65歳以上の高齢者雇用で活用できる助成金について解説

2021.10.08

65歳超の高齢者雇用で使える助成金

少子高齢化による労働力不足が懸念されることから、年齢にかかわらず健康で働く意欲を持つ方が安定して働けるよう、国全体でさまざまな取り組みが行われています。
2021年4月には65歳以上の雇用安定を図るべく、高齢者雇用安定法が施行されました。

では、高齢者の雇用に関する助成金にはどんなものがあるのか、申請の方法やポイントなどについて見ていきましょう。

65歳以上の雇用で受給できる助成金

高年齢者との雇用契約

新たに従業員を雇用することで受け取れる助成金はいくつかありますが、中でも65歳以上の人の雇用を対象としているのが、特定求職者雇用開発助成金の1つ、生涯現役コースです。

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

この助成金では、ハローワークや民間の職業紹介所等の紹介により、65歳以上の求職者を雇用保険の被保険者として1年以上雇用する事業主に、賃金の一部を補助するものとして助成金が支給されます。

支給要件

具体的には、主に次の3つを満たす高齢者雇用が対象です。

  • 雇い入れる日時点で、満年齢が65歳以上である
  • 雇用保険の高年齢被保険者として採用され、1年以上の継続雇用が確実である
  • 紹介日時点で雇用保険の被保険者でない

また事業主側にも要件があり、たとえば対象者の雇い入れ前後6カ月間に他の従業員を含めた解雇や退職勧奨などを行っていないこと、労働者の勤務状況や賃金支払状況がわかる書類の整備や保管をし、求めに応じ提出することなど、多数の要件が定められています。

支給額

この助成金は、雇い入れ直後の賃金締切日の翌日を起算日とした1年間を助成対象期間としています。その中で6カ月ごとを支給対象期として区切り、2回(2期)に分けて支給されます。

支給額は事業所の規模や対象となる労働者の週の所定労働時間に応じて下表のように分けられています。中小企業の場合はカッコ内の金額が支給されます。

対象労働者 支給額 対象期間ごとの支給額
下記以外 70万円
(60万円)

35万円×2期 
(30万円×2期)

短時間労働者 50万円
(40万円)
25万円×2期
(20万円×2期)

短時間労働者とは、週の所定労働時間が20時間以上30時間未満の人のことです。ちなみに、労働時間が20時間未満になると雇用保険の加入対象外となるため、この助成金の対象とはなりません。

なお、従来は対象労働者の実働時間が一定基準以下になると助成金も減額されることになっていましたが、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言の影響で労働時間が減った場合には、特例として助成金は減額されません。

ちなみに中小企業とは、資本金(もしくは出資総額)または常時雇用の従業員の数のいずれかが下表に該当する企業をいいます。

小売業・飲食店 資本金5000万円以下または従業員数50人以下
サービス業 資本金5000万円以下または従業員数100人以下
卸売業 資本金1億円以下または従業員数100人以下
その他業種 資本金3億円以下または従業員数300人以下

申請方法と申請期限

では申請の流れを見ていきましょう。助成金の利用には、まずハローワーク等で65歳以上の求職者を紹介してもらい、雇用保険の被保険者として雇い入れます。

助成金の申請手続きは、前述の通り6カ月の支給対象期ごとに2回、事業所の地域を管轄する労働局またはハローワークにて行います。

雇い入れて最初の賃金締切日の翌日を起算日とし、支給対象期の6カ月目となる日の翌日から申請手続きが行えます。申請の期限は2カ月以内です。

たとえば雇い入れが11月1日、賃金締切日が15日だったと仮定しましょう。
この場合、起算日は11月16日となり、6カ月後の5月15日までが1回目の支給対象期です。その翌日、5月16日から7月15日までに支給申請を行います。

雇い入れ日が賃金締切日当日の場合は、その翌日を起算日とします。賃金締切日の翌日に雇い入れた場合は、雇い入れ日を起算日とします。

申請に必要な書類は、「特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)第一期/第二期支給申請書」(様式あり)のほか、賃金台帳の写しや出勤簿、雇用契約書等の添付書類です。その他、状況等に応じて求められる書類もあります。

65歳以上への定年引き上げ等の実施で受給できる助成金

定年引き上げのイメージ

65歳以上の定年の引き上げや雇用延長を行った事業主が受け取れる助成金もあります。それが「65歳超雇用推進助成金」の「65歳超継続雇用促進コース」です。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

当コースについて、令和3年度の新規受付は9月24日をもって停止されました。その後の対応については追って発表がある予定です。

文字通り、定年を65歳以上に引き上げるなどして高齢者の雇用維持を図る事業主が対象となるコースです。対象となる制度を導入して規定化した場合に、そのために要した費用の助成として所定の金額が支給されます。

支給要件

この助成金の支給には、主に次の4つの要件があります。

  • ①就業規則や労働協約により、次のいずれかの制度を新たに導入・実施する

 ・定年を65歳以上とする
 (従前より上回ることが必要)
 ・定年制の廃止
 ・他社による継続雇用制度の導入

  • ②上記の実施について専門家などへの相談・委託費用を支払う
  • ③高年齢者雇用推進者を決め、高年齢者に対する次の措置を1つ以上実施する

 ・職業能力の開発・向上のための教育訓練など
 ・作業施設や作業方法の改善
 ・健康管理や安全衛生への配慮
 ・健康管理や安全衛生への配慮
 ・知識や経験を活用できる人材配置、処遇の推進
 ・勤務時間制度に関する柔軟な対応

  • ④支給申請日の前日時点で、1年以上継続雇用されている、かつ60歳以上である雇用保険被保険者が1人以上いる

規定化に関して相談する専門家とは、社会保険労務士や弁護士、行政書士(昭和55年9月1日までに行政書士会に入会済の行政書士に限る)のことです。労働協約の締結に関する相談には、過去に同じ業務の実績があるコンサルタントへの依頼も対象となります。

支給額

助成金の支給額は、対象となる60歳以上の被保険者の数と引き上げた年齢によって異なります。

定年の引き上げまたは廃止
対象被保険者数 10人未満 10人以上
65歳への定年引き上げ
(5歳未満)
25万円 30万円
66~69歳への定年引き上げ
(5歳以上)
30万円 35万円
70歳以上への定年引き上げ 85万円 105万円
定年の廃止 120万円 160万円

66歳~69歳への引き上げでは、従前より5歳以上引き上げた場合に受け取れる助成金の額が5歳未満の引き上げに比べてかなり大きくなっています。

希望者全員を66歳以上の年齢まで雇用する継続雇用制度の導入
対象被保険者数 10人未満 10人以上
66~69歳まで
(4歳未満)
15万円 20万円
66~69歳まで
(4歳未満)
40万円 60万円
70歳以上への引き上げ 80万円 100万円

継続雇用については4歳以上引き上げたかどうかで大きく金額が変わります。
定年と継続雇用の両方の制度で引き上げを実施した場合、いずれか高い額のみが支給されます。重複して受け取ることはできないので注意してください。

他社による継続雇用制度
継続雇用の引き上げ内容 支給額(上限額)
66~69歳(4歳未満) 5万円
66~69歳(4歳) 10万円
70歳以上(4歳) 15万円

他社による継続雇用には、グループ企業や子会社などへの転籍といったケースが当てはまり、継続雇用についての契約を双方で交わしている必要があります。
制度の規定について専門家に相談し、支払った経費の2分の1の金額と上表の上限額、いずれか低い方の金額が支給されます。

助成金申請のポイント

助成金申請のポイント解説

助成金は、要件を満たし、それを書類などで証明できれば受給できます。しかし、上記で紹介した要件のほかにも、数多くの支給要件・不支給要件などが定められています。

そのため、コースに関わらず助成金の申請には次のようなポイントを押さえておきましょう。

  • 審査に必要な書類を整備し、いつ提出・閲覧を求められても応じられるようにしておく
  • 労働関連法への違反がないか確認しておく
  • 就業規則の改定においては労働組合または従業員の代表者と十分に協議して行う

出勤簿や賃金台帳、雇用時の契約書などの管理を徹底し、常に最新の状態のものを提出できるようにしておきましょう。残業代未払いなどが発生していないかも現場担当者に聞き取るなどして実態を把握し、問題があれば対処する必要があります。

また、次のような場合には不支給となるので注意してください。

  • 平成31年4月以降に雇用関連の助成金申請について自社が不正を行い、または事業主や役員が他社の不正にかかわり、5年を経過していない
  • 対象労働者の雇い入れ年度以前に労働保険料の滞納がある
  • 性風俗関連や接待を伴う飲食店の営業に関わっている
  • 事業主や役員に暴力団や類似の団体との関わりがある

このほか、各助成金で押さえておきたいポイントと注意点をお伝えしていきます。

特定求職者雇用開発助成金(生涯現役コース)

このコースで気を付けておきたいのは主に次の5つのポイントです。

  • ハローワーク等の紹介でなければ対象外
  • ハローワーク等の紹介以前に雇用の約束をしていた場合も不可
  • 過去3年間に雇用や出向、請負、訓練の参加などで関わった実態がある人は対象外
  • 雇用調整助成金との併給は不可
  • 前後6カ月間に事業主都合での退職者(解雇者)がいると不支給

個人的な紹介などで雇った人は対象労働者とはなりません。あらかじめ採用の約束をしてハローワークに申し込む形を取ったとしても助成金は対象外です。

65歳超雇用推進助成金(65歳超継続雇用促進コース)

このコースでは、主に次の2点に気を付ける必要があります。

対象となる被保険者の定義

上の章で紹介した要件の1つに、「支給申請日の前日時点で1年以上継続雇用され、かつ60歳以上の雇用保険被保険者が1人以上いること」というのがあります。これは、継続雇用された結果60歳以上になったということを意味します。

「定年以降に採用した60歳以上の人も対象となる」という認識は誤りで、それでは対象となりません。

助成金の申請先

雇用関連の助成金は、ほとんどが労働局やハローワークが申請先となっています。しかしこのコースの申請先は「(独)高齢・障害・求職者支援機構」の各都道府県支部であることに注意しましょう。

締切日にハローワークに届けても受理されないほか、提出書類に不備などがあった場合の対応も労働局より厳しいため、申請準備はより念入りにしておく必要があります。

高齢者雇用のメリット

高齢者雇用のメリット

最後にここで、改めて高齢者を自社に雇い入れることのメリットを考えてみましょう。助成金が受け取れる、事業税が課税対象外となる、というだけでなく、さまざまなメリットが期待できます。たとえば次のようなことです。

  • 知識や技術を自社に継承してもらえる
  • 他の従業員への刺激・モチベーション向上につながる
  • 経験に基づく広い知見を活かしてもらえる
  • 新たな視点で業務の改善につながる

高齢者を雇用するメリットとしてまず挙げられるのは、経験や技術力を自社で生かしてもらえることです。

創業年数が短い場合などは特に、業務でわからないことは試行錯誤するしかなかったり、明確な答えのないまま進んでいたりすることもあるでしょう。働く意欲があり、長い経験を持つ高齢者であれば、進んで自分の知識を教えようとしてくれるものです。

人脈を培ってきている人も多いので、新たな顧客の開拓や必要な取引先を探すときにも頼れる可能性があります。

また、65歳を超えてもなお現役で活躍する人が身近にいることで、既存社員にも大きな刺激をもたらすでしょう。豊かな人間性を持つ人であれば、組織のまとまりにも一役買ってくれるに違いありません。若年層が多くマナーや礼儀などが定着していない場合にも、自然とお手本になってくれる可能性があります。もちろん、漫然と働いている年代の近い社員にも、刺激になることは間違いありません。

ダイバーシティ(多様性)を重視する今となっては、層の厚みによって生まれる効果のみならず、高齢者の活躍の場を積極的に設けていることで自社の社会的な信頼性が高まる、というメリットにつながる可能性もあります。

まとめ:助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ

助成金申請手続きのプロである社会保険労務士

65歳以上の人を雇用した場合の助成金には、特定求職者雇用開発助成金の生涯現役コースがあります。また、65歳以上への定年の引き上げや継続雇用の制度を整えると、65歳超雇用推進助成金の65歳超継続雇用促進コースの対象となり得ます。

(65歳超継続雇用促進コースの令和3年度の新規受付は9月24日付で終了)

助成金を活用して65歳以上の人材を雇うことにはさまざまなメリットがあります。しかし助成金を受けるには、対象となる労働者・事業主ともに多数の要件があり、コースごとでも異なるため複雑です。申請に必要な出勤簿やタイムカード、や賃金台帳、就業規則なども適切に整備・管理しておくことが必要です。

そのため「自社だけで対応するのは難しい」と数多くの企業が利用しているのが社会保険労務士、あるいは当社Bricks&UKのような社会労務士事務所です。助成金申請の経験が豊富で最新の要件変更などにもすぐに対応できるので、安心しておまかせいただけます。

最新の法令を遵守した就業規則の改定・整備など、労務に関するあらゆるご相談もお受けしていますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

社労士からのコメント 令和3年9月 16 日の発表により、65歳超雇用推進助成金「65 歳超継続雇用促進コース」は9月 24 日受付分 をもって本年度の新規受付停止となりました。 昨年度から大幅に支給額が増額されたため、多くの申請があり予算額に達する見込みとなったためです。 今後、安定的な制度への見直しを行ったうえで、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構から案内が行われる予定です。 助成金・就業規則に関することはBricks&UKにお任せください。

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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。

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四宮寛子

この記事の監修この記事の監修 社会保険労務士事務所Bricks&UK 特定社会保険労務士 四宮寛子

特定社会保険労務士。2004年南山大学外国語学部英米学科卒業、2007年社会保険労務士登録、同年開業。
これまでに申請・受給した助成金は1200件超。助成金の申請を通じて就業規則の作成をはじめとした労働環境の整備にも積極的にアドバイスを行っている。

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