【※令和5年4月追記】雇用調整助成金のコロナ特例は令和5年3月31日をもって終了となりました。
計画届の提出は、令和5年6月30日までの間は引き続き不要ですが、その他の要件等に変更があります。必ず最新情報をご確認ください。令和5年4月現在の制度内容についてはこちらの記事で解説しています。
「雇用調整助成金の申請には計画届が必要」ということで、助成金の申請はハードルが高いと感じている方も多いのではないでしょうか。確かに令和2年5月19日より前は計画届の提出が必要でしたが、現在は手続きを簡単にするため計画届の提出は不要になっています。
また緊急対応期間が延長されたため、新型コロナウイルス感染症の影響で事業活動の縮小が続いているのであればすぐにでも申請準備を始めることをおすすめします。
ただ、計画書の届け出は不要でも、計画を立てること自体は必要です。この記事では、雇用調整助成金の最新情報として延長となった業況特例・地域特例の要件や支給額について説明した後、不要となった計画届について解説、現在の申請の流れや書類を紹介していきます。
目次
緊急対応期間が7月まで延期に
令和3年5月以降を対象とした雇用調整助成金の特例措置等について、厚労省は12月末までの延長を決定しました(令和3年10月21日現在)。
令和3年5月以降の特例措置(業況特例・地域特例)の内容について、あらためて説明していきます。
業況特例
この特例は、新型コロナウイルスの影響で業績が悪化し、経営が特に厳しい状況に置かれた事業主に向けた特例です。
受給には、休業を開始した月の直近3カ月間の生産指標(生産量や売上高など)が、1年前または2年前の同期と比べて30%以上減少していることが条件です。
たとえば令和3年5月5日に休業を開始したとしましょう。
この場合、令和3年3月~5月の3カ月間の売上高などが、前年の令和2年3月~5月、あるいは2年前の平成31年3月~令和1年5月と比べて30%以上減っている場合に業況特例が対象となります。
支給額は「(平均賃金額×休業手当等の支払い率)×助成率」で算出されます。支給額の上限や助成率は、大企業・中小企業いずれも同じです。
助成率 | 5分の4(10分の10) |
1人1日あたりの上限額 | 15,000円 |
表のカッコ内(10/10)は、従業員に対し解雇等を行っていない場合の助成率です。
ちなみに、中小企業の定義は下記のようになっています。
小売業(飲食店を含む) | 資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下 |
サービス業 | 資本金5,000万円以下 または 従業員50人以下 |
卸売業 | 資本金1億円以下 または 従業員100人以下 |
その他の業種 | 資本金3億円以下 または 従業員300人以下 |
地域特例
地域特例は、国などにより緊急事態宣言などが出された地域で営業時間の短縮や入店時の人数制限などに協力する事業主を対象とした特例です。次の①~③に該当する場合に支給の対象となります。
①緊急事態措置の対象区域またはまん延防止等重点措置の対象区域(職業安定局長が定める区域)に店舗等があり、都道府県知事による要請等を受けて、
②緊急事態措置を実施すべき期間またはまん延防止等重点措置を実施すべき期間中ずっと、
③対象となる施設のすべてで以下に協力している
・休業あるいは営業時間の変更
・入店・入場の収容率や人数の制限
・飲食物提供(客による持込み含む)の自粛
・カラオケ設備利用の自粛
支給額の上限や助成率は業況特例と同様です。また緊急事態宣言、まん延防止等重点措置のいずれも同じ金額です。
大企業 | 中小企業 | |
助成率 | 5分の4 (10分の10) |
|
1人1日あたりの上限額 | 15,000円 |
表のカッコ内の助成率(10分の10)は、従業員に対し解雇等を行っていない場合の助成率です。
不要になった計画届とは?
計画届が必要だったときの申請の流れ
雇用調整助成金の申請にあたり、令和2年5月19日より前は「休業等実施計画届」を提出する必要がありました。
その際の支給までの流れは次のようになっていました。
- ①休業の期間や人数など具体的な計画を立てる
- ②労使間で合意し、休業協定書を作成する
- ③計画届を作成し、提出する
- ④休業等を実施し、休業手当等を支払う
- ⑤支給申請書類を作成し、提出する
- ⑥労働局にて審査が行われる
- ⑦支給額が振り込まれる
現在は申請者の手続きと支給業務の双方をより簡単にするため、計画届の提出は不要になっています。とはいえ、冒頭で述べたとおり計画の作成自体はしておかなければなりません。
雇用調整助成金の計画届とは
この「計画届」とは、雇用調整(休業や教育訓練など)の内容を具体的に検討したうえ労使間で協定を結び、その内容に基づき記入する書類のことです。
たとえば休業の場合、計画届には次のような内容を記入します。
- 資本金額や常時雇用する労働者数
- 休業する部門や店舗などの情報
- 休業する期間
- 休業する人数
フォーマット(様式)が厚労省のホームページからダウンロードできるようになっています。
休業等計画書の意義
手続きの簡略化で不要となった計画書ですが、計画を立てることには意義があります。
一方的に唐突な休業や先行き未定の休業をしてしまうと、従業員には大きな不安感が生まれます。事前に計画を立て、労使間で合意を得ることで、従業員にその先への安心感を与えることができるでしょう。
また、計画書を提出するという手続きを踏むことで、労働局に確認してもらう=休業の妥当性が認められる、といったメリットがあるのです。
雇用調整助成金の申請の流れ
計画届が不要になっている現在の、雇用調整助成金の申請の流れを見ておきましょう。緊急対応期間における、令和2年5月19日以降の助成金申請の流れです。
- ①休業の期間や人数など具体的な計画を立てる
- ②労使間で合意のうえ、休業協定書を作成する
- ③休業や教育訓練を実施し、休業手当等を支払う
- ④支給申請書類を作成し、提出する
- ⑤労働局の審査を受ける
- ⑥支給決定後、助成金が振り込まれる
「計画届を提出する」という手続きがなくなり、労働局などに向けた手続きとしては、支給申請時の1回のみで済むようになっています。
作成する書類
上記の手続き④で支給申請に必要な書類についても見ておきましょう。まずは記入など作成をして提出する書類です。
- (1)雇用調整実施事業所の事業活動の状況に関する申出書
- (2)支給要件確認申立・役員等一覧
- (3)休業・教育訓練実績一覧表
- (4)助成額算定書
- (5)(休業等)支給申請書
これらにはいずれも決まった様式があり、厚労省のサイトからダウンロードが可能です。
雇用調整助成金(新型コロナ特例)様式ダウンロードページ|厚生労働省
添付する書類
次に、内容確認等のために添付が必要な書類です。
- (1)休業協定書
- (2)事業所の規模を確認する書類
- (3)労働・休日の実績に関する書類
- (4)休業手当・賃金の実績に関する書類
- (5)通帳またはキャッシュカードのコピー
- (6)比較した月の売上げなどがわかる書類
また受けようとする特例に応じて、追加で次のような書類も必要になります。
業況特例にあたる場合 | 生産指標が30%以上減少したとわかる書類 (売上簿、レジの月次集計、収入簿など) |
地域特例にあたる場合 | 対象施設の所在地・労働者を確認できるもの |
催し物の開催縮小にかかわる場合 | ・開催施設の所在地 ・緊急事態措置を実施すべき期間中に催し物を開催、あるいは開催を予定していたこと |
ここまで読んで「書類を揃えるのに時間がかかりそう」「この資料が添付書類に該当するかわからない」と思った方は、社会保険労務士への依頼がおすすめです。
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雇用調整助成金は、休業中の休業手当を最大で全額助成してもらえる制度です。
以前は申請手続きの前に、休業や教育訓練に関する計画届を前もって提出する必要がありました。しかし現在は手続きの簡素化により届け出なくてもよいことになっています。
とはいえ申請に必要な書類は複数あり、特例の種類や教育訓練の有無によって、様式や添付書類の要不要などが異なります。こういった助成金の申請準備に時間がかけられないという方も多いでしょう。
弊社Bricks&UKの社会保険労務士は、蓄積した知識や情報、ノウハウを駆使したサポートで皆様の負担を軽減し、丁寧かつ確実に手続きを進めてまいります。貴社に合った助成金のご提案も可能ですし、もちろん助成金以外の労務についてのご相談も承ります。ぜひお気軽にご相談ください。
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監修者からのコメント コロナ特例措置以前はあらかじめ休業計画届を提出してから休業する必要がありました。 休業が長期に渡る場合、給与計算の月締めごとに計画届を提出しなければならず、うっかり忘れると助成金はもらえませんでした。 現在、支給申請のみで受給できるようになり、これが申請のハードルを下げたことは言うまでもありません。 今後、雇用調整助成金の特例措置がどのように変化していくのか、常に最新の情報を把握してまいります。 ご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。