【雇用調整助成金】助成の対象者について具体的に解説

2021.03.15

アドバイスをする社会保険労務士

新型コロナウイルス感染拡大の影響により社会の混迷が続く中、経営者の方は生き残りをかけた必死の経営努力をしています。このような状況を打開すべく、厚生労働省はコロナ支援対策として雇用調整助成金制度の特例措置を設けています。

助成金はぜひとも利用したいと考える半面、助成金は種類も多く、支給要件や申請手続きも複雑なため、自社が助成の対象になるのか、手続きが大変なのではないか、と感じている方もいることでしょう。

今回は、この雇用調整助成金について、その定義はもちろん、助成対象となる事業主と労働者の範囲・要件や助成額について解説します。

雇用調整助成金とは

助成金についての説明

雇用調整助成金とは、経済上の理由による事業活動縮小の状況で、雇用維持の目的でやむなく従業員を休業させたり、教育訓練や出向などをさせたりした場合に、休業手当など一部について助成が受けられる制度です。

特に新型ウイルスの影響による事業活動の縮小を受けた事業主に対しては、コロナ特例措置が設けられました。

コロナ特例措置の実施期間(緊急対応期間)は、令和2年4月1日から緊急事態宣言が全国で解除された月の翌月末までです。期間内に賃金締切期間を1日でも含む休業などを実施した事業主が助成の対象です。

コロナ特例措置では、助成率および上限額の引き上げが実施されています。具体的には、1人1日15,000円を上限額として、労働者に支払う休業手当などのうち最大で10分の10が助成されるしくみです。

雇用調整助成金の対象者とは

助成金の対象者

雇用調整助成金は、労働者ではなく事業主に支給されます。どのような事業主が対象となるのか、また対象となる労働者についても見ていきましょう。

ここでは、雇用調整助成金の対象者である事業主や労働者の範囲や要件について、コロナ特例措置とそれ以外に分類して詳しく解説します。

事業主の要件

まずは、事業主が雇用調整助成金の対象となるための必要条件を見ておきましょう。

要件項目 原則(コロナ特例措置以外) コロナ特例措置
事業活動縮小要因 経済上の理由による 新型コロナウイルス感染症の影響(※1)による
経済環境が悪化し、事業活動が縮小している
生産指標(前年比較期間) 3カ月10%以上減少 1カ月5%以上減少
従業員の休業等(※3) 労使間協定休業等を実施し、休業手当を支払っている

新型コロナウイルス感染症の影響とは、国や地方自治体による営業自粛要請を受けての休業、コロナの影響による客側のキャンセル、市民活動の自粛などを言います。

コロナ特例措置における事業活動の縮小とは、直近1カ月間の売上高や生産量などが、前年同月比で5%以上減少している場合をいいます。なお比較対象月は、前年同月が適当でない場合には2年前の同月、前年同月~休業月前月までの期間のうち適当な1カ月、などとする柔軟な取り扱いもされています。

ここでいう休業とは、休業の実施時期や日数、対象者、休業手当の支払率などに関して、事前に書面(協定書や確約書等)によって労使間協定をした休業が対象となります。働く意思と能力がある従業員を休業させたり、休業せずスキルアップのための教育訓練を受けさせたり、他の事業所へ出向させたりといった場合を含みます。

このほか、次のような条件もあります。

  • 雇用保険の適用事業主であること
  • 書類の整備、調査の受け入れをすること
  • 不支給要件にあてはまらないこと

対象となる事業主は、雇用保険の適用事業所であることが必須です。支給申請および決定時、さらに生産指標要件を満たすためには前年などの比較月においても雇用保険の適用事業所であり、1カ月間を通して雇用保険被保険者を雇用していなくてはなりません。

なお、緊急雇用安定助成金に関しては、雇用保険の適用事業主である必要はなく、労災保険の適用事業主または暫定任意適用事業主であればよいとされています。また、雇用保険の適用事業主とは、雇用保険被保険者を1人以上雇用する事業所の事業主です。この要件を満たせば、個人事業主も含まれます。

助成金を受けるには、受給に必要な書類を労働局などに提出して申請しなくてはいけません。書類は整備・保管し、労働局などの要請があれば実地調査の受入や受給に必要な書類の提出に応じることも必要です。

また、不支給要件にも該当しないことが求められます。事業主や役員が反社団体に関連している場合、会社が倒産している場合、不正受給と見なされた場合に事業主名を公表することに対して承諾しない、といった場合は対象となりません。

労働者の要件

助成金の対象労働者の要件チェック

次に、労働者についての要件を確認していきます。

前提として、休業手当の対象となる「休業」とは、働く意思や能力はあるのに働けない状態のことを指します。そのため、有給休暇やストライキなど労働の意思がない場合、あるいは労働者本人が新型ウイルスに感染したことによる休職は、助成金の支給対象外です。

雇用調整助成金の支給対象となるのは、雇用保険の被保険者である労働者への休業手当です。学生アルバイトやパート従業員など、雇用保険被保険者でない労働者に休業手当を支給したとしても、助成の対象とはなりません。ただしその場合は、緊急雇用安定助成金の対象となる可能性があります。

また、解雇予告をされている人、退職届を出している人、退職勧奨に応じた人については、解雇予告日、退職届提出日の翌日以降は助成の対象外です。しかし解雇・退職の次の日から定職に就くことが決まっている場合は対象となります。

通常の雇用調整助成金では継続して雇用されている期間が6カ月以上ないと対象となりませが、コロナ特例措置では、6カ月以内、内定後1日も勤務していない労働者も対象です。

事業主の配偶者など同居の親族が、労働者として働いていることもあるでしょう。その場合、雇用保険の被保険者となるかといえば、原則としては対象外です。しかし、事業主の指揮命令に従っている、労働条件など就業実態が他の労働者と同様に管理されている、取締役など事業主と利益を一にする地位にない、といった条件に当てはまれば雇用保険の被保険者となります。

これは、雇用調整助成金の助成対象になるか否かの判断基準である「労働性が認められるか否か」でも同様に見なされます。

また、この判断基準により、同居の親族に関して雇用調整助成金と緊急雇用安定助成金の助成対象になるか否かの判断基準は以下のとおりです。

同居の親族の労働時間 労働者性
○:認められる
×:認められない
雇用保険被保険者
○:なれる
×:なれない
雇用調整助成金 緊急雇用安定
助成金
週20時間以上 対象 対象外
× × 対象外 対象外
× 対象外 対象
週20時間未満  × 対象外 対象
× × 対象外 対象外

雇用調整助成金の助成額の計算

助成金の対象

ここでは、雇用調整助成金の助成額について、休業させた場合と休業日に教育訓練を行った場合の計算例を交えて解説します。

従業員を休業させた場合

休業させた場合の雇用調整助成金の額は、次の計算式により決まります。

休業手当に相当する額(※1)×助成率×休業延日数(人・日)

※1は、次の①から③までのいずれかの方法で計算します。

①前年度1年間における雇用保険料の算定基礎となる賃金総額を、前年度1年間における1カ月平均の雇用保険被保険者数および年間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払い率をかけた額

②判定基礎期間の初日が属する年度または前年度の任意の月に提出した給与所得・退職所得等の所得税徴収高計算書の支給額を人員および月間所定労働日数で割った額に、休業手当の支払い率をかけた額

③小規模事業主(従業員がおおむね20人以下)の場合は、実際に支払う休業手当の総額

要件項目 原則(コロナ特例措置以外) コロナ特例措置
助成率 企業規模 解雇等あり 解雇等なし
大企業 2分の1 3分の2 4分の3
中小企業 3分の2 5分の4 10分の10
日額上限額 8,370円 15,000円
支給限度日数 1年 100日 1年 100日+緊急対応期間中の休業日数
3年 150日 3年 150日+緊急対応期間中の休業日数

たとえば、雇用保険被保険者10人の企業が緊急対応期間中に従業員全員を20日間休業させた場合の助成額を計算してみましょう。従業員は全員正社員で、解雇等はせず雇用を維持するものとします。

平均賃金が8,000円、1日の所定労働時間が8時間で、事業主は従業員1人につき8,000円×60%=4,800円の休業手当を支払ったとします。

平均賃金が8,000円、1日の所定労働時間が8時間で、事業主は従業員1人につき8,000円×60%=4,800円の休業手当を支払ったとします。

休業日に教育訓練を行った場合

休業中の職業訓練イメージ

従業員に対して休業日に教育訓練を行った場合の雇用調整助成金の助成額は、次の計算式で算出されます。

休業手当に相当する額(※1)×助成率×休業延日数(人・日)+教育訓練加算額×教育訓練延日数(人・日)

教育訓練加算額は、次のとおりです。

要件項目 原則(コロナ特例措置以外) コロナ特例措置
教育訓練加算額 1,200円 大企業 中小企業
1,800円 2,400円

たとえば、雇用保険被保険者10人の企業が緊急対応期間中に従業員全員を20日間休業させ、うち5日間は教育訓練を行った場合の助成額を算定してみましょう。従業員はすべて正社員で、解雇などはせず雇用を維持するものとします。

平均賃金が8,000円、1日の所定労働時間が8時間で、事業主は従業員1人につき8,000円×60%=4,800円の休業手当を支払ったとします。

この場合、雇用調整助成金の助成総額は、4,800円×(10/10)×20日×10人+2,400円×5日×10人=1,080,000円です。

雇用調整助成金の申請で留意すべきこと

助成金申請の注意点

雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金も同様)の申請は、事業所の住所を管轄する労働局またはハローワークの窓口で受け付けています。郵送やオンラインでの申請も可能です。また、申請期限は、支給対象期間の末日の翌日から2カ月以内と決められています。

申請の際は、支給申請書と添付書類を提出します。支給申請に必要な書類は従業員の数などによって異なります。なお、コロナ特例措置では、通常は必要とされる計画届の提出は不要で、支給申請の手続きのみが必要となっています。従業員数20人以下の小規模事業所については、申請書類も簡略化されています。

しかし雇用調整助成金の申請については、注意すべき点が3つあります。

支給要件などが変更されやすい

1つ目は、助成金の支給要件などが変更されやすく、助成金に関する最新情報を常にチェックしておく必要があることです。

新型コロナウイルス感染症が経済社会に及ぼす影響は日々変化しています。それに伴い、コロナ特例措置の変更や追加など各種助成金の支給要件も変更されているのです。

助成金申請には手間がかかる

2つ目は、雇用調整助成金の制度内容は複雑であり、支給要件や申請に必要な書類の準備などを通常業務のかたわらで行おうにも、時間や手間がかかってしまうということです。

たとえば、雇用契約書、就業規則、給与明細、タイムカードの整合性が取れていない場合、不支給になる可能性もあります。

不正受給にならないように注意する

3つ目は、提出書類の不備など、申請の仕方によっては不正受給の疑いをかけられたり、不支給の認定をされてしまったりすることがあることです。

提出書類の記入を間違えてしまっただけなのに虚偽記載と認定され、不正受給と見なされてしまうこともあります。そうなると事業所名が公表されるなどの処分が科されるほか、社会的信用も失いかねません。事業に悪影響を及ぼしてしまう可能性があるので注意しましょう。

以上のような注意点を踏まえて、申請に際しては、外部の専門家である社会保険労務士に依頼することをおすすめします。

雇用調整助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

助成金の申請は専門家へ

雇用調整助成金について、その概要や助成対象となる事業主と労働者の範囲、要件や助成額などについてお伝えしました。

雇用調整助成金(緊急雇用安定助成金)は優れた制度ではありますが、内容はとても複雑です。申請前に労使協定を締結するなど、事業所内での手続きも必要ですし、申請に必要な書類の種類が多く、書類の作成も大変です。通常の業務に支障があるおそれもあるでしょう。

雇用調整助成金の申請手続は、経験豊富な社会保険労務士に依頼するのがおすすめです。

社労士からのコメント 緊急事態宣言の発令に伴い、令和3年1月8日より特定の要件を満たす事業主に対して、助成率の上乗せや雇用維持要件の緩和が行われています。 どのような基準か分からない、自社が該当するか確認したいという事業主様はお問い合わせください。

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四宮寛子

この記事の監修この記事の監修 社会保険労務士事務所Bricks&UK 特定社会保険労務士 四宮寛子

特定社会保険労務士。2004年南山大学外国語学部英米学科卒業、2007年社会保険労務士登録、同年開業。
これまでに申請・受給した助成金は1200件超。助成金の申請を通じて就業規則の作成をはじめとした労働環境の整備にも積極的にアドバイスを行っている。

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