人材確保等支援助成金は、人事評価制度の新設や機器の導入など、企業のさまざまなシーンで活用できる助成金です。
申請には社内の労働環境を改善する必要があるため、結果的に従業員の定着率の向上や離職率の低下につながるものと期待できます。
この記事では人材確保等支援助成金の申請を検討している方に向けて、各コースの支給額や支給要件、申請の流れなどを詳しく解説します。
目次
人材確保等支援助成金の8つのコース
人材確保等支援助成金には8つのコースがあります。複数のコースがあると複雑そうですが、個々の企業の事情に柔軟に対応できる制度になっています。
ここではまず8つのコースそれぞれの概要を簡単に紹介します。詳細は後述します。
①人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
※追記:このコースは令和4年3月をもって受付休止となっています。
雇用管理制度の新規導入や実施を通して、従業員の離職率低下に取り組む事業主に支給される助成金です。
雇用管理制度は「評価・処遇制度」「研修制度」「健康づくり制度」「メンター制度」「短時間正社員制度」の5種類に分かれています。
②人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
介護事業主が、新たな介護福祉機器を導入した場合に支給される助成金です。
介護福祉機器の導入を通して介護労働者の身体的負担を減らし、離職率を低下させることを目的としています。
機器を導入した場合は導入費用の25%、離職率の目標値を達成した場合は導入費用の20%が支給されます。
③人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)
※このコースは令和3年3月で廃止されています。
介護事業または保育事業の事業主が賃金制度を整備し、介護労働者や保育労働者の離職率を低下させる取り組みを行った場合に支給される助成金です。
④人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)
このコースは、企業の事業所単位ではなく、中小企業者を構成員とする事業協同組合などを助成の対象としています。
組合員である事業者の人材確保や従業員の職場定着率を上げる事業を行った場合に支給される助成金です。事業費用の3分の2が支給されます。
⑤人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)
※このコースは令和4年3月をもって受付が休止されています(令和4年4月現在)。
人事評価制度を導入・整備し、定期昇給以外の賃金制度を設けることで、従業員の生産性向上や賃金アップ、離職率低下を図る事業主に支給される助成金です。
人材不足の解消を目的としています。
⑥人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
※追記:このコースは令和3年3月で廃止されています。
設備投資などによって生産性の向上や雇用管理の改善を図る事業主に支給される助成金です。
支給には、計画に基づいて設備の導入や賃金アップなどを実施し、計画開始日と1~3年後を比較して要件を満たしている必要があります。
⑦人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)
※このコースも令和3年度で廃止されています。
働き方改革の推進に向けて人材確保が必要な中小企業の新規雇用や、雇用管理改善の取り組みに支給される助成金です。
⑧人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者特有の事情に配慮して就労環境を整備し、職場定着に取り組む事業主に対し、経費の一部が支給される助成金です。
日本の労働法制や雇用慣行などの知識不足、言語の違いなどが原因でトラブルが起きやすい外国人労働者の定着率を上げることを目的としています。
では次の章から、各コースの内容を詳しく見ていきましょう。
人材確保等支援助成金(雇用管理制度助成コース)
※このコースは、令和4年3月をもって受付休止となっています。
一定の雇用管理制度を導入・実施し、離職率を低下させた場合に支給される助成金です。
対象となる5つの雇用管理制度とは
助成対象になる雇用管理制度は次の5種類の制度です。このうち1つ以上を導入・実施する必要があります。
①諸手当等制度
通勤手当、住居手当、転居手当、家族手当、役職手当、退職金制度、賞与制度などが対象です。
②研修制度
新入社員研修、管理職研修、幹部職員研修、新任担当者研修、マーケティング技能研修、特殊技能研修などが対象です。
③健康づくり制度
法定の健康診断項目に加えて、次のいずれか1つ以上の項目を導入する制度が対象です。
胃がん検診、子宮がん検診、肺がん検診、乳がん検診、大腸がん検診、歯周疾患検診、骨粗鬆症検診、腰痛健康診断
④メンター制度
会社や配属部署の直属上司とは別に、指導・相談役となる先輩(メンター)が後輩(メンティ)をサポートする制度が対象となります。支援機関や専門家によるサポートも可能です。
正社員のキャリア形成上の課題や、職場における問題の解決を支援するためのメンタリングの措置であることが重要です。
⑤短時間正社員制度(保育事業主のみ)
この制度の支給対象は保育事業主のみです。雇用している従業員(正社員を含む)や新たに雇い入れる従業員を「短時間正社員」とする制度が対象になっています。
短時間正社員とは、正規雇用契約で所定労働時間がフルタイムの従業員(正規雇用)より短い社員をいいます。
主な受給要件
事業主は、次の(1)~(3)の措置を実施する必要があります。
(1) 雇用管理制度整備計画の作成
次の5つの制度を導入する雇用管理制度に関する整備計画を作成して、労働局長の認定を受けます。
- 諸手当等制度
- 研修制度
- 健康づくり制度
- メンター制度
- 短時間正社員制度(保育事業主のみ)
短時間正社員制度は、保育関連の事業主のみが対象となるものです。
(2) 雇用管理制度の導入・実施
上記で立てた整備計画に基づき、計画実施期間内に雇用管理制度を導入・実施しなくてはなりません。
(3) 離職率の低下目標の達成
導入・実施した結果、計画期間の終了翌日から1年間の離職率(評価時離職率)を、計画提出前1年間の離職率(計画時離職率)より目標値以上の幅で低下させることが必要です。
雇用保険被保険者人数 | 低下させる離職率ポイント(目標値) |
1~9人 | 15%ポイント |
10~29人 | 10%ポイント |
30~99人 | 7%ポイント |
100~299人 | 5%ポイント |
300人以上 | 3%ポイント |
計画時の離職率から目標値を引くと0%以下となる場合や、創業時などで計算できない場合は、評価時の離職率の目標は0.0%とします。
離職率そのものの目標値は人数によって異なりますが、30%以下としなくてはいけません。
受給金額
受給できる額は次のとおりです。
条件 | 受給額 |
通常 | 57万円 |
生産性要件を満たした場合 | 72万円 |
複数の雇用管理制度区分を導入・実施した場合でも、受給金額は変わりません。
生産性要件について
生産性を従前と比較し、一定の割合で伸びが見られた場合に、生産性要件を満たしたとして助成金が増額となります。次のように計算します。
生産性=付加価値/雇用保険の被保険者数
具体的には、助成金の支給申請を行う直近の会計年度における生産性が、①または②に該当する場合をいいます。
- ① 3年度前に比べて6%以上伸びている
- ② 3年度前に比べて1%以上(6%未満)伸びている
ただし②の場合、金融機関から一定の「事業性評価」(事業内容や成長の可能性などについての評価)を得ている必要があります。
支給申請の流れおよび注意点
では、支給申請時の流れを順に見ていきましょう。
(1)雇用管理制度整備計画の作成・提出
提出期間内に、事業所本社の所在地を管轄する都道府県労働局に雇用管理制度整備計画を提出します。計画書の提出期限は、計画開始日からさかのぼって6カ月~1カ月前の日の前日までです。
計画書には、次の情報を正確に記入しましょう。計画書の「計画時離職率」が労働局の計算する離職率と一致しない場合は認定されません。
- 雇用保険被保険者の数
- 離職者数
- 定年退職または重責解雇した者等の数
重責解雇とは、労働者側の重大な責任、たとえば刑法に違反する行為などによる解雇のことです。
(2)認定後、計画に基づいて雇用管理制度を導入
導入した制度は、労働協約または就業規則に明文化する必要があります。
(3)雇用管理制度の実施
(2)で導入した雇用管理制度を、計画通りに実施します。
(4)目標達成助成の支給申請
計画期間終了後、12カ月を経過するまでの間に離職率が低下し目標値を達成していれば受給できます。2カ月以内に申請を行いましょう。
(5)助成金の受給
申請が通れば晴れて助成金が受給できます。
人材確保等支援助成金(介護福祉機器助成コース)
介護事業主が、運営施設に介護福祉機器の導入等を行うことによって従業員の離職率の低下に取り組んだ場合に支給される助成金です。
対象となる介護福祉機器の範囲とは
1品10万円以上、かつ介護労働者が使用することで身体的負担を軽減し、労働環境の改善が見込まれる、次のような機器が対象です。
移動・昇降用リフト
人の移動・移乗時に使用するものに限ります。
立位補助器、非装着型移乗介助機器(抱え上げ動作を補助し、介護労働者の腰の負担を軽減する)も含まれます。
装着型移乗介助機器
介助する側の人が機器を体に装着し、体に負担が少ない形で介助が行える介助ロボットなどが当てはまります。
体位変換支援機器
体の下に敷いて体位を楽に変換させるためのエアマットやシート、ベッドなどが該当します。
特殊浴槽
介護用に使われる次のような浴槽をいいます。
- 移動/昇降用リフトと一体化しているもの
- 移動/昇降用リフトが取り付け可能なもの、または側面が開閉可能なもの
移動/昇降用リフトには、電動昇降ストレッチャーも含みます。
その他、身体的負担軽減の効果が特に高いと考えられるもの
支給対象となる介護福祉機器とあわせて購入した、次のような付属品も助成対象に含まれます。
- 吊り具(スリングシート)
- 入浴用担架、入浴用車いす
次のようなものは支給対象外です。
支給対象外となるもの
- 事業主が私的な目的のために購入した機器
- 介護関係の業務に使用しない機器
- 国または地方公共団体などから補助を受けている機器
- 支払いの事実が明確にできない機器
主な受給要件
介護事業主は次の5つの措置を実施する必要があります。
- ①介護福祉機器の導入・運用計画を作成し、労働局長の認定を受ける
- ②計画に基づき、介護福祉機器の導入・雇用管理改善に励む
- ③雇用管理責任者を選任している
雇用管理責任者とは、雇用管理の改善や労働者からの相談対応、雇用管理の改善といった管理業務を担当する人のことです。計画認定申請時までに事業所ごとに選任し、全体に周知させる必要があります。
- ④離職率を目標値以上に低下させる
導入・運用計画期間の終了から1年経過するまでの期間の離職率(評価時離職率)を、計画提出前の1年間の離職率(計画時低下率)より、次表の目標値のポイント幅以上に低下させる必要があります。
雇用保険被保険者人数 | 低下させる離職率ポイント(目標値) |
1~9人 | 15%ポイント |
10~29人 | 10%ポイント |
30~99人 | 7%ポイント |
100~299人 | 5%ポイント |
300人以上 | 3%ポイント |
離職率をこの数値にするのではなく、下げ幅がこれ以上になることを目標としています。
- ⑤離職率が30%以下であること
上記④の離職率低下目標を達成し、かつ離職率が以下になることが必要です。
受給金額
導入した制度に応じて、下表の額が支給されます。介護福祉機器の設置にかかった工事費や送料、振込手数料は対象外です。
助成対象費用 | 支給額 |
介護福祉機器の導入費用(利子を含む) | 左記合計額の20% 生産性要件を満たす場合は35% |
保守契約費 | |
機器の使用を徹底させるための研修 |
支給の上限額は150万円です。
支給申請の流れおよび注意点
申請は次のような流れで進めていきます。
(1)導入・運用計画書の提出
計画書の提出後、機器導入日が予定より遅れることになった場合は、計画期間を変更する必要があります。必ず変更認定申請を行いましょう。
(2)介護福祉機器の導入・運用
計画通りに機器を導入し、運用します。
運用期間は、導入する月の初日から3カ月以上1年以内です。追加で機器を導入する場合、導入する月の初日から3カ月以上の計画期間を確保する必要があります。
(3)支給申請
計画期間の末日の翌日から起算し、12カ月経過するまでの間に目標値に達していた場合に助成金が受け取れます。2カ月以内に申請しましょう。
ただし次のいずれかに該当する場合は受給できません。
- 導入した機器を、転用あるいは譲渡、売却、解約、改造した
- 導入機器の一部または全部を、正当な理由なく設置していない、または日常的に使用していない
- 導入した機器が、不適切な使い方や管理不行届などで使えなくなった
- 計画とは異なる事業所に導入された
- 介護労働者以外の人間が恒常的に使用している
日常的に利用・管理していなかったり、計画通りの設置でなかったりすると支給の対象外となってしまいます。
(4)助成金の受給
審査が終了し、問題がなければ助成金が支給されます。
人材確保等支援助成金(介護・保育労働者雇用管理制度助成コース)
※この助成金は、令和3年3月で廃止されています。
介護事業主または保育事業主が、賃金制度の整備によって労働者の離職率低下に取り組んだ場合に支給される助成金です。
助成の対象となる措置には、次の2段階がありました。
介護や保育の賃金制度整備計画を立て、その計画に沿って賃金制度を整備・実施することで助成される「制度整備助成」と、それにより離職率を一定の率以上低下させ、さらに低下した離職率を維持したことで助成される「目標達成助成」です。
人材確保等支援助成金(中小企業団体助成コース)
中小企業者が集まってつくる事業協同組合等が、各事業者の人材確保や従業員の職場定着率アップのための取り組みを行った場合に経費が支給される助成金です。
中小企業団体の取り組み事例を紹介
ここでは実際に助成金を使用して取り組みを行った中小企業団体の事例を厚労省の資料より紹介します。
千葉県食肉生活衛生同業組合の取り組み例
構成企業の雇用管理上の課題 | ・食肉加工の技術習得に時間がかかる(約4~5年) ・労働環境が過酷(冷凍庫内での作業、土曜日出勤の恒常化など) ・早朝出勤 |
助成金を活用した取り組み | ・計画策定事業の実施 ・労働環境向上検討委員会の開催 ・カレンダー作成・配布 ・労働環境向上推進員の設置 ・雇用管理改善マニュアルの作成配布 など |
取り組みの結果 | ・取り組みの前後で離職率3%を維持 ・雇用管理改善の必要性や、取り組み意識の向上を推進できた |
労働環境向上セミナーなども実施し、組合全体で取り組むことで、助成金の受給だけでなく事業主の意識の向上が図れています。職場環境の改善ができれば、従業員の満足度も上がるなど大きなメリットがあります。
主な受給要件
次の(1)および(2)に該当する事業協同組合等が支給対象です。
(1) 雇用管理についての改善計画を作成し、都道府県知事の認定を受けた事業協同組合等であること
① 事業協同組合
② 事業協同小組合
③ 協同組合連合会
④ その他特別の法律により設立された組合および連合会のうち政令で定めるもの
⑤ 中小企業者を直接または間接の構成員とする一般社団法人
(2) 認定組合等の構成員である中小企業者のために、中小企業労働環境向上事業を行うこと
「中小企業労働環境向上事業」とは、次の①~④に当てはまる事業のことをいいます。①と④については必ず実施、加えて②または③のどちらかを実施する必要があります。
- ①計画策定・調査事業
- ②安定的雇用確保事業
長時間労働の改善や男女の平等な雇用機会の確保、仕事と家庭の両立支援や職場の環境改善などが当てはまります。
- ③職場定着事業
労働者が定着しやすい職場づくりのために行う労働時間の柔軟な設定や労働環境の改善、福祉厚生の充実などが該当します。
- ④モデル事業普及活動事業
中小企業の労働環境を向上させる取り組みを実施した効果やノウハウを、他の事業所にも活用するなどの取り組みです。
受給額
この助成金では、事業の実施に要した費用の3分の2が支給されます。対象となる経費は大きく分けて次の2通りです。
(1)労働環境向上推進員の設置に要した費用
組合員の役職者などが推進員となった場合は、基本給や賞与が対象、派遣契約の場合は派遣料などが対象となります。
(2)対象となる取り組み事業の実施に伴う費用
具体例を挙げれば、労働環境を向上させるための調査や分析、マニュアルなどの作成やセミナーなどの実施に要した費用のことです。
そのために必要となった社外の有識者などへの謝礼金や交通費、会議費用や印刷製本費、賃金や受講料などが対象となります。
ただし組合などの規模に応じて1年あたりの限度額が決められています。
認定組合等の区分 | 1年あたりの限度額 |
大規模認定組合等 (構成中小企業数500以上) |
1000万円 |
中規模認定組合等 (同100以上500未満) |
800万円 |
小規模認定組合等 (同100未満) |
600万円 |
支給申請の流れおよび注意点
支給の申請は、次のような流れで行います。
(1)改善計画の作成・提出
改善計画を作成し、本社がある都道府県の知事の認定を受けます。
(2)中小企業労働環境向上事業計画の作成・提出
(1) の認定を受けてから、事業実施計画期間の開始予定日の1カ月前までに労働局長に提出します。
申請書類はハローワークに提出できる場合もあるので、労働局に問い合わせてください。
(3)中小企業労働環境向上事業の実施
計画に基づいた事業を、1年間(前期6カ月・後期6カ月)実施します。
(4)支給申請
前期・後期に分けて申請できます。「前期・後期終了日の翌日から起算して2カ月以内」に、都道府県労働局に提出しましょう。
(5)助成金の受給
審査に通れば、助成金が支給されます。
人材確保等支援助成金(人事評価改善等助成コース)
※この助成金は、令和4年3月をもって受付休止とされています(令和4年4月現在)。
生産性向上のための人事評価制度等を導入し、生産性向上や賃金アップが実現された場合に支給される助成金です。
対象となる人事評価制度
助成金の対象となる人事評価制度は、次の(1)~(3)をすべて満たしていなくてはなりません。
(1)その制度の対象となるすべての労働者に適用するものである
(2)新設または改定された制度である
(3)次の8つの条件すべてを満たしている
① 賃金制度について労働組合または労働者の代表者と合意している
② 人事評価の対象や基準などが明確で、労働者に開示している
③ 年1回以上の頻度で評価が行われる
④ 人事評価制度に基づく評定と賃金との額や割合が明確である。労働者に開示している
⑤ 賃金表を定め、労働者に開示している
⑥ 毎月決まって支払われる賃金の額が2%以上増加する見込みであり、1年後も引き下げられない。労働組合または労働者の代表者と合意している
⑦ 新しく整備した人事評価制度等で労働者を実際に評価した日から、人事評価制度等の実施日が2カ月以内である
⑧ 労働者の賃金額を引き下げるなどの制度でない
主な受給要件
助成金の受給には、次の条件を満たす必要があります。
- (1)人事評価制度等整備計画を作成し、労働局長の認定を受けること
- (2)その計画に基づいて制度を整備・実施すること
- (3)整備した制度を継続して実施すること
- (4)生産性要件を満たしていること
申請日とその3年後の会計年度を比較して、3年後に生産性が6%以上伸びている必要があります。
- (5)離職率を目標値以上に低下させること
離職率は、目標値以上の低下、かつ30%以下になっている必要があります。
雇用保険一般被保険者の人数区分 | 1~300人 | 301人以上 |
---|---|---|
低下させる離職率ポイント(目標値) | 現状維持 | 1%ポイント以上 |
- (6)「毎月決まって支払われる賃金」を2%以上増加させること
- (7)(6)のとおり増加した「毎月決まって支払われる賃金」を引き下げないこと
(6)と(7)に関しては、(6)は実施した月の前月と当月との比較、(7)は実施した月と1年後の同月で比較します。
受給額
要件を満たした場合には、80万円の助成金が受給できます。
支給申請の流れおよび注意点
助成金の申請は、次のような流れで行います。
- (1) 人事評価制度等整備計画の作成・提出
- (2) 計画に基づき人事評価制度等を整備
- (3) 人事評価制度等の実施
- (4) 支給申請
- (5) 助成金の受給
人事評価制度等を整備する月の初日からさかのぼって、6カ月前~1カ月前の日の前日までに計画書を提出します。複数の計画を並行することはできないため、追加で計画する場合は提出済の計画に関する支給決定が確定してから行います。
計画書に記入した「計画時離職率」が労働局の計算結果と一致しない場合、計画が認定されません。雇用保険の被保険者数や離職者数、定年退職または重責解雇した人の数は正確に記入しましょう。
支給申請は、評価時離職率算定期間の末日の翌日から起算して2カ月以内に行う必要があります。
人材確保等支援助成金(設備改善等支援コース)
※この助成金は、令和3年3月で廃止されています。
生産性向上のための設備等を導入し、雇用管理改善と生産性向上を実現した企業に対して支給される助成金です。
受給額は、1年コースの場合で計画達成助成が50万円、目標達成助成が80万円、総額130万円です。3年コースの場合は要した設備導入費用によって異なり、総額180万円~450万円が支給されました。
人材確保等支援助成金(働き方改革支援コース)
※この制度は、令和3年度で廃止されています。
生産性向上のための設備等を導入し、雇用管理改善や生産性向上を実現した事業主に支給される助成金で、対象事業主は働き方改革推進支援助成金(労働時間短縮・年休促進支援コース、勤務間インターバル導入コース)の支給を受けた中小企業の事業主です。
助成の対象となる措置には、計画達成と目標達成の2段階がありました。
受給額は、計画達成助成で労働者1人あたり60万円(上限10名、短時間労働者は40万円)、目標達成助成で1人あたり15万円(短時間労働者は10万円)です。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
外国人労働者は、言語や文化の違いのほか、日本の労働法制や雇用システムについての知識不足などによって、労働条件や解雇などのトラブルが発生しやすい傾向にあります。
こうした外国人労働者特有の問題を考慮して就労環境を整備し、職場定着に取り組んだ場合にこのコースが対象となります。
主な受給要件
助成金の受給には、次の(1)~(3)の要件を満たす必要があります。
- (1)外国人労働者を雇用する事業主である
- (2)認定を受けた就労環境整備計画に基づいた措置を導入・実施する
- (3)計画期間終了から一定期間経過後の外国人労働者の離職率が100%以下である
(2)の取り組みの実施には、次の①と②に加え、③~⑤のいずれかを選択して行う必要があります。
①雇用労務責任者の選任
②就業規則など社内規程の多言語化
③苦情受付・相談体制の整備
④一時帰国のための休暇制度の整備
⑤社内マニュアル・標識などの多言語化
(3)の離職率については、外国人労働者と日本人労働者それぞれにも目標があります。
①外国人労働者の離職率についての目標
・計画期間終了から1年以内の外国人労働者の離職率が10%以下であること
・外国人労働者数が2人以上10人以下の場合、1年後の外国人労働者の離職者数が1人以下であること
②日本人労働者の離職率についての目標
計画の1年前と比較し、計画期間終了から1年以内の日本人労働者の離職率が上昇していないこと
では、(2)の計画に基づいた措置の実施について、具体的な事例で見てみましょう。
具体的な取り組み
前の項の要件(2)で説明した計画の実施は、必須メニュー①・②に加え、選択メニュー③~⑤のいずれかによって行われる必要があります。
必須メニュー
①雇用労務責任者の専任 | 責任者を選び、すべての外国人労働者と3カ月に1回以上の面談を行う(テレビ電話での面談も可能) |
②就業規則等の社内規程の多言語化 | 就業規則などすべてを多言語化、計画期間中に外国人労働者に周知 |
選択メニュー
③苦情・相談体制の整備 | すべての外国人労働者の苦情・相談に応じるための体制を構築し、外国人労働者も母国語などで相談可能に |
④一時帰国のための休暇制度 | すべての外国人労働者が一時帰国を希望した場合、必要な有給休暇を取得できる制度を構築。1年間に1回以上、5日間以上連続した有給休暇を取得可能に |
⑤社内マニュアル・標識類等の多言語化 | 社内マニュアルや標識類等を多言語化し、計画期間中にすべての外国人労働者に周知 |
支給申請の流れ
助成金の支給申請は次のような流れで行います。
(1)就労環境整備計画を作成・提出
計画期間は3カ月以上1年以内です。
(2)対象となる就労環境整備措置の導入
「具体的な取り組み」として前述した「選択メニュー」の③または④を選んだ場合は、その内容を労働協約または就業規則に反映させ、多言語化する必要もあります。
(3)就労環境整備の実施
作成した計画に基づいて取り組みを行い実施します。
(4)支給申請
計画期間が終了してから1年経過後、2カ月以内に労働局へ提出します。
(5)助成金の受給
審査後に支給決定通知が届き、助成金が支給されます。
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人材確保支援助成金は、雇用管理改善や就労環境整備など事業継続に必要不可欠なシーンで非常に役立つ助成金です。積極的に活用することで、従業員にとっても魅力的な企業に成長でき、生産性向上や離職率低下につなげられます。
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監修者からのコメント 人材確保等支援助成金は職場環境の整備を行い、結果として従業員の定着率向上を達成すると受給できる助成金です。 従って、短期的な取り組みではなく、長期的にPDCAを回していく必要があるため、企業にとってその体制をとれるだけのリソース(人・モノ・お金)が必要となります。 大掛かりなことのように思えるかもしれませんが、通常の企業活動の中で実践できる内容も多いので、関心のある事業主様はお気軽にお問い合わせください。