母子家庭の母を雇用する事業主が活用できる助成金

2021.11.12

母子家庭の母

日本における離婚率は、2002年の2.30%をピークに下がってきてはいるものの、令和元年の離婚件数は208,496組。そのうちすべての子どもの親権を母親が持つというケースは100,242組で、その割合は昭和40年から増加傾向にあります(厚生労働省「令和元年 人口動態調査結果の概要」より)。

子どもを養いながら働く母子家庭の母親は、子どもの世話で勤務できる時間に限りがあったり、体調の悪化や学校行事などの事情で急に休まざるを得なくなったりすることも多いため、一般的には雇用されにくい状況となっています。

母子家庭の母など、いわゆる雇用されにくい人たちを雇い入れる事業主に対しては、国からのサポートとして助成金が用意されています。この記事では、母子家庭の母を雇った場合に受け取れる「特定求職者雇用開発助成金」の特定就職困難者コースについて解説していきます。

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金とは

特定求職者雇用開発助成金は、一般に「就職が難しい」とされる高齢者や障害者、母子家庭の母等の雇用を促すために設置された助成金です。

該当する人を労働者として雇い入れるだけでなく、継続して雇用することも求められます。また、雇い入れにはハローワーク等を経由すること、などのその他の支給要件もあります。

雇い入れる対象労働者によって複数のコースがあり、現在あるのは「特定就職困難者コース」と「生涯現役コース」、「被災者雇用開発コース」、「発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース」、「就職氷河期世代安定雇用実現コース」と「生活保護受給者等雇用開発コース」。
このうち母子家庭の母等を雇う場合に使えるのが、「特定就職困難者コース」です。

助成金の支給期間や支給額は、企業規模(中小企業かそれ以外か)、対象者の労働時間区分などにより異なります。母子家庭の母等を雇う場合の支給期間は1年間で、総支給額は、中小企業に対しては短時間労働者なら40万円、それ以外なら60万円です。
詳細はこの後説明していきます。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の詳細

支給の対象となる労働者

特定求職者雇用開発助成金の対象労働者要件

特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースで雇用の対象となるのは、雇い入れ日現在で満65歳未満の人のうち、主に次のいずれかに当てはまる人です。

  • 満60歳以上の人
  • 身体障害者、知的障害者、精神障害者
  • 母子家庭の母等
  • 父子家庭の父(児童扶養手当の受給者に限る) など

ここでいう「母子家庭の母等」とは、離婚や死別などにより配偶者のいない女性であり、20歳未満の子または一定の障害がある子を養う母親をいいます。

一定の障害とは、視力なら良い方の視力が0.07以下、聴力なら両耳で90デシベル以上など細かく規定されています。障害者手帳の級とは異なる区分で決められたものです。

また、配偶者(いわゆる事実婚を含む)はいるものの精神や身体の障害により長期にわたって労働能力を失い、扶養する必要があるという場合も当てはまります。

受給の対象となる事業主

特定求職者雇用開発助成金の対象事業主

この助成金の対象となるには、事業主として次の要件すべてを満たす必要があります。

①雇用保険の適用事業主であること
②ハローワーク等の紹介により、対象者を雇用保険の一般被保険者として雇い入れること
③雇い入れた労働者を継続して2年以上雇用すること
④雇い入れ前後6カ月間に事業主都合による従業員の解雇をしていないこと
⑤対象者の雇い入れより前に同コースでの支給決定がなされた場合、過去3年間の助成対象期間中に事業主都合で当人の解雇・雇い止め等をしていないこと
⑥雇い入れ前後6カ月間に、倒産や解雇など特定受給資格者となる離職者数が雇い入れ日時点の被保険者数の6%を超えていないこと
⑦対象者の出勤および賃金の支払状況等を明らかにする書類を整備・保管し、提出・提示などの協力をすること

また、雇い主としての責任や職場定着への努力を求めるため、次のような要件も定められています(平成30年10月改定)。

助成対象期間中に対象労働者を解雇等した場合、以後3年間は助成金の受給ができません。そして、支給対象期(対象期間を6カ月ごとに区切った期間)の途中で対象労働者が離職した場合、その支給対象期分の助成金は原則として支給されません。

不支給要件

助成金の不支給要件

上記の対象労働者・対象事業主となる要件を満たすことのほか、助成金の受給には次の「不支給要件」に該当しないことも求められます。つまり、以下の項目に当てはまれば不支給です。主なものを確認しておきましょう。

①対象者との間でハローワーク等の紹介より前に雇用の予約をしていた
②紹介を受けた日時点で、対象者が失業や同等の状態になかった
③支給対象労働者が対象期間の支給決定までに離職した(対象労働者の責めに帰すべき理由による解雇などを除く)
④過去3年の間に次のような事実があった
 ・雇用や請負、委任の関係があった
 ・出向や派遣、請負、委任契約で働いていた
 ・通算3カ月超にわたり訓練や実習等を受講した
⑤過去1年の間に、対象者との間に上記④のいずれかの事実があった事業主と密接な関係(身内など)にある

このほか、賃金支払いに遅れがあったり、紹介時と異なる労働条件での雇い入れなど労働者への不利益があったりした場合、また高年齢者に関する雇用確保措置を講じず勧告を受けているような場合にも、助成金は支払われません。

助成金の受給金額

特定求職者雇用開発助成金の受給金額

この助成金では、事業主が対象労働者に支払った賃金の一部に相当する額が6カ月(支給対象期間内)ごとに支給されます。

金額は対象労働者の区分(母子家庭の母等や障害者など)と、短時間労働者であるかどうか、また企業規模によっても異なります。

ここでは母子家庭の母等への支給金額に絞って見ていきましょう。

【母子家庭の母等を雇い入れた場合の支給額】

  企業規模区分 支給総額 支給対象期ごとの支給額 助成対象期間/支給回数
短時間労働者以外 中小企業 60万円 30万円 起算日から1年間/2回
中小企業以外 50万円 25万円
短時間労働者 中小企業 40万円 20万円
中小企業以外 30万円 15万円

ちなみに「短時間労働者」とは、週の所定労働時間が通常の労働者より短く、かつ20時間以上30時間未満である人をいいます。

助成金は、6カ月ごとの支給対象期に区切り、母子家庭の母等の場合は2回支給されます。申請もこの支給対象期ごとに行わなくてはなりません。

また、支給対象期に支払った賃金の額が上記より低い場合には、その賃金と同じ額が支給の上限です。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請の流れと必要書類

特定求職者雇用開発助成金申請方法の解説

助成金申請の流れ

特定求職者雇用開発助成金申請の流れ

特定求職者雇用開発助成金の支給申請は、支給対象期ごと、そして各期の末日の翌日から2カ月以内に労働局またはハローワークに書類を提出して行います。
では改めて、対象となる労働者の雇い入れから支給申請までの流れを見ていきましょう。

  • ハローワーク等からの紹介で対象者を雇い入れる
  • ②対象者の雇用保険への加入手続きをする
  • ③労働局による確認後、制度の周知文と支給申請書が交付される
  • ④雇い入れから6カ月を経過した翌日以降に1期目分の支給申請をする
  • ⑤労働局により審査・支給決定がされる(通知書が届く)
  • ⑥1期目分の助成金が口座に振り込みされる

上記のステップのうち、③でまず「雇い入れ日時点」で要件を満たしているかどうかの確認が行われます。該当しない場合には、その旨が文書で通知されます。

⑤の申請後の審査でも、前述の通り不支給要件に当てはまったり、期間内に従業員の解雇等や対象者の離職があったりした場合には不支給となります。

2期目分の申請は、1期目終了後さらに6カ月が過ぎ、かつ2カ月以内の間に、同じように支給申請を行います。

申請は1期ごとに必要です。2期目が終わるころには1期目の申請は締め切られてしまっているので注意してください。

助成金申請に必要な書類

特定求職者雇用開発助成金の申請書類

特定求職者雇用開発助成金の特定就職困難者コースの申請では、支給対象期によって次のいずれかの様式の申請書を労働局長に提出します。

  • 第1期支給申請書(様式第3号困)
  • 第2期支給申請書(様式第4号困)

また、添付必須書類として次の書類の提出が必要です。

・労働時間や手当ごとの区分がわかる賃金台帳またはその写し
・支給対象期の出勤状況がわかる出勤簿等またはその写し
・雇い入れ日時点で対象労働者であると証明するための書類(★)
・週の所定労働時間や雇用契約期間がわかる雇用契約書か雇入通知書の写し
・「対象労働者雇用状況等申立書(特定就職困難者コース)(様式第5号困)」と別紙申立書
・有料・無料職業紹介事業者等の発行した職業紹介証明書(ハロワ以外での雇い入れの場合)
・支給要件確認申立書(共通要領様式第1号)

★印の「対象労働者であると証明する書類」については、母子家庭の母等の場合は次のようなものが該当します。

・遺族年金の受給権者が所持する国民年金証書の写し
・児童扶養手当の受給が証明できる書類
・母子福祉資金貸付金の貸付決定通知書
・通勤定期乗車の特別割引制度に基づき市区町村長などが発行する特定者資格証明書の写し
・市区町村長、社会福祉事務所長、民生委員などによる母子家庭の母等であることの証明

さらに、必要に応じて就業規則や総勘定元帳、離職者がいた場合の労働者名簿などが必要となることもあります。何が必要となるかはケースバイケースとなるので注意が必要です。

特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者コース)の申請のポイント

特定求職者雇用開発助成金の申請ポイント

ここまで見てきたように、助成金の支給要件や必要書類などには数多くの決まりごとがあり、すべて完璧に揃えて申請手続きをするのはなかなか困難です。

この章では、そのなかで特に見逃してしまいがちな、あるいは誤ってしまいがちな申請のポイントについて改めて説明していきます。

助成金の対象となる雇用の条件に注意

特定求職者雇用開発助成金のポイント解説

助成金の対象となるのは、「ハローワーク等を経由した場合」の雇用に限られます。「ハローワーク等」には地方運輸局(船員として雇い入れる場合)、や一部の有料・無料職業紹介事業者なども当てはまりますが、例えば知人の紹介、本人からの直接的な応募などは対象外です。

また、初めて雇用契約を結ぶ場合に限られており、過去3年間にアルバイト勤務や委託契約、研修などの参加をしたことがある人は対象外です。ハローワーク等で紹介される以前に雇用の約束をしていたような場合も対象外となるので注意してください。

受給には法令の遵守が大前提

法令遵守イメージ

助成金の申請には、事業主が各種、特に雇用に関する法令を遵守していることが大前提です。

雇用契約の内容が法に触れていないか、有期雇用の場合は対象労働者が望む限り更新ができる契約内容になっているか(自動更新かどうか)なども審査の対象となります。

さらに、事業主として不適格である場合にも助成金の申請をすることはできません。過去の一定期間に違法行為に関与した役員がいる、労働関係法の違反がある、破壊活動防止法第4条に抵触する破壊活動を行っているなどの場合も申請することができません。申請日時点で倒産している場合にも不支給となります。

まとめ 助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

特定求職者雇用開発助成金の対象となる母子家庭の母と子

特定求職者雇用開発助成金は、就職が困難だとされる人を労働者として雇用する事業主をサポートする公的な助成金です。母子家庭の母親を雇う場合は、この助成金の特定就職困難者コースが利用できます。

母子家庭だとフルタイムで働いてもらえない、急に休まれるのは困る、といった理由で雇用を敬遠される事業主の方もいますが、勤務時間に限りがあるからこそ業務効率を良くする、フローを改善するなどの良い機会にもなり得ます。

多様な生き方・働き方を認め、有用な人材を雇い入れることは、これからの時代の企業がなすべきことの1つといっても過言ではないでしょう。

ただ、申請にあたっては細かな要件等がありますので、手続きには手間や時間がかかるかもしれません。多忙でそんな暇はないという場合には、ぜひ助成金申請のプロである社会保険労務士にご用命ください。要件を満たす環境整備や書類の整備など、スムーズな助成金申請のお手伝いをいたします。

社労士からのコメント 特定求職者雇用開発助成金は、助成金が初めてという事業主様でも比較的取り組みやすい助成金です。 揃える資料は多いですが、申請書の記入例もありますので、丁寧にすすめていけば失敗することも少ないかと思います。 弊社でも多くの申請代行のご依頼をいただいております。 とにかく時間がない!手間をかけたくない!という事業主様はご連絡ください。 弊社にて申請をサポートさせていただきます。

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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

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