就業規則は10人未満の会社でも作っていいんです!

2021.12.04

就業規則は10人未満の会社でも作るのがおすすめ

労働基準法により、常時10人以上の従業員を使用する場合には就業規則の作成が義務付けられています。10人未満の企業や事業所には作成の義務はありませんが、就業規則を設けることは可能です。

就業規則を作っておくことは、労使双方のメリットとなります。また、たとえば助成金の申請をしようとする場合、従業員の人数にかかわらず就業規則の作成が支給要件となっていることもあります。

この記事では、就業規則の概要や作成のメリットなどを紹介します。また、就業規則は単に作成すればよいというものではなく、記載方法などによっては落とし穴となる点もあるので、その点についても解説していきます。

就業規則とは

就業規則の作成には、さまざまな目的があります。

  • 労務トラブルから会社と従業員を守る
  • 従業員のモラルの向上を図る
  • 適切な懲戒処分の実施を可能にする
  • 情報漏洩を防止する
  • 職場環境を整備し従業員を安心させる
  • 会社の方針を明確化し浸透させる

就業規則を定めておくことで、万が一従業員との間にトラブルが起きた場合に会社を守れます。逆もしかりで、会社の権利を守るだけでなく従業員の権利を守ることにつながります。

会社のルールが明確となり周知されれば、職場環境の整備や従業員のモラル維持・向上にも役立ちます。従業員が問題を起こした場合にも、就業規則に従い適切な懲戒処分を行うことができます。

就業規則の内容

就業規則に記載すべき項目については、次の2つの事項を含めるよう法で義務付けられています。

  • 必ず記載しなければならない「絶対的必要記載事項
  • 規定する場合には記載しなければならない「相対的必要記載事項

絶対的必要記載事項は、次の3つから成ります。

  • 始業・終業の時刻、休憩時間、休日、休暇、交替制の場合には就業時転換に関すること
  • 賃金の決定、計算や支払の方法、賃金の締め切りと支払時期、昇給に関すること
  • 退職に関すること(解雇とする条件を含む)

この3項目については必ず規定しておかなくてはなりません。

これに対し、規定の義務はないが、規定するなら就業規則に記載しておかねばならない項目が「相対的必要記載事項」です。

相対的必要記載事項は、以下の8つからなります。

  • 退職手当に関すること
  • 臨時の賃金(賞与)、最低賃金額に関すること
  • 食費、作業用品などの負担に関すること
  • 安全衛生に関すること
  • 職業訓練に関すること
  • 災害補償、業務外の傷病扶助に関すること
  • 表彰、制裁に関すること
  • そのほか全労働者に適用されること

たとえば退職手当や賞与については、法的な義務はなく、規定しなくても問題はありません。ただし、会社の制度として設けるならば就業規則への記載も必須となるのです。

就業規則の作成義務

冒頭でも述べたように、従業員が10人以上の事業場(営業所などの単位)では就業規則を作成しなければなりません。

具体的には、労働基準法(昭和22年法律第49号)第89条の規定により、常時10人以上の従業員を使用する使用者には、就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出をすることが義務付けられています

一度作成・届け出た就業規則の内容を変更する場合にも、変更の届け出が必要です。

10人未満でも就業規則を作成するメリット

法律上の義務はなくても、国は就業規則を設けておくことを推奨しています。従業員が少なくても、就業規則を作成しておくことには次のようなメリットがあります。

  • 助成金の申請ができるようになる
  • 適切な労務管理で従業員からの信頼感を得られる
  • 人事関連の課題への気づきが生まれる

就業規則を作っただけで助成金が支給されるわけではありません。しかし、雇用関連の助成金を申請するには、就業規則の作成・届出や、就業規則に支給要件を満たす事項の規定・追記が必須となるケースが多くあります。

たとえば多くの企業が活用する「働き方改革推進支援助成金」や「キャリアアップ助成金」などでは、申請要件として就業規則の作成が定められています。法的に作成義務がなくても、作成されていなければ助成金の申請はできません。 あらかじめ作成しておけば、助成金の申請もスムーズに行えます。

もちろん、就業規則を定めることは従業員の安心感や社外からの信頼性向上にもつながり、労務管理が整備・徹底されている企業の証となります。待遇について規定があれば求人広告などにも明記でき、優秀な人材へのアピールになります。

また、就業規則を作成する段階で、人事関連の課題の発見や改善にも活用できるでしょう。

就業規則のよくある落とし穴

テンプレートの就業規則のデメリット

就業規則を作る際に、インターネットなどでテンプレートや見本を探し、そのまま流用しようとする事業主の方もいます。しかしそれでは記載内容に不足が生じ、トラブルが生じるおそれがあるので注意が必要です。

よくあるのは、次のような問題です。

業績に関係なく賞与を支払わねばならない規定になっている

たとえば単に「賞与を支給する」ことのみを規定し、支給の条件や例外などについて記載していない場合には、業績が悪化するなどして経営状態が悪くても賞与を支払ねばならないこととなります。

また、個人の業績に応じた支給を考えている場合や、退職予定者への支給を回避したい場合などにも対処することができません。

賞与の支給を規定するのであれば、支給時期や支給額の決定基準なども決めて明記しておく必要があります。

長期間の無断欠勤・行方不明者や私傷病による休職者に対する規定がなく退職手続きが困難になる

従業員が無断で長期間の出勤しなかったり、とつぜん連絡が取れなくなったりするケースもあります。たとえ病気やケガなどやむを得ない事情でも、休業が長期となれば業務にも支障が出ます。

そういった場合に対し何らかの対処をしたくても、就業規則にその規定がなければ、一方的に退職や解雇などの手続きを取ることはできません。

一般的に出回る就業規則の例は、性善説で作られたものも多く、想定外の事態に対処できない危険性があります。自社の事情に則し、リスクを最小限に抑えられる就業規則を作成しておきたいものです。

営業手当に残業代を含むと規定するも、具体的な時間と金額の明記がなく、営業手当を残業代とみなすことができない

残業手当を営業手当に含める、いわゆる「固定残業手当」(みなし残業)の制度を導入する場合には、必ず「月間〇時間分」「1日〇時間分」などの算定基準を設けて就業規則に記載することが必要です。

それがなければ、労働時間に対する適切な賃金支払いができず、当該手当に残業代を含めていることにはなりません。

もちろん、その規定時間を超えた残業には、その分の割増賃金を別で支払う必要もあります。

このようなリスクを回避し、自社に合った適切な就業規則を作成するためには、労働法関連の正しい知識が必須です。

専門家を利用しよう

就業規則を作成するなら社会保険労務士へ

就業規則の作成を自社内でするには、知識的な面で考えても時間的な面で考えても、専門家に依頼するのが得策です。労務の専門家である社会保険労務士に依頼すれば、次のようなメリットがあります。

  • 法律の知識に基づいた就業規則が作成できる
  • 自社の事情に合った規則の作成ができる
  • 他社事例などを踏まえ、リスクを抑えた就業規則が作成できる
  • 助成金申請の手続きもスムーズにできる

就業規則は、一度作成したら簡単に従業員に不利益となるような変更はできません。作成後に不備やトラブルの発生がないように、慎重な作成が求められます。

社会保険労務士なら、労働基準法などの関連法令に精通しているため、法に確実に適合した就業規則が作成できます。また、経験から複数の企業の例を知っているので、落とし穴となり得るポイントを押さえ、労務トラブルを回避できる可能性も高まります。

雇用関連の助成金を申請する際も、社会保険労務士なら支給要件を満たすための適切な就業規則の作成・変更が可能です。申請手続き自体の専門家でもあるので、必要な環境の整備や書類の準備なども確実に行えます。

助成金の申請、就業規則の作成ならBricks&UKにおまかせ

助成金の申請も就業規則の作成も社会保険労務士事務所Bricks&UKにおまかせ

従業員10人未満の企業や事業所では、就業規則の作成や届け出は義務ではありません。しかし、就業規則を作成することで労務トラブルの回避や従業員からの信頼度・安心感の向上、助成金のスムーズな申請など、数多くのメリットがあります。

就業規則の作成は企業独自でも可能ですが、法に則り、かつ自社に起こり得るリスクを予測・回避するためには記載方法に注意する必要があります。助成金の申請に伴って就業規則を整備するなら、助成金についても精通していなくてはなりません。

当サイトを運営する「社会保険労務士事務所 Bricks&UK」は、労働法や助成金などの専門家であり、就業規則の作成や助成金の申請、そのほか労務関連のあらゆるサポートを行っています。ぜひお気軽にご相談ください。

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