【キャリアアップ助成金】正社員化コース受給のためのポイント5つ

2021.03.31

助成金対象となるキャリアアップをした女性

従業員を非正規で雇用する事業主の皆様にとって非常にメリットが大きい「キャリアアップ助成金」。非正規の従業員を正社員にした時、事業主の方が1名あたり最大72万円の助成金を受け取ることができます。

この記事では、中でも「キャリアアップ助成金 正社員化コース」の申請を検討している事業主の皆様を対象に、支給額や申請の流れ、受給のポイントを詳しく解説します。

キャリアアップ助成金 正社員化コースとは

キャリアアップ助成金対象となる社員

「キャリアアップ助成金」には、合計7つのコースがあります。この記事では、有期雇用労働者を正規雇用労働者に転換、または派遣労働者を直接雇用した時に申請できる正社員化コースについて、その内容や申請方法を解説します。

キャリアアップ助成金 正社員化コースの概要

「キャリアアップ助成金」とは、パートやアルバイト、派遣社員、契約社員など有期雇用の労働者を無期雇用や正規雇用に転換した場合に、事業主が助成金を受け取ることができる制度です。

この助成金の背景には、非正規雇用の問題があります。

景気低迷によって人材派遣業のニーズが高まり、非正規雇用労働者が急増しました。その後「派遣切り」などの問題が社会的に注目を集めたことから2012年に派遣法が大幅に改定され、待遇は改善しつつあります。

しかし、依然として非正規雇用労働者の割合は高く、2020年10月〜12月現在、従業員全体(役員を除く)の約37.4%を占めています。正規雇用労働者に比べ、賃金が低い、雇用が不安定、能力開発の機会が少ないという課題があります。

そのため政府は、非正規雇用で働く人のキャリアアップや待遇改善を事業主に働きかける目的で助成金制度を作りました。

キャリアアップ助成金正社員化コースを活用できる場面

この助成金は、非正規雇用労働者の待遇を次のように改善しようとする事業主を対象としています。

  • 有期労働契約から正規雇用・無期労働契約に転換する
  • 無期労働契約から正規雇用に転換する
  • 派遣労働者を正規雇用労働者、または無期雇用労働者として直接雇用する

 特に、次のような困りごとを抱えている事業主の方におすすめです。

社員がなかなか定着しない

事業主からすると、非正規労働者は雇いやすいですが、他に条件が良い職場があれば簡単に辞められるというリスクがあります。

優秀な有期契約労働者に長く働いてもらうなら、キャリアアップ助成金 正社員化コースの活用をおすすめします。コストを抑え、意欲や能力の高い人に長く働いてもらうことにつながります。

人手不足で困っている

「求人を出しても応募者が集まらない。しかし、労働条件はあまり変えたくない」、そのような場合にもキャリアアップ助成金正社員化コースはおすすめです。

処遇を改善することが、求職者へのアピールともなるからです。たとえば「6カ月以上パート勤務を続けた人は無期契約に申し込みできる」といった制度を、求人の特記事項に盛り込みます。そうすれば、同時に有期契約の従業員のモチベーションアップも期待できます。

助成金の支給額

キャリアアップ助成金の計算

キャリアアップ助成金 正社員化コースで支給される助成金の額は、次の表のようになっています。

雇用の転換 中小企業 中小企業以外
有期→正規 57万円/人
(72万円/人)
42万7500円/人(54万円/人)
有期→無期 28万5000円/人(36万円/人) 21万3750円/人(27万円/人)
無期→正規

表のカッコ内は、生産性要件を満たした場合の金額です。

生産性要件とは、企業の生産性の向上を目的とした助成金割増の条件のことです。キャリアアップ助成金のほかにもさまざまな助成金で使用されています。次の項目を満たす必要があります。

  • 助成金申請の3年度前と比べた生産性の伸びが6%以上あること
  • 算定対象期間中、事業主都合による離職者がいないこと

生産性の伸びが1%以上6%未満でも、金融機関による一定の評価を得られる場合は生産性要件を満たしていると見なされます。

そして、次のようなケースではそれぞれ9.5万円~28.5万円が加算されます。

  • 派遣労働者を正規雇用労働者(多様な正社員含む)として直接雇用した
  • 母子家庭の母、父子家庭の父の雇用を転換した
  • 若者雇用促進法に基づく認定事業主が35歳未満の者の雇用を転換した
  • 勤務地・職務限定社員制度を新たに規定し、有期雇用労働者を転換・直接雇用した

助成金の対象となる事業主

キャリアアップ助成金は、次の1~5のすべてに当てはまる事業主が対象です。

キャリアアップ助成金の対象事業主チェックリスト
  • 1)事業所が雇用保険に加入している

  • 2)事業所にキャリアアップ管理者を置いている

  • 3)対象労働者に対し「キャリアアップ計画書」を作成し、管轄労働局長の受給資格認定を受けている

  • 4)対象労働者の名簿や賃金台帳、出勤簿などの法定帳簿を提出できる

  • 5)キャリアアップ計画期間内に、正社員あるいは無期雇用への転換に適切に取り組んだ

「キャリアアップ管理者」とは、文字通りキャリアアップ計画の責任者となる人のことです。事業主や役員、または必要な知識や経験がある人を選定します。

「キャリアアップ計画書」とは、非正規労働者のキャリアアップを計画的に進めるために今後行う大まかな取り組みの予定を書面にしたものです。

しかし、次の項目に当てはまる事業主は助成金を申請できません。

  • 過去に不正受給があり、申請時点でその5年以内である
  • 支給申請した年度の前年度より前の年度の労働保険料を納入していない
  • 支給申請日の前日から過去1年間に労働関係法令に違反した
  • 性風俗関連業、接待を伴う飲食業の営業、または一部を受託し営業している
  • 反社会的勢力と関わりがある
  • 申請支給日または支給決定日の時点で倒産している
  • 助成金の不正受給が発覚した際の事業主名簿の公表に同意していない

事業主には、民間企業だけでなく公益法人、特定非営利活動法人(NPO法人)、医療法人、社会福祉法人も含まれます。

助成金の対象となる労働者

助成金の対象となる労働者チェックリスト

この助成金の対象となるのは、正規雇用労働者以外で、対象事業者のもとで6カ月以上雇用されている労働者です。

次の1~9のすべてに当てはまる人が対象となります。

  • 1)次の①~④のいずれかに該当する
    ① 支給対象事業主に雇用される期間が通算して6カ月以上の有期雇用労働者
    ② 支給対象事業主に雇用される期間が通算して6カ月以上の無期雇用労働者
    ③ 6カ月以上の期間 継続して派遣先の業務に従事している有期派遣労働者、または無期派遣労働者
    ④ 支給対象事業主が実施した有期実習型訓練を受講し、修了した有期雇用労働者等

  • 2)雇用の際に、後に正規雇用労働者にすることを約束していない

  • 3)正規雇用労働者への転換で、転換日の前日から過去3年以内に親会社、子会社、関連会社などで正規労働者や無期雇用労働者として雇用されていない

  • 4)事業主か取締役の親族(3親等以内)ではない

  • 5)障害者就労継続支援A型の利用者ではない

  • 6)支給申請日に離職していない

  • 7)支給申請日に正規→有期/無期、無期→有期への転換が予定されていない

  • 8)転換日から定年までの期間が1年以上ある

  • 9)支給対象事業主や関連会社で定年を迎えていない

雇用時にすでに正規雇用への転換が前提となっていた場合にも対象外なので、注意が必要です。

キャリアアップ助成金正社員化コースの申請の流れ

キャリアアップ助成金の申請準備

ではキャリアアップ助成金 正社員化コースの申請の流れを順に説明していきます。

1.キャリアアップ計画書の提出

まずは、キャリアアップの取り組みについて計画書を作成します。それに先立ち、取り組みの責任者となるキャリアアップ管理者を決める必要もあります。

キャリアアップ管理者の業務内容は、従業員へのキャリアアップ計画の周知や従業員の育成などです。1つの事業所に1人の配置が必要であり、事業所が複数ある場合は、事業所ごとに選任しなくてはいけません。

労働者代表などの意見も聞いた上で、様式第1号の<表紙>、<共通>、<計画>の3枚を作成します。

厚生労働省「キャリアアップ計画書」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801_00003.html

計画書の作成ができたら、転換または直接雇用をする前に管轄のハローワーク等に提出します。

労働局により認定されれば、事業所に計画書が返送されます。返送された計画書は支給申請時に必要となるため、必ず保管してください。

2.就業規則に制度を追加し、労働基準監督署へ届け出る

次に、自社の就業規則や労働協約などに「転換制度」を規定します。たとえば次のようなものです。

例:正規雇用への転換の場合

第〇条 勤続〇カ月以上または有期実習型訓練を終了した者で、本人が希望すれば正社員に転換させることがある。
2 転換時期は〇月〇日とする。
3 転換を行うには、所属長の推薦があり、役員またはそれに準ずる者の面接試験に合格する必要がある。

就業規則などに記載する際は、「試験などの手続き」「対象者の要件(雇用区分や雇用期間など)」「転換実施時期」の規定が必須です。

労働者代表などの意見を聞いた上で、これを労働基準監督署へ提出します。

3.対象となる労働者の雇用を転換する

キャリアアップ助成金申請にかかる雇用転換の実施成功イメージ

就業規則に規定した面接や筆記試験といった転換の手続きを実施し、対象労働者を正規雇用や無期契約雇用、直接雇用へ転換します。そして、対象労働者に新たな雇用契約書や労働条件通知書を交付します。

その際に気をつける点は、対象労働者を就業規則などの規定通りの労働条件・待遇にすることです。賃金や労働時間などが規定通りになっていないと、6カ月雇用後の受給申請の際に労働局などから詳しくチェックされ、不支給となる可能性があります。

また、「転換前6カ月分の賃金」より「転換後6カ月分の賃金」が3%増額している必要があります。転換前後の賃金3%増額については、のちほど説明します。

4.転換後6カ月分の給与を支給する

転換あるいは直接雇用した労働者を6カ月以上継続して雇用し、就業規則などに規定したとおりの賃金を支給します。

例:末締め翌月15日支給の場合の記載方

 1.前年度10月1日~3月31日 パートとして6カ月間雇用
 2.4月1日 無期転換
 3.9月30日 無期転換から6カ月目の賃金締め日
 4.10月15日 賃金支払い日

転換日の前後6カ月間、1年の間に解雇等の事業主の都合による離職があると、支給対象外となります。

例えば、ある従業員に対し適性がないと判断し、話し合いで辞めてもらったとします。この場合は、自己都合ではなく事業主都合の離職と判断されます。

支給申請書類が受理された後の離職は問題ありませんが、助成金の受給後すぐに解雇等をしてしまうと、不正受給と見なされるおそれもあるので注意が必要です。

5.支給申請書類を提出する

転換後、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内に、次の支給申請書類をハローワーク等に提出します。

  • 様式第3号(キャリアアップ助成金支給申請書)
  • 別添様式1-1(対象労働者や支給申請額の一覧)
  • 別添様式1-2(対象労働者の詳細)
  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法・受取人住所届
  • 労働局に認定を受けたキャリアアップ計画書の写し
  • 就業規則
  • 雇用契約書
  • 賃金台帳
  • 出勤簿
  • 登記事項証明書

その他、申請のケースに合わせた書類の提出が必要だったり、労働局から別の書類の提出が求められることもあります。

様式は厚生労働省の公式サイトからダウンロードが可能です。

厚生労働省 様式ダウンロードhttps://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801.html

各都道府県労働局の公式サイトでは、申請時のチェックリストも公開しています。具体的な内容は、管轄の労働局のサイトでの確認をおすすめします。

申請書類の提出後、審査が行われます。状況によっては、結果が出るまでに時間がかかることもあります。

キャリアアップ助成金正社員化コースを受給するための5つのポイント

キャリアアップ助成金の申請ポイントを解説する人

この助成金は支給申請に向けて準備する書類が多いため、申請のハードルも高く感じられます。

ここで紹介する5つのポイントを押さえた上で、不備がないよう確認をしっかり行いましょう。必要であれば専門家である社会保険労務士の支援を受けることをおすすめします。

1.雇用転換する前にキャリアアップ計画書を提出すること

キャリアアップ助成金正社員化コースの申請の流れをおさらいすると、次のとおりです。

1、キャリアアップ計画書をハローワーク等に提出
2、就業規則に転換制度についての規定を追加
3、試験などを実施して対象労働者を転換あるいは直接雇用
4、給与6カ月分の支払い
5、助成金の支給申請

キャリアアップ助成金 正社員化コースは申請プロセスが複雑です。

特に重要なポイントは、対象労働者を転換/直接雇用する前にキャリアアップ計画書を提出することです。

この申請順序を間違えたり飛ばしてしまったりして、申請を断念するケースも多く見られます。手順が違った場合も、支給要件を満たさないとして支給の対象外となるので注意してください。

また、転換制度を準備し申請書類を揃えるにも、かなりの手間がかかります。そのうえ支給対象とならなければ、すべてが無駄になってしまいます。

手間や効率を考えると、社会保険労務士など専門家の手を借りるのが得策です。

2.就業規則に追加した転換制度に不備がないこと

就業規則には転換の手続きや要件、転換または採用の時期を不備なく記載する必要があります。

「転換の手続き」は面接や筆記試験など、「要件」とは勤続年数、人事評価結果、所属長の推薦など、客観的に確認できるものでなくてはなりません。

また、勤務地限定、職務限定、短時間正社員など多様な正社員制度を作る際には、労働条件なども明記する必要があります。

就業規則にこれらの規定がないと、転換制度に不備があると見なされ不支給となってしまいます。

また、従業員が10人以上の事業所で就業規則の届け出を行っていない場合も、助成金は支給されません。10人未満の事業所は、法的には就業規則を労働基準監督署に届け出る必要はありませんが、代わりに「就業規則の周知の申立書」の添付が必要です。

自社に合った就業規則の作成を

さらに「転換」の中でも、正規雇用への転換、無期雇用への転換、派遣社員からの採用など、多様なバリエーションに応じた規定を作る必要があります。

厚生労働省のパンフレットやインターネットにある他社の就業規則のひな形を流用することも可能ですが、自社の実態と合わない項目もあるため、トラブルの原因になりかねません。

就業規則の作成に関しても、専門的な知識をもつ社会保険労務士などの専門家のサポートを受けることがおすすめです。

3.転換後6カ月の給与が転換前6カ月間と比較して3%以上アップしていること

キャリアアップ助成金の要件となる賃金アップイメージ

対象労働者を正規雇用などに転換した後の賃金は、転換する前の6カ月間の賃金よりも3%以上アップしている必要があります。

ここでいう賃金は諸手当を含む賃金の総額を表しますが、令和3年4月より賞与は対象外となりました。 対象となる給与は細かく定められているため、次のツールを使って算出します。

厚生労働省「(新)賃金上昇確認ツール」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000118801.html

次のような手当は対象となりません。

  • 実費の補填
  • 毎月の状況により変動するもの
  • 通勤手当、住宅手当、燃料手当、工具手当、休日手当、時間外手当(固定残業代含む)、歩合給、食事手当など

賃金をアップさせたつもりでも、このキャリアアップ助成金 正社員化コースの算出方法で増額が認められなければ、支給対象となりません。制度をよく理解していないと算出が難しいため、これについても専門家である社会保険労務士に依頼するのが賢明です。

4.支給申請期限を守ること

キャリアアップ助成金の申請に必要な書類

キャリアアップ計画書をハローワーク等に事前申請して認定され、対象労働者に賃金を6カ月支払った翌日から2カ月以内に、支給の申請をする必要があります。

【支給申請期間の一例】
(末締め翌月15日払いの場合)

転換日 4月1日
6カ月分の賃金算定期間 4月1日~9月30日(賃金〆日)
6カ月目の賃金支払い日 10月15日
支給申請期間 10月16日~12月15日(2カ月間)

支給申請には、数多くの書類が必要です。

支給に必要な書類

  • キャリアアップ助成金支給申請書(様式第3号)
  • 正社員化コース内訳(別添様式1-1)
  • 正社員化コース対象労働者詳細(別添様式1-2)
  • 支給要件確認申立書
  • 支払方法
  • 受取人住所届
  • キャリアアップ計画書の写し
  • 就業規則や雇用契約書
  • 賃金台帳
  • 出勤簿の写し
  • 登記事項証明書

その他、ケースによって次のような添付書類も必要となります。

多様な正社員への転換又は直接雇用の場合

  • 当該正社員の雇用区分が規定されている就業規則
  • 上記以外の正規雇用労働者に適用されている就業規則
  • 転換日または直接雇用日に雇用されていた正規雇用労働者の雇用契約書等

勤務地または職務限定の正社員制度を新たに設置した場合

  • 当該正社員の雇用区分および転換制度を規定する前の就業規則

若者雇用促進法にもとづく認定事業主で、35歳未満の人を転換または直接雇用する場合

  • 基準適合事業主認定通知書の写し
  • 基準適合事業認定申請書の写し

対象労働者に母子家庭の母または父子家庭の父がいる場合

  • 母子家庭の母等の場合は①から⑦のいずれかの書類

    ①遺族基礎年金を受給している人が持つ国民年金証書
    ②児童扶養手当を受給していることの証明書類
    ③母子福祉資金貸付金の貸付決定通知書
    ④市区町村長または社会福祉事務所長による特定者資格証明書
    ⑤母子家庭の母等への手当や助成制度等の受給が確認できる書類(写)
    ⑥(1から5までの書類の用意が困難な場合のみ)児童扶養手当資格喪失通知書(写し)および母子家庭の母等申立書
    ⑦(1~6のいずれも難しい場合のみ)住民票(写)および母子家庭の母等申立書

父子家庭の父にあたるときは、上の②、④、⑤、⑥、⑦のいずれかの書類(母子家庭の母、を父子家庭の父として)が必要です。

生産性要件にかかる支給申請の場合

  • 最新の生産性要件算定シート(共通要領様式2号~2-6号)および賃貸貸借表など財務諸表の原本コピー

生産性要件が1%以上6%未満の場合は、裏面も印刷されている与信取引等に関する情報提供に係る承諾書(共通要領様式第3号)も必要です。

派遣労働者を正規または無期雇用労働者として直接雇用する場合

  • 直接雇用前の労働者派遣契約書(基本契約書および同一場所・同一業務による全期間分の個別契約書の写し)
  • 派遣先管理台帳の写し
  • 直接雇用前の賃金が確認できる給与明細等

また、直接雇用後の契約書を派遣期間の終了後に締結した場合は、内定通知書や雇用申入書など、派遣期間中に直接雇用の申し入れをしてあったことが確認できる書類(写し)の添付が必要です。

直接雇用した派遣労働者が特定紹介予定派遣労働者の場合

  • 紹介予定派遣に関する派遣契約書
  • 履歴書、職務経歴書、ジョブカード等、当人の職歴が確認できる書類

対象労働者が外国人の場合

  • 在留カードの表裏のコピー

さらにハローワーク等からこれ以外の書類の提出を求められることもあります。期間中に書類を提出するには、事前準備が必要です。

「気づいた時には申請期間が終わっていた」「期限までにすべての書類を準備できなかった」という事業主の方もいます。1日でも期間を過ぎると書類は受理されず、助成金が支給されません。社会保険労務士に依頼すれば、定期的に進捗を確認してくれるので安心です。書類準備の時間がとれない時やスケジュール管理に不安がある時は相談してみましょう。

5.就業規則、雇用契約書、給与明細書、出勤簿の労働法令違反がないこと

助成金に必要なコンプライアンス

助成金の支給を受けるには、日頃から法令遵守の労務管理を行っていることが求められます。

申請の際に提出する就業規則や雇用契約書または労働条件通知書、タイムカードまたは出勤簿、給与明細書、賃金台帳などは、ハローワーク等が対象労働者の在籍実態を把握するために必要なものです。

審査の過程で提出書類に労働法令違反が見つかれば、助成金は不支給となります。

そのため、各書類の内容には整合性がなくてはなりません。たとえば年間休日が113日とされているのに、出勤簿では明らかに休日が少ない、といったケースでは、まずその点から調査されることとなるのです。

また残業代が未払いの場合にも、助成金の審査はストップされます。未払いの残業代を清算すれば問題はないのですが、未払いの残業代額をまとめて支払うとなると、かなり高額となるでしょう。

それ以外にも、時間外手当や、休日、深夜の手当が支給されているかなど、労働基準法に違反する事項がないかも細かくチェックされます。重大な違反が発覚した場合は不支給となるので注意が必要です。

不安な点があれば事前に社会保険労務士などに相談してみるのも一つの方法です。出勤簿と賃金台帳をチェックしてもらい、問題点や改善のアドバイスをもらいましょう。

キャリアアップ助成金の注意点

キャリアアップ助成金申請時の注意点

最後にキャリアアップ助成金正社員化コースの申請における注意点について説明します。

不正受給に注意

キャリアアップ助成金 正社員化コースは、企業にとっては大きなメリットがある助成金です。そのため、受給件数は2014年~2017年にかけて約9倍に増えています。

厚生労働省 職業安定局によると、2014年度は7,474人分、2017年度は67,242人分が支給されました(平成29年度 行政事業レビューシート)。 一方で、虚偽の申請や制度を悪用して助成金を不正受給するケースも増えているため、厚生労働省は監視を強化しています。

不正受給となるケースとは

助成金の受給後すぐに対象労働者を解雇することや、すぐに正規雇用から有期雇用に戻すことは不正受給に当たります。

自己都合や天災などやむを得ない理由、懲戒解雇を除き、転換日前日の前後6カ月、合計1年間のうちに会社都合により解雇・退職勧奨した事業主は受給対象外となります。

正規雇用から有期雇用に戻した際も同様です。解雇、契約変更したにも関わらず助成金が支給されていたら、助成金を返還する必要があります。

不正受給は厳罰化されている

2019年4月より、雇用関係助成金の不正受給は厳罰化されました。不正受給と判断されると、受給した助成金の返還だけでなく違約金として20%相当額、年5%に相当する延滞金を追加で支払うことになります。

さらに、事業所名などが公表され、最低5年間は雇用保険を財源としたすべての助成金が受けられません。悪質なケースは刑事告発されるおそれもあります。

支給決定後に実地調査対象となる場合あり

助成金の支給決定にあたり、都道府県の労働局の審査官や監査官が実地調査をすることがあります。

実地調査とは、労働局の審査官らが事業所を訪問し、支給要件の確認に必要な書類(総勘定元帳などの書類や出勤簿、賃金台帳などの法定帳簿)をチェックすることです。

申請時の提出書類と社内保管の原本が照合され、助成金申請のために虚偽のコピーを提出していたことが明らかになれば、審査には通りません。

また実地調査では、書類チェックだけでなく聞き取り調査も行われます。事業主だけでなく社員も対象です。たとえば聞き取りで採用前に正社員としての雇用を約束していたことが判明し、不正受給となるケースもあります。

実地調査は、不正が疑われる事業所や匿名で告発された事業所だけに行われるものではありません。ランダムに選ばれ、予告なしに実施されることもあります。いずれにせよ調査に協力しないと不支給となります。

まとめ

助成金申請のサポートをする社労士

キャリアアップ助成金の7つのコースの中で、正社員化コースは受給金のメリットが大きいものの、申請要件が複雑で、申請書類が多いのが特徴です。

自社で申請要件の確認や申請書類の準備、申請スケジュールの管理をこなすのは大変です。また知識や経験がないと、要件を満たさず不支給になる可能性があります。

キャリアアップ助成金 正社員化コースの申請は、知識と経験のある社会保険労務士に依頼するのがおすすめです。

監修者からのコメント キャリアアップ助成金(正社員化コース)の賃金アップ要件が令和3年4月から変更になりました。 賃金アップ要件が5%から3%になります。ただし賞与は含めないこととなりましたので、注意が必要です。 当社Bricks&UKでは、キャリアアップ助成金の申請実績も多数あります。 まずはお気軽にお問い合わせください。

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