【2022年度】働き方改革推進支援助成金3つのコースを紹介

2022.08.01

2022年働き方改革推進支援助成金

国が進める「働き方改革」の目的は、企業の生産性の向上と労働環境改善にあります。

企業に求められているのは、生産性を向上させて労働時間の適正化を図り、長時間労働や時間外労働を減らすこと。そのほか、年次有給休暇・特別休暇の取得を促進する、勤務間インターバル制度を導入することなどが挙げられます。

これに取り組む中小企業事業主を支援するために設けられているのが「働き方改革推進支援助成金」です。

この記事では、働き方改革推進支援助成金について、3つのコースの紹介や、2022年の最新の要件と改正点、申請時の注意点などを詳しく説明します。

働き方改革推進支援助成金とは

働き方改革推進支援助成金とは

冒頭でも触れたとおり、働き方改革推進支援助成金は生産性の向上や労働環境の改善を図る事業主を対象とした、国(厚生労働省)による支援制度です。

2022年度は、次の3つのコースが設けられています。

  • 労働時間短縮・年休促進支援コース
  • 労働時間適正管理推進コース
  • 勤務間インターバル導入コース

次の章から、1つずつを具体的に見ていきましょう。 

労働時間短縮・年休促進支援コース

2020年4月1日から、中小企業にも時間外労働の上限規制が適用されるようになりました。

このコースでは、生産性を向上させることにより時間外労働の削減、年次有給休暇や特別休暇の取得促進に向けた環境整備をする中小企業事業主への助成を行います。

対象事業主の要件

労働時間短縮・年休促進支援コースの支給対象となるには、まず事業主が次の2点を満たしていることが必要です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主であること
  • 年5日の年次有給休暇の取得に向けた就業規則等を整備していること

労働者災害補償保険とはいわゆる労災のことで、従業員を1人でも雇えば加入の義務が発生します。

成果目標の設定と取り組みの実施が必要

上記の要件を満たした上で、「成果目標」として次の4つのうち1つ以上を設定します。

  • 1.36協定の締結・届け出
    • 時間外と休日の労働時間を減らす
    • 労働時間を月60時間以下、または月60時間超80時間以下とする
  • 2.年次有給休暇の計画的付与の規定を新たに導入
  • 3.時間単位の年次有給休暇の規定を新たに導入
  • 4.特別休暇を次のいずれか1つ以上導入
    • 病気休暇、教育訓練休暇、ボランティア休暇、新型コロナウイルス感染症対応のための休暇、不妊治療のための休暇

そして、目標の達成に向けた研修や就業規則等の整備・改定、ソフトウェアの購入など、対象となる取り組みを行う必要があります。

また、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げることを「成果目標」に追加し、助成額の加算を受けることも可能です。

労働時間短縮・年休促進支援コースの支給額

労働時間短縮・年休促進支援コースの支給額は、取り組みの実施に要した経費(対象経費)の合計額の4分の3(一部条件によっては5分の4)」で算出した額です。

経費なら何でも対象となるわけではなく、例えば自動車やパソコン、資格取得費用などは対象外となっています。

また、支給額には上限も設けられており、次の成果目標の上限額と賃金加算額の合計額が上限です。

成果目標の上限額

上の章で紹介した成果目標1では、取り組み実施前後の労働時間の設定によって次のように上限額が異なります。

時間外労働時間数の設定 (実施前)
月80時間超
(実施前)
月60時間超
(実施後)
月60時間以下に設定
150万円 100万円
(実施後)
月60時間超・80時間以下に設定
50万円

表中の事業実施前の時間外労働時間数は、実際に運用されている有効な36協定で設定されている時間数です。

成果目標2の上限額は50万円、成果目標3と4の上限額はいずれも25万円です。

賃金加算額

賃金の引き上げによる加算額は、引き上げ率と適用人数によって次のように異なります。

適用人数 1~3人 4~6人 7~10人 11~30人
3%以上のUP 15万円 30万円 50万円 5万円/1人
(上限150万円)
5%以上のUP 24万円 48万円 80万円 8万円/1人
(上限240万円)

賃金加算は、30人が上限となっています。

この額に上の成果目標ごとの上限額を足した額が、助成金の支給上限額です。

労働時間適正管理推進コース

働き方改革推進支援助成金の労働時間

2020年4月1日から、賃金台帳などの労務管理書類の保存期間が5年に延長されました。

このコースは、企業の生産性を向上させ、労務・労働時間の適正管理の推進に向けて職場環境を整備する中小企業事業主への助成を行います。

対象事業主の要件

労働時間適正管理推進コースの支給対象となるには、事業主が次のすべてを満たしていることが必要です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 勤怠管理と賃金計算等がリンクするような総合管理ITシステムを、助成金の交付決定より前に導入していない
  • 賃金台帳等の労務管理書類を5年間保存するという就業規則等の規定を、助成金の交付決定より前の時点でしていない
  • 助成金交付申請の時点で36協定の締結・届け出がされている

勤怠管理と賃金計算等がリンクするシステムの導入や労務管理書類の5年保存の規定をすでにしている場合は、助成の対象外となります。

成果目標の設定と取り組みの実施が必要

上記の事業主としての要件を満たしたうえで、「成果目標」として次の3つのうち1つ以上を設定し、その達成に向けた取り組み(研修、就業規則等の作成・変更、ソフトウエアの導入など)を行う必要があります。

  • 勤怠管理と賃金計算等がリンクする総合管理ITシステムを導入して労働時間を管理する
  • 就業規則等で賃金台帳等の労務管理書類を5年間保存することを規定する
  • 「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」の研修を、労働者・労務管理担当者に対し行う

以上に加え、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げることを「成果目標」に追加すると、助成額の加算も受けられます。

労働時間適正管理推進コースの支給額

労働時間適正管理推進コースの支給額は、取り組みの実施にかかった対象経費の合計額の4分の3(一部条件によっては5分の4)の金額です。

ただし成果目標の達成時の上限額は100万円です。

賃金の引き上げによる加算額は、引き上げ率と適用人数によって次のように異なります。

適用人数 1~3人 4~6人 7~10人 11~30人
3%以上のUP 15万円 30万円 50万円 5万円/1人
(上限150万円)
5%以上のUP 24万円 48万円 80万円 8万円/1人
(上限240万円)

賃金引き上げで助成金の対象となるのは、30人が上限です。

勤務間インターバル導入コース

働き方改革推進支援助成金の勤務間インターバル導入コース

このコースでは、勤務間インターバル(勤務と次の勤務までの間にとる休憩時間)の制度を設け、労働者の健康保持や過重労働の防止を図る事業主に助成金が支給されます。

対象事業主の要件

勤務間インターバル導入コースの支給対象となるのは、次の条件を満たす事業主です。

  • 労働者災害補償保険の適用事業主である
  • 勤務間インターバル制度導入について次のいずれかである
    • 勤務間インターバル制度を導入していない
    • 9時間以上の勤務間インターバル制度を導入しているが、対象労働者が半数以下である
    • 勤務間インターバル制度を導入しているが、9時間未満である
  • 36協定の締結・届け出がされている
  • 過去2年間に月45時間を超える時間外労働の実態がある
  • 就業規則等で、年5日の年次有給休暇のための整備をしている

勤務間インターバル制度の導入状況については、複数の事業場がある場合は1つでも当てはまれば対象となります。

成果目標の設定と取り組みの実施が必要

事業主の要件を満たしたうえで、「成果目標」として休息時間が「9時間以上11時間未満」または「11時間以上」の勤務間インターバル制度を導入・定着させることが必要です。

具体的には次のいずれかを実施し、その達成に向けた取り組み(研修、就業規則等の作成・変更、ソフトウエアの導入など)を行う必要があります。

  • 制度未導入の場合…半数を超える労働者への9時間以上の勤務間インターバル制度を就業規則等に定める
  • 9時間以上の勤務間インターバルを導入済も対象者が半数以下の場合…半数超を対象とすることを就業規則等に定める
  • 9時間未満の勤務間インターバルを導入済の場合…労働者の半数超を対象に9時間以上の休息を与えることを就業規則等に定める

以上に加え、指定する労働者の時間当たりの賃金額を3%以上引き上げることを「成果目標」に追加し、助成額を加算させることも可能です。

勤務間インターバル導入コースの支給額

勤務間インターバル導入コースの支給額は、対象経費の合計額の4分の3 (一部条件によっては5分の4)の金額です。

ただし上限額が設定されています。新規導入は80万円、範囲の拡大・時間延長は40万円です。休息時間を11時間以上に延長した場合には、限度額がそれぞれ100万円と50万円に引き上げられます。

賃金の引き上げによる加算額は、上記2コースと同じく次のように設定されています。

適用人数 1~3人 4~6人 7~10人 11~30人
3%以上のUP 15万円 30万円 50万円 5万円/1人
(上限150万円)
5%以上のUP 24万円 48万円 80万円 8万円/1人
(上限240万円)

助成金加算の対象となるのは30人までの賃金の引き上げです。

3コース共通の受給の流れ

働き方改革推進支援助成金の受給の流れ

働き方改革推進支援助成金の受給までの流れは、上記3コースとも同じです。次の3つのステップで進めます。

期日 行うこと
2022年11月30日まで 「交付申請書」を労働局に提出
2023年1月31日まで 成果目標達成に向けた取り組みを実施
事業実施予定期間終了日より30日以内、または2023年2月10日のいずれか早い日 支給申請書類を労働局に提出

いずれも、期日を1日でも過ぎれば受け付けられません。提出書類に不備があるなどの可能性もあるため、余裕を持って行うことをおすすめします。

働き方改革推進支援助成金のメリット

働き方改革推進支援助成金のメリット

働き方改革推進支援助成金の申請には、指定の取り組みを実施する必要があります。そのプロセスによって、従業員だけでなく会社も次のようなメリットが得られます。

メリットその1.生産性の向上

新たな機器・設備を導入したり、勤務の間の休息時間を長くすることで、仕事の効率を上げることができます。それにより、時間当たりの生産性の向上が期待できます。

メリットその2.長時間労働の削減

生産性の向上は、ワークライフバランスの向上につながります。ワークライフバランスが向上すれば、従業員の働くモチベ―ションも上がります。業務の効率化で負担が減り、モチベ―ションも上がれば、長時間労働の削減も可能です。

メリットその3.労働時間適正管理の実現

労務管理のソフトウェアなどの導入により、労働時間が適正に管理できるようになります。シフト制勤務などの場合には特に、作業の効率化が図れます。

さらに、研修やコンサルティング、就業規則の充実等により、働き方改革への会社の努力が伝わり、従業員からの信頼度も増すでしょう。

2022年度における制度の改正点

働き方改革推進支援助成金の改正点

2022年度、働き方改革推進支援助成金は支給額に関する次のような改正が行われています。

労働時間短縮・年休促進支援コース

労働時間短縮・年休促進コースでは、次のそれぞれについて助成金の新設や支給額の変更がありました。

年次有給休暇の計画付与制度について

年次有給休暇の計画的付与制度を新たに導入した場合、2022年度は50万円(上限額)の助成が受けられることとなりました。

時間単位の年次有給休暇制度の導入について

時間単位の年次有給休暇を導入した場合の助成額上限が、次のように変更されました。

2021年度:50万円 → 2022年度:25万円

特別休暇の導入について

特別休暇を導入した場合の助成額上限が、次のように変更されました。

2021年度:50万円 → 2022年度:25万円

労働時間適正管理推進コース

労働時間訂正管理推進コースでは、成果目標達成時の上限額が次のように変更されました。

2021年度:50万円 → 2022年度:100万円

働き方改革推進支援助成金の申請時の注意点

働き方改革推進支援助成金の注意点

働き方改革推進支援助成金の申請には、いくつかの注意点があります。特に次のような点に注意しておかないと、せっかく準備をしたのに不支給となってしまうこともあります。

対象となる経費・ならない経費を要確認

取り組みを実施する前の初期段階で、どのような経費が対象となるのかを充分に確認しておきましょう。

働き方改革推進支援助成金では、取り組みに要した経費に補助率をかけた額が支給されます。

しかし、取り組みのための支出すべてが助成金の対象になるわけではありません。前述のとおり、自動車やパソコンなどの購入費は対象外です。

通常の企業活動で必要となる賃料や賃金、光熱費などは対象外ですし、常識を超えた額でも除外となる可能性があります。

36協定の締結と就業規則の整備は必須

働き方改革推進支援助成金を受けるには、導入する制度や改定する制度などについて36協定を結び、就業規則等を整備することが不可欠です。

規定の記載なしで従業員に有利な条件の制度を設けていた場合、それが推奨されることであっても、規定がないことを理由に助成金は不支給となってしまいます。

助成金申請を見越して36協定の締結や就業規則の整備を行う場合には、特に規定の内容や表現にも注意する必要があります。

ネット上の就業規則例では不十分である危険性もあるので、専門家である社会保険労務士のアドバイスを受けることをおすすめします。

助成金の交付決定前の取り組みは対象外

上記の受給の流れで説明したとおり、働き方改革推進支援助成金の受給はまず交付申請書を提出するところから始め、その後に対象となる取り組みを行います。

期日を気にせず交付決定前に取り組みを始めたり経費を支出したりした場合、助成金の支給対象外となってしまいます。

必ず正規の手続きを、順を踏んで行っていきましょう。

締切前に申請受付が終了する可能性あり

助成金制度には予算があります。そのため、予算が限度に達すれば申請の締め切りを迎える前でも受付は終了されてしまいます。

取り組みを着実に行い、要件をすべて満たしたとしても、受付終了となってしまえば受給はできません。

現に昨年の令和3年度も、当初の期限である11月30日を待たず、10月15日の時点で受付終了となりました。

助成金の申請もBricks&UKにおまかせ

社労士イメージ

2022年度も働き方改革推進支援助成金の交付申請の受付が始まりました。

この機会に労働時間の短縮や年次有給休暇の取得促進、労務・労働時間の適正管理などを行い、助成金の受給とともに会社の成長と労働環境の改善を図りましょう。

ただし受給の要件である取り組みや支給の申請には、就業規則等の整備から始めなくてはなりません。申請の受付が予定より早く締め切られる可能性もありますし、不正受給が増えている今、審査も甘くはありません。

私たちBricks&UKでは、助成金の申請や就業規則の整備などの経験豊富な社会保険労務士によるサポートを行っています。まずはお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント 働き方改革推進支援助成金の特徴の一つに、ほとんどの企業が当てはまるということが挙げられます。 通常、厚生労働省管轄の助成金は雇用保険に加入していることが必須だったり、解雇者がいると申請できないなどの制約があるのですが、この働き方改革推進支援助成金にはその制約はありません。(賃上げの加算部分は除く) 弊社のクライアント様にも、貨物自動車や電動工具などの購入費用補助として多数ご利用いただいております。 業務効率が見込まれる設備や備品購入予定がございましたら、ぜひご相談ください。

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