「若手社員の離職防止のため、研修を充実させたい」
「社内の人材だけではマネジメントスキルを教えられない」
貴社でもこういった悩みを抱えてはいませんか?
経団連の調査によると、自社の人材育成が「環境変化に対応できていない」と考える企業は、全体の88.8%にものぼります(2020年「人材育成に関するアンケート調査結果」/(一社)日本経済団体連合会)。
問題とする内容も多岐にわたります。たとえばリモートワークや男性の育休などについて管理職の意識改革を行うことや、デジタル技術の進展にともないIT研修を行う必要性など。
製造業では、熟練工の高齢化で人数が減り、若手への技術伝承が困難になるケースも少なくありません。
しかし、人を育てるにもお金がかかるもの。このような場合に検討したいのが、人材開発支援助成金です。
目次
人材開発支援助成金とは?
人材開発支援助成金は、人材育成に取り組む事業主を支援する助成金です。
労働者のスキルアップを促進するため、職場外研修(Off-JT )や職場内訓練(OJT)を受けさせた際の経費や研修期間中の賃金の一部の助成が受けられます。
また、一部のコースでは現在の職務に関連した訓練だけではなく、他業種に転換した後の職務に関する訓練も助成対象です。
さらに令和3年4月の制度改正により、コースによっては通信講座やe-ラーニングによる研修も助成金の対象となるなど、より利用しやすくなりました。
キャリアアップ助成金との主な違い
人材開発支援助成金とよく似た助成金に「キャリアアップ助成金」がありますが、2つの助成金の主な違いは、対象となる労働者と、助成に必要な取り組みの内容です。
対象となる労働者の違い
人材開発支援助成金は一部のコースを除けば雇用形態などに条件がないのに対し、キャリアアップ助成金は非正規労働者を対象としています。
助成金の種類 |
対象となる労働者 |
---|---|
人材開発支援助成金 |
雇用保険の被保険者 (コースによっては有期契約労働者、短時間労働者および派遣労働者を除く) |
キャリアアップ助成金 | 有期雇用労働者、短時間労働者、派遣労働者などの非正規労働者 |
対象となる取り組み内容の違い
人材開発支援助成金は、対象者に専門的な知識やスキルを習得させることが受給の主な要件です。キャリアアップ助成金は、非正規労働者の賃上げや処遇の改善を行った事業主に支給されます。
助成金の種類 | 主な支給要件 |
---|---|
人材開発支援助成金 | 職務に関連した専門的な知識や技能の習得 |
キャリアアップ助成金 | 非正規労働者を正規雇用労働者等に転換、あるいは賃金や諸手当などの待遇改善 |
正社員として雇用している人に対してスキルアップなどを図りたい場合に使えるのが、人材開発支援助成金です。
人材開発支援助成金の7つのコースを紹介
人材開発支援助成金は、研修の内容や対象となる労働者によって7つのコースに分けられています。
コースごとに取り組みの内容が異なるため、それぞれの企業や労働者の実情に合ったコースが選べます。自社がどのコースを選ぶべきかわからなければ、ハローワークか社会保険労務士に相談してみましょう。
それぞれのコースの概要を見ていきます。
1.特定訓練コース
特定訓練コースは、労働生産性向上訓練や若年人材育成訓練など6種類の訓練が対象です。
事業内訓練または事業外訓練として計画された、効果が高い特定の訓練を10時間以上実施した場合や、事前に厚生労働大臣の認定を受けた実習併用職業訓練(認定実習併用職業訓練)を実施した場合に助成金が受けられます。
2.一般訓練コース
一般訓練コースは、職務に関連する専門知識および技能を習得させるための訓練(特定訓練コースに該当しないもの)が対象です。
実訓練時間数が20時間以上のOff-JTにより実施される事業内訓練または事業外訓練を行った場合に、経費と賃金の一部が助成されます。
このとき、労働協約、就業規則または事業内職業能力開発計画のいずれかで「定期的なキャリアコンサルティングの機会の確保」を定めていることも条件です。
3.特別育成訓練コース
特別育成訓練コースは、パートやアルバイトなどの有期契約労働者に対する訓練が対象です。
有期契約労働者の正社員への転換や処遇の改善を目的として、計画に沿った訓練を行った場合に経費と賃金の一部が助成されます。対象となる訓練は、一般職業訓練・有期実習型訓練・中小企業等担い手育成訓練のいずれかです。
4.教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースは、事業主が新たに教育訓練休暇制度を導入して行った訓練を対象としています。
「教育訓練休暇」とは、事業主以外が行う教育訓練、各種の検定やキャリアコンサルティングを受けるために必要な休暇をいいます。
制度を導入し、実際に労働者に教育訓練休暇を与えた事業主に、制度の導入経費や訓練期間中の賃金の一部が助成されます。
5.建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースは、中小建設事業主および中小建設事業主の団体を対象としたコースです。
このコースは、人材開発支援助成金の特定訓練コース・一般訓練コース・特別育成訓練コースのいずれかの支給決定を受けた事業主が対象となる、いわゆる上乗せとなる制度です。
認定職業訓練または指導員訓練のうち、建設関連の訓練を実施した場合に経費と賃金の一部が助成されます。
6.建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、中小建設事業主および中小建設事業主の団体が対象です。
中小建設事業主等が自社で雇用する建設労働者に、キャリアに応じた建設関連の技能実習を有給で受講させた場合に、経費と賃金の一部が助成されます。
女性の建設労働者に技能実習を行う場合は、事業主の規模を問いません(ただし経費助成のみの支給)。
7.障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースは、障害者に対して職業能力開発訓練事業を実施する事業主や学校法人、社会福祉法人などが対象です。
障害者の雇用の維持・促進を目的として、障害者に対して職業に必要な能力を開発、向上させるための障害者職業能力開発訓練を行う場合に助成金が受けられます。
また、訓練を実施するための施設や設備を設置する、整備・更新をする費用も助成の対象です。
人材開発支援助成金の各コースの助成額・助成率
人材開発支援助成金は、コースごとに助成額および助成率が異なります。
また、訓練によって企業の生産性が向上したと認められる場合は、別途申請の上で助成金の割増し分を追加受給できます。
特定訓練コース・一般訓練コース
特定訓練コース・一般訓練コースの助成率および助成額は次のとおりです。
経費助成 | 賃金助成 (1人1時間あたり) |
OJT実施助成 (雇用型訓練のみ) (1人1時間あたり) |
|||||
---|---|---|---|---|---|---|---|
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | ||
特定訓練コース | Off-JT | 45% (60%) |
30% (45%) |
760円 (960円) |
380円 (480円) |
― | ― |
OJT | ― | ― | ― | ― | 665円 (840円) |
380円 (480円) |
|
一般訓練コース | Off-JT | 30% (45%) |
380円 (480円) |
― | ― |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給率あるいは支給額
賃金助成の上限は、1人あたり1,200時間(一部1,600時間)、OJT実施助成の上限は680時間です。
経費助成には、訓練時間ごとに次の表のような上限金額が定められています。細かな条件はハローワークか社会保険労務士に確認してください。
訓練時間 | 経費助成の上限 | |||||
---|---|---|---|---|---|---|
20時間以上(※) 100時間未満 |
100時間以上 200時間未満 |
200時間以上 | ||||
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | |
特定訓練コース | 15万円 | 10万円 | 30万円 | 20万円 | 50万円 | 30万円 |
一般訓練コース | 7万円 | 15万円 | 20万円 |
※特定訓練コース・育休中の訓練は10時間以上から
また、特定訓練コースのうち下記の場合は、経費助成の助成率が下の表の内容になります。
支給対象となる訓練 | 経費助成 | ||
---|---|---|---|
中小企業 | 大企業 | ||
特定訓練コースのうち、 特定分野認定実習併用職業訓練 セルフ・キャリアドック制度導入企業 |
Off-JT | 60% (75%) |
45% (60%) |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給率
特別育成訓練コース
特別育成訓練コースは、支給額の算定がOff-JTとOJTで分かれています。
まずはOff-JT分の支給額から見ていきましょう。
支給対象となる訓練 | 賃金助成 (1人1時間あたり) |
経費助成 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
20時間以上 100時間未満 |
100時間以上 200時間未満 |
200時間以上 | ||||||
中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | 中小企業 | 大企業 | |
一般職業訓練 有期実習型訓練 |
760円 (960円) |
475円 (600円) |
10万円 | 7万円 | 20万円 | 15万円 | 30万円 | 20万円 |
中長期的キャリア形成訓練 | 15万円 | 10万円 | 30万円 | 20万円 | 50万円 | 30万円 | ||
中小企業等担い手育成訓練 | ― | ― | ― |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給額
Off-JT分は、賃金助成の上限は1人あたり1,200時間(中長期的キャリア形成訓練は1,600時間)です。
また、育児休業中に訓練を受ける人は10時間以上から経費助成を受けられます。
この他にも細かい条件がありますので、詳しくはハローワークもしくは社会保険労務士に確認してください。
OJT分の支給額は次のとおりです。
支給対象となる訓練 | 実施助成(1人1時間あたり) | |
---|---|---|
中小企業 | 大企業 | |
有期実習型訓練 中小企業等担い手育成訓練 |
760円 (960円) |
665円 (840円) |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給額
OJT分は、実施助成の上限は1人あたり680時間(中小企業担い手育成訓練は1,020時間ただし訓練計画届に記載される資格等を取得できない場合は680時間)です。
教育訓練休暇付与コース
教育訓練休暇付与コースは、教育訓練休暇が数日間の「教育訓練休暇制度」と、教育訓練休暇が数カ月の「長期教育訓練休暇制度」に分かれています。
支給対象となる訓練 | 賃金助成 (1人1日あたり) |
経費助成(※1) |
---|---|---|
教育訓練休暇制度 | ― | 30万円 (36万円) |
長期教育訓練休暇制度 | 6,000円 (7,200円) |
20万円 (24万円) |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給額
※1:「教育訓練休暇制度」の場合は制度導入・実施助成
長期教育訓練休暇制度は、有給による休暇取得に対する賃金助成となり、最大150日分が上限です。無給の場合は助成の対象外です。
この他にも細かい条件があります。厚労省のパンフレットや、ハローワークもしくは社会保険労務士に確認してください。
建設労働者認定訓練コース
建設労働者認定訓練コースの経費助成は、広域団体認定訓練助成金または認定訓練助成事業費補助金で助成対象経費とされた額をもとに計算されます。
また、賃金助成の支給上限額は、支給申請日を基準とし、1事業年度あたり1,000万円です。
支給対象となる訓練 | 経費助成 | 賃金助成 (1人1日あたり) |
---|---|---|
建設労働者認定訓練コース | 助成対象経費の1/6 | 3,800円 (4,800円) |
※表のカッコ内は生産性要件を満たした場合の支給額
建設労働者技能実習コース
建設労働者技能実習コースは、雇用保険被保険者の人数や対象労働者の年齢・性別で助成率が変わります。
対象事業所 | 経費助成率 | 賃金助成 (1人1日あたり) |
|
---|---|---|---|
雇用保険被保険者数 20人以下 |
3/4 | 8,550円 (9,405円)※1 |
|
雇用保険被保険者数 21人以上 |
35歳未満 | 7/10 | 7,600円 (8,360円)※1 |
35歳以上 | 9/20 | ||
女性建設労働者※2 | 3/5 | ― |
※1:カッコ内は、建設キャリアアップシステム技能者情報登録者の場合の助成額
※2:中小建設事業主以外の建設事業主が自ら雇用する女性建設労働者に技能実習を行う場合の助成率
経費助成は、1つの技能実習について、1人あたり10万円までが上限です。
賃金助成は、1日3時間以上受講した日の20日分まで助成されます。
また、生産性要件を満たす場合は、次のように助成額の割増が受けられます。
- 経費助成…支給対象費用の20分の3
- 賃金助成(雇用保険被保険者数20人以下)…2,000円/日
- 賃金助成(雇用保険被保険者数21人以上)…1,750円/日
なお、1事業所の経費助成、賃金助成および生産性向上助成を合わせた支給上限額は、支給申請日を基準とし、1事業年度あたり500万円です。
障害者職業能力開発コース
障害者職業能力開発コースの助成額は、取り組み別に2つに分かれています。
施設や設備の設置、整備などを行った場合の助成内容は次のとおりです。
助成割合 | 訓練科目ごとの助成上限額 | |
---|---|---|
初めて助成金の対象となる場合 | 施設又は設備の更新 | |
3/4 | 5,000万円 | 1,000万円 (累積上限額) |
助成金を受けるのが初めての場合は、上限額が高く設けられています。
運営費についての助成は、訓練時間のうち受講をした時間や、対象者の障害の程度などによって次のように異なります。
対象となる訓練 | 運営費助成 | |
---|---|---|
重度障害者等を対象とする障害者職業能力開発訓練額 (上限:月額17万円) |
訓練時間の8割以上を受講 | 1人あたりの運営費の4/5 |
訓練時間の8割未満の受講 | 1人あたりの運営費の4/5 × (受講時間数/訓練時間数) |
|
上記以外の障害者を対象とする障害者職業能力開発訓練 (上限:月額16万円) |
訓練時間の8割以上を受講 | 1人あたりの運営費の3/4 |
訓練時間の8割未満の受講 | 1人あたりの運営費の3/4 × (受講時間数/訓練時間数) |
|
重度障害者等が就職した場合 | 就職者1人あたり10万円 |
障害者職業能力開発コースは、対象となる障害や訓練時間の計算などの申請内容が複雑です。手続きは社会保険労務士に相談するなどして進めていきましょう。
参考にしたい!人材開発支援助成金の活用事例
人材開発支援助成金は、業界を問わずあらゆる企業に実際に活用されています。その一部、3件の実例を紹介しますので、同じような課題や状況がある場合にはぜひ申請を検討してみてください。
ケース1:株式会社P(美容室経営)
背景となった状況 | スタイリストデビューに向け、アシスタントに対する知識面・技術面の指導を実施していた |
---|---|
課題 | いかに早くアシスタントに実践的知識や経験を身に付けさせ、スタイリストとしてデビューさせられるか |
教育訓練の内容 | 店長を講師とした店内訓練 訓練期間:6カ月 訓練時間:1人あたりOJT570時間、Off-JT140時間 |
受給額 | 約50万円/月 |
訓練による効果 | 研修・訓練内容の均一化・明確化により、今後の育成計画が立てやすくなった |
今後の展望 | 対象者を、新卒だけでなく中途採用にも広げたい |
スタイリスト(美容師)という専門的な職種ですが、学校を卒業したばかりでは、知識や経験がおぼつかないことが多く、スタイリストとして一人前になるまでの教育が課題となっていたとのこと。
助成金活用により教育のしくみを改めて整えることができ、効率的な教育が行えるようになりました。
ケース2:S株式会社(情報通信業)
背景となった状況 | 繁忙期と閑散期の差が激しく、既存社員による研修の質にバラつきが生じていたため、外部機関への委託を考えていた |
---|---|
課題 | 研修の質の均一化 |
教育訓練内容 | 外部機関を利用した業務知識の研修 訓練時間:1人あたり135時間 対象者:2名 |
受給額 | 659,600円 |
訓練による効果 | 新入社員に対し、一定水準の研修を安定的に行うことができるようになった |
今後の展望 | 継続して実施したい |
この企業では、従来は社内のリソースのみを頼りとしていましたが、業務の繁閑の差が激しく、繁忙期に行う教育とそれ以外での質の差が課題となっていました。
助成金を活用して外部のリソースを活用することにより、社内の業務に支障をきたすことなく安定した教育環境を整えることができたとのことです。
ケース3: K鉄工所(鉄鋼加工業)
背景となった状況 | 高度な品質を担保すべき業務のため、新卒者や未経験の中途採用者への教育の充実を考えていた |
---|---|
課題 | 高い技能を自社でいかに育てられるか |
教育訓練内容 | 外部機関による機械操作の技能研修 訓練時間:15時間~30時間 |
受給額 | 1コース9,000円~50,000円程度 |
訓練による効果 | 高品質を担保した製品の納品により、顧客からの安定的な受注を確保 |
今後の展望 | 女性の雇用・活用も積極的に行い、これまで以上のスキルアップを図りたい |
この企業では、主に特定訓練コース(若年人財育成訓練)を行うことにより、従業員の技術の向上、ひいては製品の質の向上を叶えることができ、安定した受注を得られるようになりました。
これまでは男性中心に行ってきた技能研修ですが、今後は女性に対しても積極的な雇用や教育を行っていくとのことです。
このように、助成金を活用した従業員教育により、いずれも社員教育の制度が整い、個人のスキルとともに製品やサービスの質が向上したという結果が出ています。
製品やサービスの質が上がれば、お客さまにも確実に喜んでいただけるでしょう。
人材開発支援助成金の受給の流れと注意事項
人材開発支援助成金では、各コースや訓練の内容などによって必要な書類が異なり、計画など段階ごとに書類提出の必要性があります。それぞれに締め切りもあります。
また、新型コロナの影響を受けた企業への特例措置が実施されていますが(2022年3月現在)、申請時期によって内容が変わるため、必ず申請前にハローワークか社会保険労務士に確認するようにしてください。
ここでは、申請手続きの基本的な流れと注意事項について、一般訓練コースを例に解説します。
申請の流れと必要な添付書類(一般訓練コース)
人材開発支援助成金の一般訓練コースの手続きは、次のように進めます。
- 1)助成金申請前の準備
- 2)訓練実施計画届の提出
- 3)訓練の実施等
- 4)支給申請書の提出
- 5)支給または不支給の決定
1.助成金申請前の準備
社内で「職業能力開発推進者」を選任し、「事業内職業能力開発計画」を作ります。
事業内職業能力開発計画は、業務の種類や職務レベルに応じて、何を身に付ける必要があり、どのような研修や訓練などが必要かを考え、明らかにするものです。
2.訓練実施計画届の提出
訓練開始日から起算してさかのぼり1カ月前となる日までに、「訓練実施計画届」と必要な書類を労働局へ提出します。
訓練実施計画書のほか、事業主本人による事前確認書、登記簿謄本の写しや年間職業能力開発計画、訓練対象者の一覧表なども用意する必要があります。
3.訓練の実施等
計画に沿って訓練を実施します。計画を変更する場合は事前に「訓練実施計画変更届」の提出が必要です。
それがない場合はその部分が支給対象外となるので注意してください。
4.支給申請書の提出
訓練が終了した日の翌日から2カ月以内に「支給申請書」と必要な書類を労働局に提出します。
必要な書類とは、助成の内訳や訓練の実施状況報告書(ともに様式あり)、期間中の賃金台帳や出勤簿などです。その他、行った訓練などによって異なる書類の提出も必要です。
5.支給または不支給の決定
提出した書類の内容などを労働局で審査し、助成金の支給または不支給の決定がなされます。
なお、人材開発支援助成金は審査での確認項目が多いため、他の助成金に比べて決定までに時間がかかる傾向にあります。
訓練の実施日に注意!助成対象外になる場合とは
人材開発支援助成金は休日(振替休日は除く)や所定労働時間外に受けた訓練は対象外となり、当該時間分の賃金助成・OJT実施助成は受けられません。
また、原則として通信による訓練は対象外ですが、専門実践教育訓練など一部のOff-JTに限り対象としています。ただその場合でも、所定労働時間外や休日の受講は対象外です。
たとえば育休中の従業員に訓練を在宅で受けさせた場合など、所定労働時間中の受講ができないケースも考えられます。
その場合、次の3つの条件に当てはまる場合に限り助成の対象となり得ます。
・所定労働時間の変更の可能性について、労働契約書や就業規則等に明記している
・労働条件通知書等に「訓練の期間中(△月△日~△月△日)は就業時間を○時~○時に変更する」などと具体的に記載する
・訓練開始前に受講者に上記の内容を明示・周知している
計画届と支給申請書の提出締切にも注意
助成金の申請には、さまざまな事前の準備が必要です。人材開発支援助成金の場合、前述の通り計画届の提出をし、それが受理されたら訓練を行い、訓練後に申請する、という流れ。計画届の提出と助成金の申請にはそれぞれに締め切りがあります。
締切日を過ぎると受給できないので気を付けてください。
提出書類 | 作成・提出期限 |
---|---|
事業内職業能力開発計画 | 訓練開始前に策定・周知 ※提出は不要だが、作成が支給要件の1つ |
訓練実施計画届 | 訓練開始日からさかのぼって1カ月前までに提出 |
訓練実施計画変更届 | 訓練中に計画変更が生じた場合、指定の日までに提出 |
支給申請書 | 訓練終了日の翌日から起算して2カ月以内に提出 |
訓練実施計画書については、計画書の提出前に行われた訓練も対象外となるので注意が必要です。
計画に追加や変更がある場合、追加は訓練開始の1カ月前までに、変更は当初予定していた開始日または変更後の実施日のいずれか早い日の前日までに、計画の変更届と新たな計画書を提出しなくてはなりません。
また、計画届の提出後、提出書類の不備などで補正(再提出)を求められる場合があります。これにも期限が指定され、過ぎれば不支給となります。
人材開発支援助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ
人材開発支援助成金は、経費や賃金の自社負担を軽くしながら従業員の能力を向上でき、従業員のレベルアップにより生産性向上も狙えるお得な制度です。
しかし計画の策定や届け出の提出など、申請の手続きにはさまざまなルールがあります。準備する書類も申請するコースや各社のケースにより異なり、複雑です。「よくわからないし忙しい」という方も多いことでしょう。
当サイトの運営会社「社会保険労務士事務所Bricks&UK」では、これまで多くの事業主の方の助成金申請手続きをサポートしています。ぜひ一度ご相談ください。
就業規則を無料で診断します
労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。
こんな方は、まずは就業規則診断をすることをおすすめします
- 就業規則を作成してから数年たっている
- 人事労務トラブルのリスクを抱えている箇所を知りたい
- ダウンロードしたテンプレートをそのまま会社の就業規則にしている
監修者からのコメント 新年度になり、新たに社員を迎える会社も多いと思います。 社員教育の際に、外部の機関や講師に依頼されるケースはありませんか? 人材開発支援助成金は、人材の教育に幅広く使える助成金です。 弊社Bricks&UKでは正社員向けの教育から非正規労働者向けの教育まで申請代行を行っております。 お気軽にお問い合わせください。