた就業規則や労働協約などのほか、対象となる従業員の雇用契約書や出勤簿、賃金台帳など、勤務と休業の実態を客観的に示す書類が必要です。

コースによっては、業務見直しに関する規定の整備や、制度の新設等について従業員に周知したことを示す書類なども必要です。申請しようとするコースの要件を確認したら、要件を満たしたことの証拠となる書類・帳簿を準備してください。

最新の法令に則した就業規則の作成と周知がされているか

就業規則の作成と周知

両立支援等助成金を受給するには、支給要件に該当する休業について就業規則に規定していなくてはなりません。規定する内容が、支給申請日時点で最新の育児・介護休業法を遵守していることも必須です。

これに関しては、規定を「育児・介護休業法で定めるとおり」などの表現で濁してあっても認められません。

また、休業取得に関する手続きや賃金の扱いについても就業規則で定め、規定の内容を社内に周知する必要があります。就業規則を改める際は改定のタイミングや従業員に周知した日付がわかるようにし、書類やメール等ももれなく保存しておきましょう。

一般事業主行動計画の策定と届出は済んでいるか

「出生時両立支援コース」と「育児休業等支援コース」を申請するには、事業主が有効な「一般事業主行動計画(行動計画)」を策定し、都道府県の労働局長に届け出ていなければなりません。

行動計画を公表すること、従業員に周知するための措置を実施していることも必要です。

「一般事業主行動計画」は、そもそも次世代育成対策推進法で従業員数が101人以上の企業に策定・届出などが義務付けられているものです。

従業員数100人以下の企業には「策定・届出は努力義務」とされているため、策定していない企業も多いのではないでしょうか。法では努力義務でも、助成金受け取りには必須です。未策定・未届なら、まずはそこから始めましょう。

男性従業員も育休を取得しやすい環境か

男性社員が育休を取得しやすい環境づくり

両立等支援助成金の受給には、対象となる制度の規定だけでなく、従業員が制度を使いやすくするための取り組みを行うことも求められます。

「出生時両立支援コース」では、男性従業員が育児休業を取得しやすい職場環境にするため、研修の実施や相談体制の整備などを実施しなくてはなりません。

他のコースも同様で、「支援制度の導入・周知」と「支援制度の利用実績」の両方が求められます。形を整えただけでは、助成金は支給されません。

配偶者の妊娠、家族の介護など、休業を要する従業員がいることを把握したら、休業の相談〜休業・復帰までの過程を適切に行いましょう。助成金の申請要件を満たすには、何が必要かを知っておく必要もあります。

助成金の申請、就業規則の作成ならBricks&UKにおまかせ

両立支援等助成金を受給するには、対象となる従業員の休業取得だけでなく、事前の就業規則の整備や業務見直しなど長期にわたる取組の実施が必要です。

特に就業規則については、細かな表現の違いや文言の不足により助成金の支給要件を満たさず受けられない、というケースも発生しています。この機会に、就業規則から見直してみることをおすすめします。

自社での対処が難しい場合には、就業規則の整備や助成金申請のプロである社会保険労務士に依頼することをおすすめします。

当社社会保険労務士事務所Bricks&UKは、助成金の申請実績も豊富です。クライアント企業様それぞれの状況をお伺いし、最適な就業規則の作成や助成金の申請をサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント 令和4年4月から、出生時両立支援コース(子育てパパ支援助成金)は代替要員の加算がない場合には受給額が下がってしまいましたが、それでもまだまだ活用しやすい助成金であることに変わりありません。 男性が育児休業を取得する後押しになる助成金ですので、ぜひこの機会に育児休業を取りやすくする社内環境整備を行ってみてはいかがでしょうか。 弊社Bricks&UKでは育児介護休業規程の作成・改定支援も随時行っております。 お気軽にお問い合わせください。

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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

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