人材不足で困っている企業が多い一方で、働く気力や能力があるのに就職先が見つけられない求職者もいます。
双方の悩みを解決し、より公正な採用活動の場として存在するのがハローワークです。厚労省は、ハローワークを通じて一部の条件に当てはまる求職者を雇用した企業に、助成金を支給しています。
この記事では、ハローワークを利用して従業員を新規雇用した場合にもらえる助成金を紹介します。支給要件や申請の流れなどをわかりやすく解説するので、ぜひ活用してください。
目次
- 1 従業員の雇用で受け取れる「助成金」
- 2 助成金の受給に必須の要件とは
- 3 ハローワーク経由の雇用で受給できる助成金一覧
- 3.1 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
- 3.2 特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
- 3.3 特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
- 3.4 特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)
- 3.5 特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)
- 3.6 トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
- 3.7 トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
- 3.8 支給対象となる労働者と雇い入れの条件
- 3.9 トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)
- 3.10 地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
- 4 ハローワーク経由の雇用で助成金を申請する流れ
- 5 支給申請に必要な書類【特定就職困難者コースの場合】
- 6 ハローワーク経由で助成金を受給する際の注意点
- 7 雇用関係の助成金申請ならBricks&UKにおまかせ
従業員の雇用で受け取れる「助成金」
この記事で紹介する助成金は、ハローワークを通じて従業員を雇った場合に支給される、国からの助成金です。厚生労働省が管轄しています。
助成金の目的
働く意思と能力のあるすべての人が力を発揮できる社会にすることは、国にとって大きな課題です。
しかし、未経験者や障害のある人、ひとり親など、安定して働くことが難しい人は、就職したくても難しい傾向にあります。その原因の1つが、雇用して環境を整えたり教育したりするのに高いコストがかかること。
そこで政府は、ハローワーク等の紹介による雇用に助成金を設け、より多くの人に公正な就職の機会を設けようとしています。
助成金は返済不要のお金
助成金は融資などと異なり、原則として返済不要です。支給要件を満たせば高い確率で受け取れるのですから、活用しない手はありません。
厚労省による助成金の財源は、企業が納める雇用保険料です。そのため、雇用保険料を遅延なく納め、かつ支給要件を満たせば当然受け取ってよいものです。
助成金の受給によるメリット
助成金を受給すれば、人材不足の解消につながるとともに、雇用に伴う経済的な負担が一部軽減されます。
それ以外にも、社会的な信用度が高まる、たとえば公的融資制度の審査に通りやすくなる可能性があります。
というのも、助成金の受給には審査があります。支給には、労働法を遵守し、反社会的勢力とのつながりもなく、従業員の適切な雇用管理をしていることなどが必須です。
そのため受給の事実があることで、すでに信用度を測る一定の条件をクリアしていると言えるのです。
ただし、不正受給があった場合は、支給された助成金の返還や延滞金が求められます。事業主の氏名なども公表されるため、社会的信用も失われます。
50種類以上ある厚労省管轄の助成金
厚生労働省管轄の助成金には、ハローワークからの紹介による雇用を対象とするもののほか、賃金を上げる、正社員化するといった労働環境の改善を対象とするものなど50以上もの種類が存在しています。
ただし、制度内容は毎年のように見直しがされています。労働法が改正されれば、それに対応する新たな助成金が設けられることもある一方、廃止される制度もあります。
そのため、自社に活用できる助成金の見極めと、常に最新情報を把握してタイミングよく準備を進めることが必要です。
助成金の受給に必須の要件とは
助成金を受給するためには、定められた要件をすべて満たさねばなりません。雇用関連の助成金に関する事業主と雇用する労働者についての主な要件を順に見ておきましょう。
事業主の共通要件
雇用関連の助成金を受けるには、まず次の要件を満たす必要があります。
- 雇用保険適用事業所の事業主であること
- 書類提出などの支給審査に協力すること
- 申請期間内に申請を行うこと
「雇用保険の適用事業主」とは、雇用保険の被保険者(所定労働時間が週20時間以上・かつ31日以上の雇用見込みがある人)を1人以上雇用する事業主を指します。法人・個人を問いません。
ハローワーク経由での雇用の支給要件
さらに、ハローワーク経由の雇用で支給対象となるには、次のような要件もあります。
- 対象労働者をハローワーク等の紹介で雇用すること
- 正規雇用、かつ雇用保険の一般被保険者として雇用すること
- 対象者の採用日前後6カ月間に従業員を解雇等していないこと
- 採用日前後6カ月間の解雇などによる離職者数が、採用日の被保険者数の6%超かつ4人以上でないこと
- 過去3年間に同コースでの支給決定を受けながら、助成期間中に対象者を解雇等していないこと
- 高年齢者の雇用確保や就業確保について勧告を受けていないこと
ハローワーク等で紹介される前から選考に入っていたような場合も、支給対象とはなりません。
不正受給を防ぐための支給要件
また、不正受給防止の観点から、次のどちらかに当てはまることも必須です。
- 過去に雇用関連の助成金の不正受給で不支給決定・支給取消を受けていない
- 不支給決定・支払決定の取消日から3年(※)が過ぎている
※申請が平成31年4月1日以降の場合は5年以上の経過が必要
不支給要件
支給要件を満たすほか、次に挙げる「不支給要件」に該当しないことも必要です。1つでもあてはまれば支給は受けられません。
- 支給申請書等に事実と異なる記載または証明を行っている
- 過去3年以内に不正受給を行った
- 支給申請後、支給決定までに不正受給を図った
- 過去1年間に労働保険料の未納がある
- 過去1年間に労働法令の違反があった
- 性風俗関連営業・接待をともなう飲食業などである
- 暴力団や破壊活動にかかわる団体と関係がある
- 支給申請または決定日の時点で倒産している
- 不正受給発覚時の事業主名などの公表に同意していない
- 支給決定の取消および返還要求があった場合の返還を承諾していない
「不正受給」には、たとえば退職者について、会社都合による退職を自己都合であると届け出した場合なども当てはまります。
労働法令の違反には、残業代の未払いや36協定を超えた長時間労働のほか、有給休暇の取得をさせない、業務上のケガを労災と認めないことなども該当します。
労働者の要件
対象となる労働者についても、次のような要件があります。
- 紹介時点で、在職者でないこと
- 過去3年以内に従業員、委託先などの関係になかったこと
- 事業主や取締役の3親等以内の親族でないこと
- 助成対象期間の途中で離職していないこと
- 業務が性風俗の接待などでないこと
この他、各助成金・コース特有の要件については次の章で説明します。
ハローワーク経由の雇用で受給できる助成金一覧
ハローワークを経由した従業員の雇用で受けられる助成金を一覧で見てみましょう。令和6年9月現在、次の3つの助成金で9つのコースが設けられています。
助成金名 | コース名 |
---|---|
特定求職者 雇用開発助成金 | ・特定就職困難者コース ・発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース ・就職氷河期世代安定雇用実現コース ・生活保護受給者等雇用開発コース ・成長分野等人材確保・育成コース |
トライアル 雇用助成金 | ・一般トライアルコース ・障害者(短時間)トライアルコース ・若年・女性建設労働者トライアルコース |
地域雇用 開発助成金 | ・地域雇用開発コース |
それぞれのコースの概要を説明します。
特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者やひとり親、障害者など一般的に就職が難しいとされる人を、雇用保険の被保険者として雇い入れた場合に支給される助成金です。
支給対象となる労働者
特定就職困難者コースの対象者は、次のような人です。
- 母子家庭の母、父子家庭の父等
- 高年齢者(60歳以上)
- 身体・知的・精神障害者
- ウクライナ避難民
- 補完的保護対象者
「補完的保護対象者」とは、難民条約上の難民(国籍や人種、政治的意見の相違などにより迫害を受ける)ではないものの、同様に保護すべきと認定された人を言います。
この他、中国残留邦人等永住帰国者、北朝鮮帰国被害者、認定駐留軍関係離職者、アイヌの人々なども対象となります。
支給額と支給方法
助成金の支給額や支給方法(6カ月の支給対象期ごとにいくら・何期分が支給されるか)は、障害の程度など対象者の区分や企業規模により異なります。
また、当人が短時間勤務(週20時間以上30時間未満)かどうかによっても異なります。
一般労働者
雇用される人 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
・高齢者 (60歳以上) ・母子家庭の母等 | 60万円 (50万円) | 20万円×2期 (15万円×2期) |
・身体・知的障害者 | 120万円 (50万円) | 20万円×4期 (15万円×2期) |
・重度障害者 ・45歳以上の障害者 ・精神障害者 | 240万円 (100万円) |
短時間労働者
雇用される人 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
・高齢者 (60歳以上) ・母子家庭の母等 | 40万円 (30万円) | 20万円×2期 (15万円×2期) |
・身体・知的障害者 ・重度障害者 ・45歳以上の障害者 ・精神障害者 | 80万円 (30万円) | 20万円×4期 (15万円×2期) |
たとえば短時間勤務の知的障害者を雇用した中小企業には、6カ月の支給対象期(1期)ごとに20万円、第1期から第4期にかけて合計80万円が支給されます。
特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース)
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コースでは、文字どおり発達障害や難病の人が雇い入れの対象です。
雇用保険の被保険者として継続雇用し、支給申請時に雇用管理に関する配慮事項を報告することで助成が受けられます。
支給対象となる労働者
このコースの対象となる労働者は、次のどちらにも該当する人です。
- 障害者手帳を持たない、発達障害者または難病患者
- 雇い入れ日時点で65歳未満の人
発達障害とは、自閉症やアスペルガー症候群、学習障害など「発達障害者支援法第2条」に規定されている障害を指します。難病については、筋ジストロフィーやダウン症候群など、約370の病名が指定されています。
発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース対象疾患一覧(PDF)|厚労省によるリーフレット
支給額と支給方法
このコースも、短時間労働者かどうか、中小企業かどうかで助成金の支給額や助成期間が異なります。
勤務時間区分 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
下記以外 | 120万円 (50万円) | 30万円×4期 (25万円×2期) |
短時間労働者 (週20時間以上30時間未満) | 80万円 (30万円) | 20万円×4期 (15万円×2期) |
支給期間は、中小企業は4期で2年間、大企業は2期で1年間です。
特定求職者雇用開発助成金(就職氷河期世代安定雇用実現コース)
就職氷河期世代安定雇用実現コースでは、バブル経済崩壊後と就職活動期が重なった、いわゆる就職氷河期世代の人を正規雇用した場合に助成が受けられます。
支給対象となる労働者
次のすべてに当てはまる人の雇用が助成対象となります。
- 昭和43年4月2日~昭和63年4月1日生まれである
- 過去5年間に正社員として雇用された期間が通算1年以下である
- 過去1年間に正社員として雇用されたことがない
- 紹介時点で失業中、または非正規雇用であり、ハローワーク等の支援を受けている
- 本人が正規雇用を希望している
このコースでは、週の所定労働時間を20時間以上30時間未満で契約する場合は助成対象となりません。
支給額と支給方法
対象者1人あたりの支給額は次のとおりです。
企業規模 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
中小企業 | 60万円 | 30万円×2期 |
大企業 | 50万円 | 25万円×2期 |
支給期間は2期、1年間です。
特定求職者雇用開発助成金(生活保護受給者等雇用開発コース)
生活保護受給者等雇用開発コースでは、生活保護の受給者や生活困窮者を雇用保険の一般被保険者として雇用する場合に助成が受けられます。
支給対象となる労働者
このコースの対象労働者は、次のいずれかの支援を3カ月超にわたり受けている生活保護受給者もしくは生活困窮者です。また、雇い入れ日現在で65歳未満の人が対象です。
- 地方公共団体の要請にもとづくハローワークによる支援
- 地方公共団体の被保険者就労支援事業による支援
- 地方公共団体の生活困窮者自立相談支援事業による支援
上記のどの支援を受けている人かは、ハローワーク等から説明されます。
支給額と支給方法
支給額は、短時間労働者かどうかによって異なります。
対象労働者 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
下記以外 | 60万円 (50万円) | 30万円×2期 (25万円×2期) |
短時間労働者 (週20時間以上30時間未満) | 40万円 (30万円) | 20万円×2期 (15万円×2期) |
助成期間は2期、1年間です。
特定求職者雇用開発助成金(成長分野人材確保・育成コース)
成長分野人材確保・育成コースは、特定求職者雇用安定助成金のその他のコースの対象者を、情報通信などのデジタル分野あるいは脱炭素などのグリーン分野(以下、成長分野とします)の業務に就かせるなどした場合に対象となるコースです。
次の2種類の助成メニューがあり、他のコースより高額な助成金が受けられます。
助成メニュー | 主な要件 |
---|---|
成長分野 | 高齢者や障害者などを雇い、「成長分野」に従事させる |
人材育成 | 未経験の就職困難者を雇い、 「人材開発支援助成金」を活用した人材育成を実施、賃金を引き上げ |
支給対象となる要件
まず、どちらの助成メニューでも「特定求職者雇用開発助成金」の他コースの支給要件をすべて満たすことが必要です。
その上で、メニューごとに次の要件があります。
成長分野
- 対象者の従事する業務の主たる部分が「成長分野の業務」であること
- 対象者に対し、雇用管理改善または職業能力開発に関する取り組みを行うこと
- 上記について記載した実施結果報告書を提出すること
「成長分野の業務」とは、ソフトウェア開発やITヘルプデスクといった情報処理・通信技術者、データサイエンティストに該当する業務、または、電気自動車の生産技術者など脱炭素・低炭素化に関する研究者・技術者としての業務を指します。
これらをメインの業務としていなくてはなりません。
「雇用管理改善」は諸手当制度やメンター制度などの整備・改善、「職業能力開発」は職業訓練やキャリアコンサルティングなどの実施、教育訓練のための有休制度の整備などを指します。
人材育成
- 対象者が未経験の業務に就くことを希望していること
- 人材開発支援助成金を活用して訓練を行い、訓練に関連する業務に就かせること
- 毎月決まって支払われる賃金を、採用時(試用期間がある場合は本採用時)から3年以内に5%以上上げること
賃金の引き上げについては、訓練に伴った実施が対象であり、地域別最低賃金の改定をきっかけに実施したような場合は対象となりません。
また、「毎月決まって支払われる賃金」とは、就業規則などであらかじめ規定されている条件・算定方法で支給された、基本給や職務手当などの現金給与を言います。残業代や住宅・通勤手当などは含みません。
支給額と支給期間
「成長分野」と「人材育成」のどちらの助成メニューも、助成内容は同じです。ただし、短時間労働者かどうかで金額は異なります。
一般労働者
雇用される人 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
・母子家庭の母等 ・60歳以上の人 ・生活保護受給者 ・ウクライナ避難民 ・補完的保護対象者等 ・就職氷河期世代不安定雇用者 | 90万円 (75万円) | 45万円×2期 (37.5万円×2期) |
身体・知的障害者 | 180万円 (75万円) | 45万円×4期 (37.5万円×2期) |
・重度障害者 ・45歳以上の障害者 ・精神障害者 | 360万円 (150万円) | 60万円×6期 (50万円×3期) |
短時間労働者
雇用される人 | 支給総額 | 支給方法 |
---|---|---|
・母子家庭の母等 ・60歳以上の人 ・生活保護受給者 ・ウクライナ避難民 ・補完的保護対象者等 | 60万円 (45万円) | 30万円×2期 (22.5万円×2期) |
・身体・知的障害者 ・重度障害者 ・45歳以上の障害者 ・精神障害者 | 120万円 (45万円) | 30万円×4期 (22.5万円×2期) |
半年を「1期」と数え、2期の場合は採用から半年後に1期分、1年後に2期分が支給されます。
トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
トライアル雇用助成金とは、職業経験や知識、技能の不足などで就職が難しい人を、無期雇用への転換を前提として試験的に雇い入れる、原則3カ月の「トライアル雇用」を行った場合に受けられる助成金です。
一般トライアルコースでは、障害のない人を対象としています。障害のある人のトライアル雇用は、この後紹介する「障害者トライアルコース・障害者短期トライアルコース」が対象となります。
支給対象となる労働者
一般トライアルコースで対象となるのは、次のすべてに当てはまる労働者です。
- 過去2年以内に2回以上、離職や転職を繰り返している
- 紹介日の前日時点で、離職期間が1年を超えている
- 妊娠・出産・育児で離職後、1年を超えて安定した職に就いていない
- 昭和43年4月2日以降の生まれで、ハローワーク等で担当者の個別支援を受けている
- 生活保護の受給者、母子家庭の母など、就職の援助に特別な配慮が必要な人である
- 本人がトライアル雇用を希望している
離職期間とは、パート・アルバイトを含め、まったく働いていない期間を指します。安定した職に就いている人や、週30時間以上働く自営業者や会社役員、在学中の人などは対象となりません。
支給額と支給期間
一般トライアルコースでは、1カ月あたり最大4万円(ひとり親の場合は5万円)が、最長3カ月分支給されます。支給はまとめて1回です。
支給額と支給対象期間 | 最大4万円(月額)、最長3カ月分 ※母子家庭の母・父子家庭の父は最大5万円 |
---|
トライアル雇用期間が1カ月未満となるなどの場合は、勤務日数によって支給額が決まり、上記より少なくなることもあります。
トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコース)
障害者トライアルコース・障害者短時間トライアルコースでは、障害者のトライアル雇用を行った場合に助成が受けられます。
支給対象となる労働者と雇い入れの条件
障害者トライアル雇用と障害者短時間トライアル雇用とでは、対象者や雇入れの条件が異なります。
障害者トライアル雇用の対象
障害の種類を問わず、次のいずれかに当てはまれば対象となります。
- 未経験の職業に就くことを希望している
- 過去2年間に離職や転職を2回以上繰り返している
- 紹介日前日時点で、離職期間が6カ月を超えている
ただし、重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者の場合は、上記に限らず対象となります。また、精神障害者を雇用する場合は助成額が増額されます。
雇い入れ時は、トライアル雇用期間についても雇用保険の被保険者資格取得届を年金事務所に提出することが必要です。
障害者短時間トライアル雇用の対象
短時間トライアル雇用は、次のような人が対象です。
- 精神障害者または発達障害者
- 週20時間以上の勤務が難しい人
採用選考時は、書類だけでの選考でなく面接が必要です。
採用後は週10時間以上20時間未満のトライアル雇用から始めて、3カ月~12カ月のトライアル期間中に20時間以上の就労を目指します。
支給額
各コースの支給額と支給対象期間は次のとおりです。
コース名 | 支給額と支給対象期間 |
---|---|
障害者トライアルコース | 【精神障害者以外】 最大4万円(月額)、最長3カ月間 |
【精神障害者の場合】 最大8万円(月額)、最長6カ月間 ※最大8カ月×3カ月、以降4万円×3カ月 | |
障害者短時間 トライアルコース | 最大4万円(月額)、最長12カ月間 |
障害者トライアルコースで精神障害者を雇用する場合、トライアル雇用期間を6カ月~12カ月間とすることが可能です。ただし、助成金の支給は6カ月分が最大です。
トライアル雇用助成金(若年・女性建設労働者トライアルコース)
若年・女性建設労働者トライアルコースは、上記「一般トライアルコース」または「障害者トライアルコース」の支給決定を受けた中小の建設事業主を対象とするコースです。
トライアル雇用の対象者が若者または女性の建設作業員であった場合に、各コースに上乗せする形で助成が受けられます。
支給対象となる労働者
受給には、雇い入れる労働者が次のすべてにあてはまることが必要です。
- 35歳未満の人、または女性である
- 中小建設事業主にトライアル雇用される
- 建設工事現場での現場作業に従事する
現場作業とは、大工や左官、鉄筋工や配管工、施行管理者といった仕事を指します。設計や測量、営業や経理といった仕事に就く場合は対象外です。
支給額と支給期間
一般トライアルコース、障害者トライアルコースの助成金とは別に、次の額が支給されます。
支給額・支給期間 | 最大4万円(月額)、最長3カ月間 |
ただし、勤務日数が予定の75%に満たなかった場合、支給額は減額されます。
地域雇用開発助成金(地域雇用開発コース)
地域雇用開発助成金は、事業展開や人材採用が難しい地域での雇用に対して支給される助成金です。
この助成金では、雇用開発が必要とされている地域で事業所を設置・整備したのち、その地域に住む求職者を雇い入れることで助成が受けられます。
1回目の支給要件
1回目の支給を受けるには、次のすべてを満たす必要があります。
要件 | 概要 |
---|---|
実施計画書の提出 | ・特定地域での事業所の施設・設備の設置・整備 ・地域在住の求職者の雇用に関する計画書 |
施設等の設置・整備 | ・最長18カ月間の計画期間内に実施 ・費用は1点20万円以上、合計300万円以上 |
常時雇用者の雇い入れ | ・計画期間内に地域在住の求職者を雇用 ・雇い入れ人数は3人(創業の場合は2人)以上 ・雇用保険の一般被保険者又は高年齢被保険者として雇用する・雇い入れ後は設置・整備を行った事業所で就労する |
労働者数の増加 | 事業所設置等の完了日時点の労働者数を、計画日前日より3人(創業の場合は2人)以上増加 |
対象となる地域は、次のいずれかに指定されている地域です。
- 同意雇用開発促進知識
- 過疎等雇用改善地域
- 特定有人国境離島地域等
- 地域活性化雇用創造プロジェクト参加事業主に対する特例対象地域
- 地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)寄付事業主に対する特例対象地域
東京都や千葉県・埼玉県・神奈川県・愛知県・大阪府は対象外です。
2・3回目の支給要件
2・3回目の支給を受けるには、雇用の維持と職場定着についての要件を満たす必要があります。
要件 | 概要 |
---|---|
被保険者数の維持 | 支給基準日(※)の被保険者数が、2回目・3回目とも完了日時点での数より減っていないこと |
対象労働者の維持 | 支給基準日の対象労働者数が完了日時点の数より減っていないこと |
対象労働者の職場定着 | 支給基準日までの離職者数が、完了日時点の対象労働者数の 1/2以下または3人以下であること |
※印の支給基準日とは、2回目は完了日の1年後、3回目は完了日の2年後の日を指します。
支給額
支給額は、事業所の設置・整備にかかった費用と、対象労働者の増加数によって異なります。1年ごとに最大3回の支給が受けられます。
また、中小企業の場合は1回目の支給額のみ、次のとおり増額されます。
- 中小企業は、1回目の支給額が下表の1.5倍
- 中小企業の創業時は、1回目の支給額が下表の2倍
設置・設備費用 | 対象労働者の増加人数 | |||
---|---|---|---|---|
3~4人(※) | 5~9人 | 10~19人 | 20人以上 | |
300万円以上 | 50万円 | 80万円 | 150万円 | 300万円 |
1000万円以上 | 60万円 | 100万円 | 200万円 | 400万円 |
3000万円以上 | 90万円 | 150万円 | 300万円 | 600万円 |
5000万円以上 | 120万円 | 200万円 | 400万円 | 800万円 |
ハローワーク経由の雇用で助成金を申請する流れ
ハローワーク経由での雇用と助成金申請の流れは次のとおりです。
- 1)ハローワーク等に求人を申し込む
- 2)ハローワーク等から対象者の紹介を受け、採用する
- 3)ハローワーク等に職業紹介証明書を発行してもらう
- 4)労働局またはハローワークに助成金の支給申請をする
- 5)審査後、支給または不支給の通知が届く
- 6)支給決定であれば助成金が口座に振り込まれる
ただし、助成金の種類やコースによってこれ以外の手続きが必要となる場合もあるので注意が必要です。
特定求職者雇用開発助成金の申請方法
特定求職者雇用開発助成金では、支給が「第1期」「第2期」など6カ月ごとに区切った「支給対象期」に分割して行われます。
そのため、支給対象期ごとに申請を行う必要があります。申請には締切があり、支給対象期の末日から2カ月以内にしないと受給できなくなるので注意が必要です。
トライアル雇用助成金の申請方法
トライアル雇用助成金では、まずハローワークに計画書を提出する必要があります。対象者のトライアル雇用を始めた日から2週間以内に、ハローワークにトライアル雇用の実施計画書や雇用契約書などを提出しなくてはなりません。
支給申請の期間は、トライアル雇用終了日の翌日から2カ月以内です。
地域雇用開発助成金の申請方法
地域雇用開発助成金では、まず事業所の設置・整備と対象者の雇い入れについての計画書を立て、労働局長に提出する必要があります。
最大18カ月の計画期間が終わる完了日に、1回目の支給申請を行います。雇用の維持に関する第2・第3回目の支給は、完了日から1年後、2年後にそれぞれ申請します。
この助成金では、申請書類による審査のほか、実地調査も行うことが原則となっています。
支給申請に必要な書類【特定就職困難者コースの場合】
支給申請の際は、助成金ごとに決まった様式の「支給申請書」のほか、支給要件を満たしていることを証明する書類や、雇用管理を適正にしていることが確認できる資料などを提出します。
ここでは、特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースの申請に必要な書類を見ておきましょう。
- □特定求職者雇用開発助成金 第1期支給申請書(様式3号)
- □賃金台帳(写し)
- □出勤簿またはタイムカード(写し)
- □対象労働者であることを確認できる書類
(障害者手帳、療養手帳、住民票などの写し) - □雇用契約書(写し)
- □対象労働者雇用状況申立書
- □職業紹介証明書
- □支給要件確認申立書
支給申請書は、第2期以降は「様式第4号」を使用します。第1期の申請をし忘れたなどの場合は、第2期の申請時も第1期の支給申請書を使います。
上記のほか、必要に応じて次のような書類を添付します。
- □労働者名簿等(写し)
- □就業規則、賃金規定等
- □最低賃金の減額の特例許可の証明書
- □中小企業事業主であると証明する書類
- □特定求職者雇用開発助成金離職割合除外申立書
- □総勘定元帳
中小企業であることを証明する書類には、たとえば資本金額が記された会社のパンフレットなどが挙げられます。
これ以外にも、労働局から何らかの書類の提出を求められる場合があります。必要書類がすべてそろっていないと助成金の支給は受けられません。
申請する助成金の必要書類は最新情報をあらかじめ確認し、提出できるよう揃えておきましょう。
ハローワーク経由で助成金を受給する際の注意点
助成金の支給申請をするには、いくつかの注意点があります。特に次の点に気を付けましょう。
ハローワークでも自主応募は助成対象外
ハローワークでは、窓口での職業紹介でなく、端末からオンライン上で自主応募することもできます。しかしこの助成金は職業紹介による雇用が条件であり、自主応募を受けて採用した場合には対象となりません。
それと同様、自社ホームページや求人サイトなどからの応募も支給の対象外です。後から体裁だけ整えることも認められません。
実労働時間や賃金額によっては減額も
特定求職者雇用開発助成金の場合、短時間労働者かどうかによって支給金額が異なります。しかし、フルタイム勤務の予定がほぼ短時間勤務となっているなど、所定労働時間と実労働時間とに大きく差がある場合は、支給額が減額される場合があります。
また、短時間労働者ではないのに、支払われた賃金が「最低賃金×30時間」を下回っている場合も、支給額の減額あるいは不支給となる場合があるので注意が必要です。
支給は後払いであり、入金にも時間がかかる
返済不要なのが助成金のメリットですが、先にお金がもらえるわけではありません。まずは必要な経費を負担して領収書などを残す、取り組みを実施するなどしてから申請する流れ。そのため、助成金は後払いとなります。
申請後は書類の確認など審査もあるため、数日で入金されると思っていると予定が狂うことになります。
助成金を当てにしての資金繰りは避けましょう。
悪徳業者の指南による不正受給に注意
厚生労働省からの委託であると偽って助成金の申請をすすめたり、経営コンサルタントを名乗り不正受給の指南をしたりする業者が存在します。
悪徳業者の場合、受給の対象外とわかっていながら、手数料を得る目的で申請をすすめたり、虚偽の申請をしたりします。
虚偽の申請による不正受給は違法であり、業者による不正であっても、事業主の責任が問われます。助成金の返還や事業名の公表といったペナルティが科されることもあるので、相談は必ず信頼のおける専門家にしてください。
雇用関係の助成金申請ならBricks&UKにおまかせ
この記事で紹介したのは、ハローワーク経由で従業員を雇った場合に受けられる、厚生労働省管轄の助成金です。
高齢の人、障害を持つ人、育児と仕事の両立が難しい人などを雇うことは、企業として大きな社会的役割を果たすことになります。人手不足の解消のほか、多様性の尊重による会社の成長も期待できます。
しかし、助成金制度は種類が多く、申請に必要な書類も多岐にわたるため、「申請の仕方がよくわからない」という声もよく聞かれます。
当サイトを運営する社会保険労務士事務所Bricks&UKでは、これまで数多くの企業の助成金申請に貢献してきました。申請可能な助成金のご提案や、受給に欠かせない就業規則の整備などもいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
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監修者からのコメント ハローワークでは良い人が見つからない、求人を出しに行くのが面倒、などの理由でハローワークを敬遠されている事業主様もいらっしゃるかと思います。
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