小規模事業者持続化補助金の対象は?交付の要件や活用事例を紹介

2024.09.27

よく耳にはするものの、「持続化補助金」とはどんな補助金か、自社で活用できるのかという疑問を持つ人は多いのではないでしょうか。

持続化補助金は、小規模事業者を対象に、経営持続のための販路拡大などの取り組みに補助金が下りる制度です。正式には「小規模事業者持続化補助金」といいます。

この記事では、小規模事業者持続化補助金(一般型)について、補助の対象や交付の要件、申請の流れなどをわかりやすく解説します。

小規模事業者持続化補助金とは

小規模事業者持続化補助金とは

まずは小規模事業者持続化補助金の基礎知識をおさらいします。

制度の概要

「小規模事業者持続化補助金」は、自社の経営を見直し、持続的な経営を目指して取り組みを行う小規模事業者を支援する制度です。簡単に「持続化補助金」とも呼ばれます。

平成26年に始まり、令和6年には第16回の公募が行われています。

経営計画を立て、生産性向上につながる販路開拓や業務効率化に取り組むことで、要した費用の3分の2が補助されます。

ただし、申請すれば必ず受け取れるというものではありません。

対象となる「小規模事業者等」とは

持続化補助金の対象となる「小規模事業者等」とは

この補助金の対象は、次のいずれかに該当する法人または個人事業主(商工業者)、特定非営利活動法人です。申請時点で開業済の場合のみ対象となります。

業種従業員数
商業・サービス業
(下記以外)
5人以下
宿泊業、娯楽業20人以下
製造業その他20人以下

従業員数は「常時使用する従業員」の数であり、役員や個人事業主本人と同居の親族従業員のほか、申請時点で育休や休職中の社員などは含めません。

また、上記に当てはまっても、大企業の100%出資会社や、直近の過去3年の課税所得の平均が15億円を超えている場合などは対象外です。

持続化補助金の補助対象となる事業

持続化補助金の補助対象となる事業

持続化補助金の補助対象となるのは、次のすべてを満たす事業です。

  • 経営計画を作成し、その計画に基づき実施する取り組みである
  • 販路開拓、もしくは販路開拓とともに行う業務効率化への取り組みである
  • 商工会議所または商工会の支援を受けながら取り組むものである
  • 補助事業実施期間内に終了するものである
  • 補助事業終了後、約1年以内に売上につながる見込みがある
  • 同一の取り組みについて、国による他の補助を受けていない(予定も含む)
  • マージャンやパチンコ店、性風俗関連など公的支援に不適合な事業でない

申請は、事業所のある地域の商工会議所または商工会の支援を受けて行います(非会員でも可能)。計画は、販路開拓のための取り組みであることが必須です。

国の他の補助を受けている例としては、デイサービスや介護タクシーなどで介護報酬が適用される事業や、薬局など保険診療報酬が適用される事業が挙げられます。

約1年以内に売り上げにつながる見込みがあるかどうかについては、たとえば試作品の開発のみを行い、市場での販売が1年以内に見込めないような場合は対象となりません。

持続化補助金の申請枠と主な要件

持続化補助金には、取り組みなどによって異なる複数の種類(類型)があります。第12回公募以降、次の5つが設けられています。

申請類型主な要件
通常枠・すべての枠の基本形
・経営企画にもとづき、販路開拓等の取り組みを実施
特別枠賃金引上げ枠・通常枠の取り組み
+事業場内最低賃金を地域別最低賃金より50円以上アップ
卒業枠・通常枠の取り組み
+雇用を増やして小規模事業者の定義以上の事業規模となる
後継者支援枠・通常枠の取り組み
+「アトツギ甲子園」でファイナリストまたは準ファイナリストに選出
創業枠・通常枠の取り組み
+「特定創業支援等事業」による支援を受けた日と開業日(設立年月日)が公募締切の過去3年以内

特別枠について、申請の要件をもう少し具体的に見ていきましょう。

賃金引上げ枠の申請要件

賃金引上げ枠の申請要件

賃金引上げ枠で申請するには、補助事業の終了時点での事業場内最低賃金が、申請時の地域別最低賃金より50円以上上回っていることが条件です。

事業場内最低賃金がすでに地域別最低賃金より50円以上高い場合は、申請時点の賃金より50円以上アップさせる必要があります。

補助事業終了時に50円以上の賃金引上げが行われていない場合は、補助金自体が受けられないので注意が必要です(通常枠での補助も不可)。

また、当然ながら、どの時点でも事業場内最低賃金は地域別最低賃金以上でなくてはなりません。

直近1期または1年間の課税所得が0以下の場合、赤字事業者として補助率が引き上げられます(補助率は次章)。

卒業枠の申請要件

卒業枠で申請するには、補助事業の終了時点で「常時使用する従業員の数」が小規模事業者の定義以上の人数となっている必要があります。

小規模事業者の定義は前述のとおり業種により異なります。たとえば宿泊業であれば20人以上に増やすことが要件です。

卒業枠で採択され事業を実施すると、以降この補助金は対象外となります。

補助事業終了時にこの要件を満たしていない場合は、補助金自体が受けられないので注意が必要です(通常枠での補助も不可)。

後継者支援枠

持続化補助金の後継者支援枠とは

後継者支援枠では、申請時点で、中小企業庁主催の「アトツギ甲子園」のファイナリストまたは準ファイナリストとなった事業者であることが要件です。

「アトツギ甲子園」とは、既存の経営資源を活かし、39歳以下の中小企業後継者が新規事業のアイデアを競い合うイベントです。2024年3月には第4回の決勝大会が行われています。

創業枠

持続化補助金の創業枠とは

「創業枠」での申請は、「特定創業支援等事業」による支援を受けた日と開業日(法人の場合は設立年月日)の両方が公募締切日から起算して過去3年のうちでなくてはなりません。

「特定創業支援等事業」とは、産業競争力強化法にもとづいて「認定市区町村」または「認定市区町村と連携した認定連携創業支援等事業者」が実施するものです。この事業の対象となるのは、新規創業または創業後5年未満の人です。

創業枠で採択され、事業を実施した場合、以降は創業枠での申請はできません。代表者を変えるなどした場合でも対象外となります。

持続化補助金の補助率・補助上限額

持続化補助金の補助率・補助上限額

小規模事業者持続化補助金の補助率と補助上限額は次の通りです。

類型補助率補助上限額
通常枠3分の250万円
賃金引上げ枠3分の2
※赤字事業者は4分の3
200万円
卒業枠3分の2
後継者支援枠
創業枠

また、過去の特定期間内に免税事業者だった、もしくは令和5年10月1日以降に創業した人のうち、インボイス登録を行った場合は、「インボイス特例」として上限が50万円高く設定されます。

持続化補助金の補助対象となる経費・ならない経費

補助金の額は、取り組みに要した経費に補助率をかけて算出します。対象となる経費と、対象にならない経費を順に見ていきましょう。

補助対象となる経費

持続化補助金の補助対象となる経費

対象となるのは次のような経費です。

補助対象
経費科目
活用事例
機械装置等費補助事業に必要な製造装置などの購入
広報費新サービスを紹介するチラシ作成・配布、看板の設置など
ウェブサイト関連費ウェブサイトやECサイトの開発、構築、更新、改修、運用など
展示会等出展費展示会・商談会の出展料など
旅費販路開拓のための移動
新商品開発費新商品の試作開発などにともなう経費
資料購入費補助事業に関する資料や書籍の購入など
借料機器設備などのリース・レンタル
(所有権が移らないもの)
設備処分費新サービスのためのスペース確保にともなう設備の処分など
委託・外注費店舗改装など、自社での実施が困難な業務の第三者委託(契約が必須)

ただし、ウェブサイト関連費と設備処分費については、次の項「補助対象とならない経費」も確認しておいてください。

補助対象とならない経費と注意点

持続化補助金の補助対象とならない経費

次のような経費、申請は補助の対象外です。

  • 車やバイク、文房具やPCなど、汎用性が高く目的外利用を疑われるもの
  • ウェブサイト関連費のみでの申請
  • 設備処分費のみでの申請
  • 10万円を超える現金での支払い(一括・分割とも)
  • 相殺、小切手、商品券などによる支払い
  • 補助事業実施期間を過ぎた日付の口座引き落とし
  • オークションによる購入や個人からの購入
  • 税抜き50万円以上の中古品の購入
  • コンサルティングや相談・アドバイスの費用

経費の支払いは原則として「銀行振り込み」でなくてはならず、10万円を超える現金での支払いは補助の対象となりません。

ウェブサイト関連費は、補助金の交付申請額または補助金総額の4分の1かつ50万円が上限です。設備処分費も、補助対象経費の総額の2分の1が限度です。

また、税込み100万円を超える支払いは2者以上からの見積もりを取らねばなりません。中古品の場合は50万円未満でなくてはなりませんが、すべて相見積もりが必須です。

小規模事業者持続化補助金の申請の流れ

小規模事業者持続化補助金の申請の流れ

小規模事業者持続化補助金の申請手続きは、次のように進めます。

  • 1)公募要領などの確認
  • 2)GビズIDアカウント等の取得
  • 3)経営計画書・補助事業計画書の作成
  • 4)商工会・商工会議所に「事業支援計画書」の交付を依頼
  • 5)交付申請書類を補助金事務局に送付
  • 6)審査→採択・不採択の決定
  • 7)採択→交付決定
  • 8)補助事業の実施
  • 9)実績報告書の提出
  • 10)確定検査・補助金額の確定
  • 11)補助金の請求
  • 12)補助金の入金
  • 13)事業効果報告(補助事業完了から1年後)

順に説明します。

1)公募要領などの確認

補助金は、交付の要件を満たしていなかったり、申請書類の不備があったりすると採択されません。公募要領も、各回で改定などが行われています。

まずは申請する回の公募要領や参考資料などを読み込み、採択の可能性を高めましょう。

2)GビズIDアカウントの取得

第16回公募から電子申請のみでの受付となりました。申請は「GビズIDプライム」または「GビズIDメンバー」のアカウントで行うため、申請前に登録が必要です。

アカウント取得には数週間ほどかかるので、早めに利用登録をしておきましょう。

3)「経営計画」「補助事業計画」の作成

申請には「経営計画書」と「補助事業計画書」の提出が必須です。決まった様式はありますが、紙ではなく電子申請システムに入力をします。

計画書の書き方などについては、商工会議所または商工会に相談可能です。ただし相談や次項の書類の発行依頼を社外の代理人のみに任せることはできません。

4)「事業支援計画書」の交付を依頼

申請には、商工会議所または商工会による「事業支援計画書」の提出も必須です。

前項で作成した「経営計画書」と「補助事業計画書」の内容を印刷し、希望枠などに関する必要書類を用意します。それらを地域の商工会議所または商工会に提出し、「事業支援計画書」の発行を依頼します。

「事業支援計画書」の発行は、公募締切の1週間前に締め切られるので注意が必要です。

5)交付申請書類を補助金事務局に送付

電子申請システムを通じて、申請書や事業計画、事業支援計画書や、直近1期分の貸借対照表と損益計算書などを提出します。

申請枠によって、たとえば賃金引上げ枠は直近1カ月の賃金台帳や雇用契約書などの写し、赤字事業者の場合は法人税申告書の写しなどが必要です。

6)審査→採択・不採択の決定

申請内容は、有識者により審査されます。

必要書類が揃っているかの確認や、経営状況や自社の強みを適切に把握した上で、具体的かつ実現性の高い計画となっているかなどがチェックされます。

7)採択→交付決定

審査が終わり、採択案件が決まれば、公表され、「採択通知書」が届きます。採択の発表までは、受付締切から2~3カ月かかります。しかしこの時点ではまだ設備機器などの発注・契約、支払いなどは行わず、交付決定を待ちます。

採択され、「5」で提出した申請書に不備などがなければ、「補助金交付決定通知書」で交付決定が通知されます。

採択決定後であっても、交付決定通知を受ける前に行ったものは補助対象外となるので注意が必要です。

8)補助事業の実施

「補助金交付決定通知書」を受けたら、提出した補助事業計画に沿って、必要な設備機器などの発注・契約などを行います。事業は期限までに完了しなくてはなりません。

実施期限の延長は認められません。また、補助事業の内容や経費の配分などを変更する場合には、計画変更を申請する必要があります。

9)実績報告書の提出

補助事業が終了したら、終了日から30日後または最終提出期限のいずれか早い日までに「実績報告書」を提出します。実績報告書には、実施した補助事業の内容と支出した経費の内訳をまとめます。

最終締切までに提出しないと補助金は支払われないので要注意です。

10)確定検査・補助金額の確定

「実績報告書」や、見積書や領収書など支出の証拠書類について事務局が審査を行い、補助金額が決まります。場合によっては、現地調査が行われる場合も。

報告書や書類の内容に不備があると、修正や追加書類の提出を求められます。

11)補助金の請求

補助金額が確定したら、「補助金確定通知書」が届きます。金額を確認して、「精算払い請求」を行います。

12)補助金の入金

精算払い請求後、数週間で口座に補助金が振り込まれます。振込完了の連絡はないため、通帳記帳などで確認しなくてはなりません。

13)事業効果報告

補助事業の完了から1年後、「事業効果および賃金引上げ等状況報告」を提出します。指定の「事業効果等状況報告期間終了日」の翌日から30日以内にしなくてはなりません。

賃金引上げ枠や卒業枠での申請を行った場合、その状況についても報告する必要があります。必要に応じて、賃金台帳や労働者名簿の写しなどを求められることがあります。

持続化補助金申請の注意事項

最後に、持続化補助金を申請する際の注意事項を見ておきましょう。

補助金は後払いでまずは自己負担

補助金は後払いとなるため、販路開拓に向けた取り組みにかかった費用はまず自己負担しなければなりません。

「まず補助金を受け取り、そのお金で事業をする」という流れではないので注意が必要です。

代理申請は一切認められない

申請は、申請者自身が電子申請システムを利用して行わねばなりません。

専門家などによる代理申請は不正アクセスと見なされ、不採択となるだけでなく、それ以降の公募申請ができなくなる恐れがあります。

悪質な業者の高額なアドバイス料に注意

申請手続きは申請者本人のみですが、申請にあたって認定支援機関や補助金申請のコンサルティング会社などからアドバイスを受けることは可能です。

しかし一部、高額なアドバイス料を請求したり、補助金の趣旨に沿わない申請をし、不採択でもアドバイス料の支払いを求めたりするようなケースがあるので注意してください。

ちなみに、有償・無償にかかわらず、第三者のサポートを受ける場合は申請時にその相手の名称や金額を確認事項に入力しなくてはなりません。記載しなければ虚偽の報告として不採択となってしまいます。

必要書類や期限は厳守

必要書類は必ずすべて揃える必要があります。不足を指摘されても提出しない場合、補助金は受けられません。

また、公募回ごとに、申請受付の締め切りや事業実施の期間、実績報告書の提出期限などが指定されます。遅れた場合も補助金は支払われません。

補助金や助成金の申請サポートはBricks&UKにおまかせ

補助金や助成金の申請サポートはBricks&UKにおまかせ

持続化補助金は、持続的な経営のために販路の開拓や業務効率化を図る小規模事業者を対象とした助成金です。

毎回多くの企業が申請していますが、採択率は低く、第16回では40%にも満たない結果となりました。

この記事で紹介したように、持続化補助金の交付には複数のハードルがあります。当サイトを運営する「Bricks&UK」では、雇用関連の助成金のほか、母体である税理士法人による補助金申請のサポートも可能です。

実績豊富で信頼のおける専門家をお探しなら、ぜひ一度ご相談ください。

監修者からのコメント 持続化補助金は中小企業に広く使われている補助金です。
近年では要件が厳しくなりましたが、それでも使いやすい補助金の1つでしょう。

初めて補助金の利用を検討されている方にもおすすめですので、是非ご検討ください。

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