働き方改革の実現に向けて、労働者の勤務終了後に一定の休息時間(勤務間インターバル)を与えることが2019年4月1日から事業主の努力義務とされました(労働時間等設定改善法)。
勤務と勤務の間を一定時間以上あけることで、労働者の生活時間や睡眠時間を確保することを目的とした制度です。
この記事では、勤務間インターバル制度を導入する中小企業を対象にした、働き方改革推進支援助成金の「勤務間インターバル導入コース」について、昨年度からの変更点やそもそもの制度の内容について解説していきます。
目次
働き方改革推進支援助成金とは
働き方改革推進支援助成金は、その名のとおり、政府がすすめる働き方改革を自社に取り入れ、推進する事業主を助成するものです。
対象者や取り組み別に、4つのコースに分かれています。
- 労働時間短縮・年休促進支援コース
- 勤務間インターバル導入コース
- 労働時間適正管理推進コース
- 団体推進コース
【2021年10月14日追記】労働時間短縮・年休促進支援コースについては、2021年度の受付が10月15日で終了されることが決まりました。
重要なお知らせ|厚生労働省
労働時間の短縮や特別休暇の導入、時間単位の有給の導入などを成果目標とするのが「労働時間短縮・年休促進支援コース」です。
この記事で紹介する「勤務間インターバル導入コース」は、勤務と勤務の間を9時間以上あけて従業員に十分な休息を与える「勤務間インターバル制度」を導入した企業を助成するものです。
「労働時間適正管理推進コース」では、勤怠と給与の管理が同時にできるシステム等による労務管理、書類の5年間保存などを成果目標として取り組む企業が助成の対象です。
こちらの記事も参考にしてください。
「団体推進コース」は、中小企業事業主が作る団体などを対象としたものです。
働き方改革推進支援助成金「勤務間インターバル導入コース」昨年からの変更点
働き方改革推進支援助成金「勤務間インターバル導入コース」は、勤務間インターバル制度」の導入や定着によって、中小企業が従業員に長時間労働や過重労働をさせることのない、適正な労働時間を設定することを目的としています。
制度の導入に際し専門家のコンサルティングを受けたり、労務管理用のソフトウェアなどを購入したりして成果を上げた中小企業事業主を対象に、その経費の一部を助成します。
2018年度より実施されている助成金ですが、内容に関しては昨年度から次の3点が変更になっています。
働き方改革推進支援助成金コース全般・事業の受注者を制限
不正防止の観点から、勤務間インターバル制度の導入・定着のための事業を助成金の申請事業主や代理人、提出または事務代行者(関連企業含む)に委託した場合には、自己取引と見なされ助成金が不支給となります。
相見積もりも認められません。
支給対象事業主の要件を追加
昨年度も実施されていたこの制度ですが、今年度は対象事業主に関しても1つ要件が追加となっています。
追加となった要件は、「過去2年間に月45時間超の時間外労働が行われていた事実があること」です。
変形労働時間制の場合は、月42時間が基準となります。また、「月45時間の時間外労働」に休日労働時間は含まれません。
タイムカード等の提出が必要に
休息時間が確保されている事実を確認するため、支給申請時に休息時間を確認できる書類の提出が必要になりました。
たとえば賃金台帳やタイムカード、出勤簿、1年単位の変形労働時間制についての労使協定(該当する場合)などの書類です。休息時間が確保されていないと判断された場合には、助成金は支給されません。
働き方改革推進支援助成金「勤務間インターバル導入コース」を詳しく解説
では改めて、この働き方改革推進支援助成金「勤務間インターバル導入コース」の詳しい内容を見てみましょう。助成対象や取り組みの実施・申請期間、支給額等について解説していきます。
対象となる事業主
次のいずれにも当てはまる中小企業事業主が対象となります。
- (1)労災保険の適用事業主
- (2)次のアからウのいずれかに該当する事業場をもつ事業主
ア)勤務間インターバルを導入していない
イ)休息9時間以上の勤務間インターバルを導入済だが、対象者数が当該事業場内の半数以下である
ウ)休息9時間未満の勤務間インターバルを導入済である
- (3)令和3年3月31日以前に36協定を締結済で、過去2年間に月45時間超の時間外労働があった
- (4)年5日の有休取得に向けて就業規則等を整備している
対象となる取り組み
助成金の支給対象となる取り組みには、大きく次の7種類があります。どれか1つ以上を行い、次の項目で説明する「成果目標」を達成した場合に、助成金が支給されます。
- (1)労務管理担当者への研修
- (2)労働者への研修、周知・啓発
- (3)社会保険労務士などによるコンサルティング
- (4)就業規則・労使協定等の作成・変更
- (5)人材確保に向けた取り組み
- (6)労務管理用ソフトウェアや労務管理用機器、デジタル式運行記録計などの導入・更新
- (7)労働効率の増進につながる設備や機器の導入・更新
(7)には、たとえば小売業のPOSレジシステム装置や自動車修理業の自動車リフト、運送業の洗車機などが当てはまります。
研修には業務研修も含まれます。機器などの導入に関しては、パソコンやタブレット、スマートフォンの購入費用は対象外のため注意が必要です。
成果目標の設定
上記の取り組みに加え、次の成果目標を達成すると、取り組みにつかった費用の一部を助成金として受け取ることができます。(1)~(3)の成果目標はすべて、労働協約または就業規則に記載する必要があります。
(1)新規導入
勤務間インターバル制度が未導入の場合は、半数を超える労働者を対象とした9時間以上の勤務間インターバル制度を新たに定めます。
(2)適用範囲の拡大
9時間以上の勤務間インターバル制度はあるものの、対象労働者が事業場全体の半数以下の場合、適用範囲を拡大し、半数を超える労働者を対象とすることが必要です。
(3)時間延長
すでに勤務間インターバル制度を導入しているものの、休息時間が9時間未満の場合は、半数を超える労働者を対象に、休息時間数を2時間以上プラスして9時間以上とします。
これらに加えて、指定する労働者の時間給を3%以上または5%以上引き上げることを成果目標とすることもできます。
事業実施期間
この助成金の受給には、まず計画書や交付申請書といった必要書類を最寄りの労働局に提出する必要があります。交付が決定されたら、計画に沿って取り組みを行います。
取り組みの実施は、交付決定の日から令和4年1月31日(月)までにしなくてはなりません。
支給額
成果目標を達成した場合、取り組みにつかった経費の4分の3が助成されます。
ただし次のとおり上限が決められています。
休息時間数 | 新規導入 | 適用範囲の拡大・時間延長 |
9時間以上11時間未満 | 80万円 | 40万円 |
11時間以上 | 100万円 | 50万円 |
ただし、常時使用する労働者数が30名以下で、前の章で紹介した支給対象の取り組み(6)労務管理用ソフトウェアなどの導入・更新や(7)労務効率の増進につながる設備機器の導入を実施する場合、かつ所要額が30万円を超えた際は助成率が5分の4となります。
さらに、賃金額の引き上げを成果目標に加えた場合は、人数と引き上げ率に応じて次の金額が加算されます。
賃上げ人数 | 1~3人 | 4~6人 | 7~10人 | 11~30人 |
3%以上の引き上げ | 15万円 | 30万円 | 50万円 | 1人あたり5万円(上限150万円) |
---|---|---|---|---|
5%以上の引き上げ | 24万円 | 48万円 | 80万円 | 1人あたり5万円(上限150万円) |
締め切り
交付申請書の提出締切は令和3年11月30日(火)必着です。ただし予算額に達した場合は締切前に受付が終了する場合があるため、申請はできるだけ早くすることをおすすめします。昨年度は10月15日に受付を終了しています。
交付が決まり、計画に沿った取り組みを行う期間は令和4年1月31日(月)までです。
そして事業実施後の支給申請書の提出締切は、事業実施予定期間の終了日から数えて30日後、または令和4年2月10日(木)のいずれか早い日までの必着です。
助成金の申請ならBricks&UKにおまかせ
「勤務間インターバル制度」の導入で受けられる助成金(通称「インターバル助成金」)は、生産性を向上させるための現場の機械化や、労働時間の正確な管理のためのソフトウェアの購入などに要した経費などの負担を軽減してくれます。
しかし、手続きには取り組みや支給申請の前にまず計画を立てて交付申請を行う必要などもあり、時間や手間がかかります。そのため申請には、助成金申請のプロである社会保険労務士に依頼するのがおすすめです。
当社Bricks&UKには豊富な実績をもつ社会保険労務士がたくさんおり、安心して任せていただけます。ぜひお気軽にご相談ください。
監修者からのコメント 昨年度からの変更点として、令和3年3月31日以前に36協定を締結済であることと、過去2年間に月45時間超の時間外労働があった事実が必要となりました。 これにより、申請対象外になってしまう事業所様もいらっしゃるかと思います。 働き方改革推進支援助成金には、他に労働時間短縮・年休促進支援コース、労働時間適正管理推進コース、団体推進コースがあります。 生産性向上に役立つ物品の購入を検討されている事業所様はお気軽にお問い合わせください。
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労働基準法等の法律は頻繁に改正が行われており、その都度就業規則を見直し、必要に応じて変更が必要となります。就業規則は、単に助成金の受給のためではなく、思わぬ人事労務トラブルを引き起こさないようにするためにも大変重要となります。
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