2025年度のキャリアアップ助成金、賃金規定等改定コースの変更点や申請する際の注意点を解説します

2025.05.30

2025年のキャリアアップ助成金、賃金規定等改定コースについて解説します

従業員の処遇改善や能力開発に努める中小企業の事業主を支援すべく設けられているのが、キャリアアップ助成金の「賃金規定等改定コース」です。

賃金規定の見直しなどの処遇改善、評価制度の整備などを行うことで助成が受けられます。

2025年度も、この賃金規定等改定コースは継続され、助成額の拡充などが行われています。要件や昨年までとの違いを把握して、ぜひ活用しましょう。

この記事では、制度の基本的な説明から2025年度の変更点、申請の流れを紹介します。申請時の注意点も解説するのでお役立てください。

そもそも「賃金規定等改定コース」とは

賃金規定等改定コースの概要

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースは、有期雇用の従業員の基本給を3%以上アップさせる賃金規定を整備し、増額での支払いを実施すると受けられる助成金です。

助成対象となる事業主の要件

支給を受けるには、事業主が次のような要件を満たす必要があります。

  • 有期雇用労働者等に適用する賃金規定等を作成している
  • その賃金規定等を3%以上増額改定し、運用する
  • 改定後の賃金を6カ月以上支給している
  • 定額支給の諸手当の額を減らしていない

賃金規定を改定したら、その通りに賃上げを実行し、継続する必要があります。また、代わりに別の手当を減らすと、支給の対象外となってしまいます。

助成対象となる従業員の要件

賃金規定等改定コースの対象となる従業員の要件

賃金増額の対象とする従業員に関しても、次の3項目をはじめとした複数の要件があります。

  • 有期雇用労働者等である
  • 増額改定日前日から3カ月以上前から改定後6カ月以上の間、継続雇用されている
  • 増額改定後の賃金規定が適用され、改定前より3%以上の昇給があった

「有期雇用労働者等」とは、雇用契約に期間が設けられている人のほか、無期雇用でも正社員でない人、短時間労働者、派遣労働者などを指します。

2025年4月からの変更点その1:助成区分の変更と助成額の拡充

賃金規定等改定コースでは、賃金の引き上げ率に応じて助成の額を決める区分が「3%以上5%未満」か「5%以上」の2つのみでした。

2025年度はこの区分が4つに増え、助成額も拡充されています。

【中小企業】助成区分と助成額

中小企業の場合、助成区分・助成額は次のとおりです。

従前の制度
3%以上5%未満5万円
5%以上6.5万円
2025年度
3%以上4%未満4万円
4%以上5%未満5万円
5%以上6%未満6.5万円
6%以上7万円

3%以上4%未満の賃金引上げの場合は、5万円の助成額だったのが4万円に減額されています。

しかし、6%以上引き上げた場合の助成金は、7万円にアップしています。

【大企業】助成区分と助成額

大企業の場合は次のとおりです。

従前の制度
3%以上5%未満3.3万円
5%以上4.3万円
2025年度
3%以上4%未満2.6万円
4%以上5%未満3.3万円
5%以上6%未満4.3万円
6%以上4.6万円

中小企業・大企業とも、1年度1事業所あたりの支給申請の上限は100名です。

2025年4月からの変更点その2:加算措置が新設

2025年4月からの賃金規定等改定コースの変更点

助成金の加算を受けられる条件が、1つから2つに増やされました。

加算要件加算額
職務評価を行い、賃金規定等を増額改定
(2024年度より継続)
20万円
(大企業:15万円)
有期雇用労働者等を対象とする昇給制度を新たに規定
(2025年度より新設)
20万円
(大企業:15万円)
※いずれも1事業所あたり1回まで

職務評価とは、職務の大きさを相対的に見て、それに見合った待遇がされているかの現状を把握すること。職務評価を適切に行ったうえで、賃金規定等を改定することが必要です。

2025年4月からの変更点その3:計画書の認定が不要に

2025年4月からの賃金規定等改定コースの変更点

キャリアアップ計画書の取り扱いも簡素化されています。これは賃金規定等改定コースに限らず、キャリアアップ助成金の各コース共通の変更点です。

2024年度まで、キャリアアップ計画書は取り組みを実施する前日までに労働局に提出、認定をしてもらわねばなりませんでした。

2025年度からは、計画書の作成は必須ですが、労働局長による認定は不要、届出だけでよいことに変わっています。

賃金規定等改定コース申請のQ&A

賃金規定等改定コースの申請に関してよくある質問とその回答

賃金規定等改定コースについては、要件などがやや細かいため、疑問の声も多く聞かれます。しかし、要件を満たさなければ受給はできません。ここで、よくある疑問を解消しておきましょう。

賃金規定の改定でなく新規作成は対象外?

「賃金規定等改定コース」というコース名から、新しく規定を作成した場合は対象にならないと思われがちですが、賃金アップの要件を満たしていれば、新規作成の場合も対象となり得ます。

賃金アップの要件とは、過去3か月分の賃金と比較して3%以上の増額がされていることです。

有期雇用の従業員全員の賃金を引き上げないとダメ?

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースについての疑問

たとえばアルバイト全員でなく一部だけの賃金を増額改定した場合でも、このコースの助成の対象となり得ます。

ただしその場合は、改定する・しないの区分が合理的かつ明確でなくてはなりません。年齢で区別したり、勤務態度が悪いからと特定の人物を除外したりするのはNGです。

たとえば、雇用形態や職種、職務等級などの区別が規定で明確にされている場合に、「パートのみ」「再雇用の契約社員を除く」などの区分で絞ることができます。

地域別最低賃金の引き上げによる増額でもいい?

キャリアアップ助成金賃金規定等改定コースのよくある疑問

地域別の最低賃金が改定されることにより、現行の賃金では最低額を下回ってしまう場合、最低賃金以上にするための増額が必須です。

このように、きっかけが地域別最低賃金の改定でも、賃金の3%増額を就業規則等に規定して実行すれば、賃金規定等改定コースの対象となり得ます。

ただし、地域別最低賃金の改定日に増額を行う場合は、現行の額からではなく、地域別最低賃金から3%以上の増額をしなくてはなりません。

増額の算定に含まれない手当とは?

キャリアップ助成金賃金規定等改定コースのよくある疑問

賃金が3%以上増額されているかどうかは、賞与や諸手当も含めて比較されます。ただし、次のような手当は比較の対象に含めません。

比較対象とならない費用主な例
実費を補填する性質のもの【主な例】
・通勤手当  
・住宅手当
(定額一律支給は対象)
・燃料手当
(寒冷地の暖房費)
・工具手当
状況により変動し、処遇改善の判断がつかないもの【主な例】
・歩合給
・時間外労働手当
・休日手当
・皆勤手当

これ以外でも、名称を問わず同様の手当は対象外です。

正社員の賃金も引き上げが必要?

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースによくある疑問

このコースでは、有期雇用労働者等の処遇改善が助成の目的です。そのため、有期雇用労働者等に対して賃金を引き上げることが重要です。

正規雇用労働者の賃金を引き上げる必要はなく、引き上げたとしても助成額に変わりはありません。

加算対象となる職務評価って能力評価のこと?

ここでいう職務評価とは、当人の業務内容や責任の大きさなどを他の従業員と相対的に比較した場合に、待遇がそれに見合っているかどうかの判断をすることです。

個人の仕事への取り組み方や勤務態度、能力などを評価するものではありません。

職務評価には、要素別点数法や単純比較法、分類法や要素比較法といった方法があります。どの方法でも問題ありません。

正社員の職務評価をしなくても加算対象となる?

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースのよくある疑問

基本的な受給要件である賃金の引き上げについては、前述のとおり正社員は対象から外れます。

しかし職務評価による加算を受けるには、正社員への職務評価も必要です。

職務評価をしていない場合は対象外、従業員に正規労働者がいない場合も、加算対象となりません。

支給申請できる期間とは?

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの申請期間

支給申請は、賃金規定を改定した後、増額した賃金を6カ月分支払ってから可能になります。また、6カ月分の賃金を支給した日の翌日から2カ月以内という申請期間は厳守しなくてはなりません。

たとえば賃金締切日が月末、支払日が翌月15日の会社だとします。4月1日に賃金規定を改定した場合、6カ月分の賃金とは4/1~9/30の期間の賃金です。6カ月目の支給日は10/15となるため、翌日10/16~12/15の間に申請しなくてはなりません

もし10/15が土曜日で支給を10/14に前倒しした場合には、10/15~12/14が申請期間となります。

また、時間外手当の支給について、就業規則等に規定した上で、実績に応じ基本給等とは別に翌月等に支給している場合、6カ月分の時間外手当が支給される日の翌日から2カ月以内に申請する必要があります。

では、申請の流れも見ておきましょう。

賃金規定等改定コース申請の流れ

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの申請の流れ

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの申請は、次のような流れで進めます。

  • 1)キャリアアップ計画書の作成・提出
  • 2)賃金規定等を3%以上増額改定
  • 3)改定後の給与を6カ月以上支給する
  • 4)6カ月分の給与支給日の翌日から2カ月の間に支給申請

まずは、賃金アップを含む有期雇用労働者等の処遇改善について「キャリアアップ計画」を立て、労働局に提出します。

計画書が受理されたら、賃金規程などの中で3%以上の増額改定を行います。もしくは現行より3%以上アップする賃金の規定を導入します。

その後、改定した規定にもとづいて賃金の引き上げを行います。引き上げた賃金を6カ月分以上支給したら、助成金の支給申請が可能になります。

申請可能な期間は、6カ月分の給与支給日の翌日から2カ月以内です。スケジュール管理をしっかりしておきましょう。

賃金規定等改定コースの申請に必要な書類

キャリアアップ助成金の賃金規定等改定コースの申請に必要な書類

支給申請には、次の申請書類を揃えます。

書類名概要
キャリアアップ助成金支給申請書様式第3号
賃金規定等改定コース内訳様式第3号・別添様式3
支給要件確認申立書共通要領様式第1号
支払方法・受取人住所届振込口座未登録の場合のみ
※通帳の写しなど口座番号が確認できる書類も必要

また、添付書類として次のような資料が必要です。

書類名概要
キャリアアップ計画書(写し)・労働局長に受理されたものの写し
※変更届を出した場合には変更届も必須
改定前後の就業規則
または労働協約等(写し)
・就業規則は労基署の受理印があるもの
・賃金規定が含まれるもの(別途規定の場合はそれも)
・改定前後で3%以上の基本給増額が必須
対象労働者の改定前後の雇用契約書
または労働条件通知書等(写)
・有期雇用労働者等であると確認できるもの
・賃金の増額改定が確認できるもの
対象労働者の改定前後の賃金台帳等(写し)・改定前3か月、改定後6か月分
対象労働者の改定前後の出勤簿またはタイムカード等(写し)※上記賃金台帳等で出勤日数や労働時間数等が確認できない場合に限り必要
賃金台帳等に関する確認書・適用後6か月分の賃金が支給されていることについて全員に確認しているかどうか

この他、加算対象となるには職務評価の結果が確認できる書類や、職務評価を踏まえた賃金規定の改定について確認できる資料なども必要です。

前述したように、職務評価による加算には正社員に対する職務評価も必須のため、正社員の職務評価を確認できる書類も提出しなくてはなりません。

賃金規定等改定コース申請もBricks&UKにおまかせ

人手不足かつ働き方の多様化が進む中、非正規雇用の労働者は重要な戦力として欠かせない存在です。キャリアアップ助成金を活用して、処遇改善を図ってみてはいかがでしょうか。

要件には細かい決まりがあり、賃金規定などを改定するにも記載の方法から注意が必要です。そのため、賃金規定等改定コースの申請にはぜひ専門家のサポートを受けることをおすすめします。

当サイトを運営する社会保険労務士事務所「Bricks&UK」には、キャリアアップ助成金の申請実績も多く、専門家ならではの申請のコツなども心得ています。どうぞお気軽にご相談ください。

監修者からのコメント キャリアアップ助成金(賃金規定等改定コース)が令和7年4月から変更になりました。 助成額の区分が4区分に拡充され、助成額が拡充されています。 併せて、有期雇用労働者等の昇給制度を新たに設けた場合、1事業所当たり1回のみ「20万円(大企業は15万円)」を加算する措置が新設されました。 制度を上手に活用して、従業員の処遇改善を図りましょう。 Bricks&UKでは、助成金の申請に詳しい専門家が常に最新の情報を持ち、要件の変化にも対応してクライアントの皆様をご支援しております。 ぜひ一度ご相談ください。

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