12月まで延長が決定された雇用調整助成金

2021.09.24

2023.04.24

11月まで延長となった雇用調整助成金

【重要】※2023年4月追記

記載内容は執筆当時の内容です。
「雇用調整助成金」のコロナによる特例措置は、令和5年3月31日をもって終了となりました。
令和5年4月以降の制度につきましては、こちらの記事で解説しています。


雇用調整助成金は、長引くコロナ禍で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の休業手当を支出した場合、その費用を政府(厚生労働省)が助成する制度です。

社会の状況に合わせて要件の緩和や延長などの措置が繰り返され、現在は令和3年12月末までの延長が決定されています(令和3年10月21日現在)。ここでは、最新の情報をもとに、その内容を解説していきます。

秋以降の動向について

冒頭でも述べた通り12月まで延長となった雇用調整助成金ですが、制度の内容については5月に延長された時点での変更内容が持続されます。それ以降については、11月中に発表がされる予定です。

直近での変更内容や申請期間などについて見ておきましょう。

現在の特例措置の内容(令和3年5月~)

令和3年5月の延長時に内容の改正が行われ、主に支給要件や助成額の算定方法が変更され、次のようになりました。

項目 現時点での要件
生産指標要件 1カ月で前年同月の5%以上減少
対象者 雇用保険被保険者でない人も対象
助成率 原則として中小企業10分の9、大企業4分の3
日額限度額 原則として13,500円
支給限度日数 1年100日、3年150日+対象期間中に受給した日数
短時間休業要件 一斉休業でない場合も対象となり得る
休業規模要件 中小企業40分の1、大企業30分の1
教育訓練助成率 原則として中小企業10分の9、大企業4分の3
出向期間要件 1カ月以上1年以内

雇用保険の被保険者でない人に対しては、「緊急雇用安定助成金」が適用されます。

このほかに、緊急事態宣言・まん延防止等重点措置の発令都道府県については特例があります。

飲食店などが、知事の要請などで休業・営業時間の短縮などの措置をとった場合、原則的な助成率でなく、10分の10の満額、日額限度額も15,000円に引き上げられるというものです。

申請可能期間について

助成金の特例措置の期間は延長となりましたが、申請可能期間についての変更はありません

これまで通り、休業開始後の判定基礎期間(賃金締切日の翌日から、その次の賃金締切日までの1カ月)ごとに支給申請を行い、申請の期限は判定基礎期間の最後の日の翌日から2カ月以内です。

たとえば賃金締切日が毎月20日の場合、8/21~9/20分の休業に係る申請の期限は11月20日までとなります。

ただし連続する判定基礎期間は3期分までを1つの期間としてまとめて申請することも可能です。また、期限を過ぎてしまった場合でも、理由書を提出し、新型コロナウイルスの影響等によりやむなしと認められた場合には、支給の対象となる可能性もあります。

雇用調整助成金の変遷

これまで、雇用調整助成金の延長措置は次のように期間を区切って行われてきました。今後も同じように、情勢を見て判断されるものと考えられます。

  • 令和2年4月1日~令和3年4月30日
  • 令和3年5月1日~令和3年6月30日
  • 令和3年7月1日~令和3年9月30日
  • 令和3年10月1日~令和3年11月30日
  • 令和3年12月1日~令和3年12月31日

以降の予定は、令和3年11月中に公表される予定です。

9月以降に適用となる歩合給がある場合の助成額算定方法について

休業手当支払率の変更

令和3年9月1日の改正点として、給与が歩合給(出来高払)制を含む労働者を休業させた場合について、助成額算定方法のもととなる休業手当支払率の算定方法が変更となりました。一定率だったものから、事業所に応じた計算式に変わります。

変更前

休業協定書に定めた(基本給を含む)手当等の支払い率のうち、もっとも低い支払率を使います。

変更後

次のような計算式で計算します。

(その月の休業手当支払額の総額)÷(平均賃金額×月間休業延日数)

平均賃金が関わってくるため6カ月を経過するごとに見直す必要があります。また、休業でなく教育訓練を行っている場合は、その期間の賃金について別途(上と同じ式で)計算する必要があります。

この変更は、事業主が実際に支払った手当の額との乖離をなるべく少なくするための改定だと考えられます。

平均賃金についてはこちらの記事の中で解説しています。

休業手当支払率の具体例

休業手当支払率の計算

では、変更となった算定方法で休業手当率を具体的に計算してみましょう。前述の通り、休業の場合と教育訓練の場合とを分けて計算します。

休業時の休業手当支払率の計算

休業手当の額や休業日数などを次のように仮定します。

休業手当額                    7,300円/日
休業した従業員の数(期間中全日)  30人・日
短時間のみ休業した従業員の数      5人・日
平均賃金額    9,890円

平均賃金は、助成金算定書に必要事項を記入することで簡単に計算できるようになっています。これを前項の計算式にあてはめると次のようになります。

支払った休業手当の総額{7300円×(30人日+5人日)}÷{平均賃金額9890円×休業延べ日数(30人日+5人日)} =0.738 →73%

この場合の休業手当支払率は73%となります。少数点以下は切り下げます。

教育訓練の賃金支払率(=休業手当支払率)の計算

教育訓練についても、休業と同じ式で計算します。条件は次のように仮定します。

教育訓練時の賃金            8,400円
教育訓練を受けた従業員の数      7人・日
平均賃金額             9,890円

計算式にあてはめてみましょう。

教育訓練時の賃金の総額{8400×7人日}÷
{平均賃金額9890円×教育訓練延べ日数7人日}
=0.849 →84%

この場合の教育訓練費の賃金支払率は84%となりました。

「雇用調整助成金助成額算定書」という所定の様式にある「休業手当等の支払い率」の欄に、この計算で得た割合を記入します。

10月以降の最低賃金引き上げに伴う要件緩和について

最低賃金の引き上げに伴う雇調金の要件緩和

令和3年10月に最低賃金の引き上げが行われます。これにともなって、最低賃金を引き上げた企業に対し雇用調整助成金の給付要件が一部条件付きで緩和されます。

要件緩和の内容

令和3年9月末までは、「従業員を休業させた延べ日数が所定労働時間の2.5%以上であること」という給付条件がありました。しかし、10月からの3カ月間の休業について、業況または地域特例の対象かつ最低賃金の引き上げに協力した中小企業に対しては、この条件がなくなります。

事業場内の最低賃金を、令和7月16日から12月までの間に30円以上引き上げることが必要です。令和3年1月8日以降に従業員の解雇等を行っていない場合に限ります。

また、この場合の申請手続きは雇用保険の被保険者でも被保険者以外でも「緊急雇用安定助成金」で行うよう指定されています。その他、助成率などに変更はありません。

最低賃金引き上げで利用できるもう1つの助成金

最低賃金引き上げで利用できるもう1つの助成金

上記の要件緩和は業況特例・地域特例の対象となる中小企業にのみ適用されますが、最低賃金を引き上げることによって利用できる助成金は他にもあります。

業務改善助成金は、売上など生産性を向上させ、事業場内の最低賃金を20円以上引き上げた場合に受けられる助成金です。

この助成金も、令和3年8月から要件の緩和や対象の拡充が行われています。これまでなかった45円コースが新設され、引き上げ額が30円以上であればPCやタブレット端末の新規購入なども対象となります。

申請は令和4年1月31日まで可能ですが、政府の年間予算の関係で期限より前に終了となることもあります。

雇用調整助成金の申請時の注意点

雇用調整助成金申請時の注意点

雇用調整助成金は多くの企業で活用されている助成金ですが、申請書類の不備や期限切れなどによって受けられるべき支援が受けられない、といったケースも起きています。助成金の申請について注意すべき3つの点について見ておきましょう。

申請書類の確認

申請書類は、様式があるものは厚生労働省のHPからダウンロードできます。申請にあたっては、常に最新のものをダウンロードするようにしてください。要件の変更などに伴い、記載すべき事項が変わったりする可能性があるからです。

申請様式や必要な添付書類は、事業規模や申請内容によっても異なります。不備や不足があれば申請は通らないので、自社の申請に必要な様式を用いているか、必要書類が揃っているかの確認も必須です。

また、雇用契約書・就業規則・給与明細・タイムカードなどについては、内容に整合性がとれているかにも注意してください。

申請期限の確認

雇用調整助成金は、期間の終了後にまとめて申請するのではなく、賃金締日ごとに申請を行うことが必要です。このため、うっかり締切を忘れることのないように予定を管理しておかなくてはなりません。

特に、複数月の判定基礎期間(賃金締日ごとの1カ月単位の期間)をまとめて提出する場合など、期限切れとなっていることに気づかないことも多いため注意が必要です。

いったん提出した書類に不備や不足があった場合などには、再提出が求められるかもしれません。締切ギリギリで申請手続きを行った場合には期限に間に合わず申請不可となる恐れもあります。申請期限を1日でも過ぎると受け付けてもらえないことを頭に入れておいてください。

申請の方法を再検討すべきケース

助成金の申請は、手続きに必要な取り組みの実施などに手間と時間がかかるだけでなく、自社にあった申請様式や添付書類を確認して用意するなど、手続き自体にも細心の注意を払う必要があります。

コロナ禍において、本来の業務に加えてこのような手続きにマンパワーを使う余裕などない、という事業主の方もいることでしょう。

そこでおすすめしたいのは、助成金申請のプロである社会保険労務士に手続きを依頼することです。自社の人間の貴重な時間を割くことなく、スムーズな助成金申請を可能とします。

まとめ

秋のイメージで記事のまとめ

雇用調整助成金は、コロナ禍の状況を見ながら数度にわたる延長措置がとられて現在に至っています。令和3年10月21日時点で、12月末までの延長が決定しました。

9月以降の主な変更点は次の2点です。
① 休業手当支払率の計算方法変更(給料に歩合制を含む場合)
② 10月の最低賃金引き上げの協力に対する要件緩和
 
今後も状況に合わせた変更が行われるでしょう。

こうした変更に伴い、申請に必要な書類にも変更が生じます。そのため、助成金の申請には常に最新情報を集め、適応していく必要があります。申請期限も厳守しなくては受給できません。

手続きのこうした煩雑さを解消するには、社会保険労務士への依頼が最適です。スムーズで確実な助成金の受給のために、私たちBricks&UKにまずはご相談ください。

監修者からのコメント コロナの影響による雇用調整助成金の支給金額が、リーマンショック後の平成21年度からの2年間に支給された金額を上回ったことが明らかになりました。 特に中小企業からは、特例措置の継続を求める声が上がっています。 弊社でも今後の雇用調整助成金の動向について、最新の情報をお届けしてまいります。 ご相談も随時受け付けていますので、お気軽にお問い合わせください。

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