ものづくり補助金をわかりやすく解説!対象や要件、注意点とは

2024.09.03

ものづくり補助金をわかりやすく解説

ものづくり補助金は、働き方改革や社会保険の適用拡大、インボイス制度の導入や最低賃金の引き上げといった社会の変化に大きな影響を受ける中小企業や小規模事業者を支援する制度です。

補助金の交付を受けるには、自社の課題解決に直結する設備投資などを適切に行い、手続きのルールを守ることが不可欠です。

この記事では、ものづくり補助金について、制度内容や補助対象、申請の流れや注意点についてわかりやすく解説します。

ものづくり補助金とは?制度の概要と基礎知識

ものづくり補助金の制度の概要と基礎知識

まずは「ものづくり補助金」とはどんな補助金なのかをおさらいしておきましょう。

制度の概要

「ものづくり補助金」は、革新的な商品やサービスの開発、生産プロセスの改善をするための設備投資を支援する補助金です。中小企業を補助の対象としています。

経済産業省(中小企業庁)が管轄しており、正式名称は「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」です。

ちなみにものづくり補助金は、実際に要した費用を補助するいわゆる後払いであり、返済は不要です。

補助の大まかな流れ

まずは、補助対象となる設備投資などの事業計画書を提出して応募します。応募企業の中からより優れた事業計画書を作成した企業が、「補助金交付候補者」として採択されます。

採択され、交付が決まったら、計画に沿って設備投資などを実施し、終了後に実施報告書を提出します。その内容が審査され、補助金額が決定します。

補助金が下りた後も、計画期間内は状況報告を行う必要があります。詳しい流れは後の章でも紹介します。

公募回と公募締切

公募は通年で受け付けていますが、1次・2次…と公募回を区切った締め切りがあります。

例年、前年度の補正予算によって実施されているため、回数などは毎年異なります。公募要領も締切ごとに公表され、補助対象などが変わることもあります。

最新では、令和5年度の補正予算による18次の締め切りは令和6年3月27日で、令和6年6月25日には採択結果が発表されています。

令和5年度の補正予算での公募はこれで終了しているため、これ以降は令和6年度の補正予算の決定を待つことになります。

公募スケジュールは随時発表されるので、常に最新情報を確認してください。

公募スケジュール|ものづくり補助金総合サイト(公式サイト)

ものづくり補助金の種類(枠と類型)

ものづくり補助金の種類(枠と類型)

ものづくり補助金には、補助対象となる事業の種類ごとに、異なる枠や類型があります。

18次では、次の3つの枠と2つの類型が設けられています。

枠・類型補助対象
省力化(オーダーメイド)枠・人手不足解消のための設備投資
・デジタル技術等を活用したオーダーメイド設備の導入などによる革新的な製品・サービスの開発生産プロセスやサービス方法の改善のために必要な設備・システムへの投資
製品・サービス
高付加価値化枠
通常類型・革新的な製品・サービス開発に必要な設備・システムへの投資
成長分野進出類型(DX-GX)今後の成長が見込まれる分野(DX・GX)に役立つ革新的な製品・サービスの開発に必要な設備・システムへの投資
グローバル枠・海外事業により国内の生産性を高めるために必要な設備・システムへの投資

単に新たな設備やシステムを導入するだけでは、補助対象となりません。導入した設備・システムと自社の技術力を活かした製品・サービスの開発を行うことが必要です。

「革新的な~」とは消費者に新たな価値を提供することを指し、すでに普及しているものは対象外です。

グローバル枠の「海外事業」には、海外への直接投資のほか、輸出による海外市場の開拓、インバウンド対応の事業や海外企業との共同事業が当てはまります。

補助の要件と対象経費

ものづくり補助金の補助要件と対象経費

補助を受けるために必須な基本要件や対象経費を見ていきましょう。

ものづくり補助金の基本要件

この補助金の対象は、中小企業や小規模事業者(個人事業主含む)です。また、次の3つの基本条件すべてを満たす3年~5年の事業計画を策定する必要があります。

  • 付加価値額の増加…年平均成長率+3%以上増加させる
  • 給与支給総額の増加…年平均成長率+1.5%以上増加させる
  • 事業場内最低賃金の増加…地域内最低賃金+30円以上とする

「付加価値額」とは、「営業利益+人件費+減価償却費」を指します。

補助対象となる経費

上記基本要件を満たす事業計画の実行に要した、次のような費用が補助の対象です。

  • 機械装置・システム構築費(必須)
  • 技術導入費
  • 専門家経費
  • 運搬費
  • クラウドサービス利用費
  • 原材料費
  • 外注費
  • 知的財産権等関連経費

※以下グローバル枠のみ

  • 海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費

これらの費用に対し、枠・類型ごとに決められた補助率をかけた額が助成されます。ただし、補助には上限もあります。

また、これらの経費を使って設備投資などを実施して補助金を受けたとしても、計画期間内に上記の基本要件3つを満たせなかった場合には、支給された補助金を返還しなくてはなりません。

補助率と補助の上限額

18次ものづくり補助金の補助率と補助額は、次のとおりです。上限額は、従業員規模により異なります。

枠・類型補助上限額補助率
省力化(オーダーメイド)枠5人以下750万円中小企業:1/2
小規模・再生:2/3
※補助金額1500万円超の部分は1/3
6~20人1500万円
21~50人3000万円
51~99人5000万円
100人以上8000万円
製品・サービス高付加価値化枠通常類型5人以下750万円中小企業:1/2
小規模・再生:2/3
新型コロナ回復加速化特例:2/3
6~20人1500万円
21人以上1250万円
成長分野
進出類型
5人以下1000万円2/3
6~20人1500万円
21人以上2500万円
グローバル枠3000万円中小企業:1/2
小規模・再生:2/3

補助事業の実施後3~5年で大幅な賃上げ(年平均成長率+6%以上)を達成した場合は、上限が上記より100万円~2000万円引き上げられます。

ものづくり補助金の申請手続きの方法と流れ

ものづくり補助金の申請は、電子申請のみで受付しています。

まずはGビズIDプライムのアカウントを取得しなくてはなりません。申請は、デジタル庁による補助金電子申請システム「jGrants(Jグランツ)」を利用して行います。

  • 1)公募要領の確認
  • 2)「gBizID(GビズID)プライム」アカウントの取得
  • 3)事業計画書など書類の作成
  • 4)公募申請→審査→採択結果の決定・通知
  • 5)交付申請→審査→交付決定
  • 6)設備投資など補助事業の実施→中間検査
  • 7)事業実績報告書の提出→確定検査・交付額の確定
  • 8)補助金の請求→支払い
  • 9)事業化状況報告・知的財産権報告

このように、審査や検査など複数のステップを経て補助金が支払われます。さらに支払われた後も、状況報告などをしなくてはなりません。

事業化状況報告は、事業計画の3~5年のあいだ毎年提出する必要があります。

ものづくり補助金の活用事例

ものづくり補助金の活用事例

経済産業省のウェブサイト「ミラサポplus」では、ものづくり補助金の活用事例を探すことができます。その中から、2つの事例を要約して紹介します。

共働ロボットを導入した機器メーカー

香川県のあるメーカーでは、安全柵のいらない共働ロボットを導入しました。

これにより、熟練者は付加価値の高い難加工に専念できるようになったほか、作業時間の短縮により経験の浅い作業員への技術指導や教育訓練を行えるように。

生産性の向上と人手不足の解消につながる技術者の育成、この双方が可能となる仕組みづくりが可能になりました。

出典:中小企業庁「ミラサポplus」(事例ナビ)掲載の活用事例を当サイトにて要約

アパレルCADを導入した縫製会社

岡山県のある縫製会社では、アパレルに特化したCADを導入しました。

これにより、パターンチェックのスキルを見える化し、縫製のみ担当していた従業員や新入社員の多能工化が図れるように。同社はこれまでも納期厳守を強みとしていましたが、作業時間の大幅短縮によってさらなる納期短縮が可能となりました。

また、オリジナル製品の開発によって県外からも若手人材を獲得できるようになったほか、消費者の声を早い段階で製造担当に伝える仕組みを構築したことで、従業員のモチベーションアップも実現しています。

出典:中小企業庁「ミラサポplus」(事例ナビ)掲載の活用事例を当サイトにて要約

ものづくり補助金申請の注意点

ものづくり補助金申請の注意点

ものづくり補助金を受けるには、いくつか注意しておきたいことがあります。ここでは特に注意が必要な3点について解説します。

採択イコール交付確定ではない

補助金を受けるには、まず事業計画書が採択されなくてはなりません。とはいえ、採択されたことは、あくまで補助金の「交付候補者」となったにすぎません。

事業実施報告の内容や基本要件の達成状況によっては、補助対象とならない可能性があるほか、要した費用の一部もしくは全額が保障対象外と見なされるケースもあります。その場合、受け取り後でも返還しなくてはなりません。

採択前の設備投資などは対象にならない

すでに設備投資を行った後の申請や、事業計画書の提出後、採択決定前に行った設備投資については、補助の対象外です。

前述の申請の流れや公式サイトを確認して、タイミングを間違えないようにしてください。

不正受給は懲役や罰金のおそれあり

近年、補助金の不正受給が大きな問題となっています。虚偽の申請や目的外の利用、受給額の不当な釣り上げといった行為は不正ですので、絶対にやめましょう。

不正行為が判明した場合、交付決定の取消はもちろん、交付済みでも補助金の返還が求められ、加算金も課されます。

不正内容が公表されることで、事業主や企業の信用失墜につながります。悪質な場合は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金、もしくはその両方に処せられるおそれもあります。

補助金の申請も「Bricks&UK」におまかせ

補助金申請もBricks&UKにおまかせ

ものづくり補助金は、革新的な製品やサービスの開発、生産プロセスなどの改善で生産性向上を図るための設備投資に活用できる補助金です。

交付を受けるには、まず事業計画を立てて採択される必要があります。交付決定を受けて補助金が受けられても、事業実施内容によっては返還を求められる可能性があるなど、手続きの各ステップで細心の注意が必要であり、自社のみでの申請は簡単ではありません。

当サイトの運営会社「社会保険労務士事務所Bricks&UK」では、税理士や司法書士、行政書士といった専門家とも連携してさまざまな経営サポートを行っています。

監修者からのコメント ものづくり補助金は応募件数が多く、中小企業に人気の高い補助金です。採択率は年度によって異なりますが、30~40%となります。
毎年のように申請の枠や要件が変動いたしますので、申請を検討されている方は注意が必要です。

弊社Bricks&UKでは総合事務所として、助成金だけではなく補助金のご相談をお受けする事も可能でございます。
申請をお考えの方はお気軽にご相談くださいませ。

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